資質者祭り
王立フノーヴ学院の校庭には、生徒たちの熱気が満ちていた。修学旅行から帰ったばかりのリリアーナは、友人たちと楽しい時間を過ごしていたが、今日は特別な日だった。それは、年に一度の「資質者祭り」の日...!
広大な校庭は、カラフルなテントやブースが立ち並び、生徒たちが様々な資質を披露している。風に揺れる旗と歓声が校庭に興奮を醸し出している。
リリアーナは友人たちと一緒に歩きながら、笑顔で資質者祭りを楽しんでいた。彼女の側には、元気なアンナとおしゃべり好きなルカがいた。彼らはいつもリリアーナを励まし、支えてくれる大切な仲間だった。
しかし、その笑顔の奥には、彼女自身の力に対する葛藤があった。他の生徒たちが自信を持って資質を披露している中、彼女はまだ自分の力を信じきれていなかった。
「リリアーナ、あなたも何か披露するの?」
アンナが尋ねた。
彼女は瞬きをする間もなく、大きな轟音が校庭を揺るがした。驚きと恐れの声が上がり、空を見上げると、巨大な影が広がっていた。
「竜っ!」
リリアーナは息をのむような光景を目にし、驚愕の表情を浮かべた。
巨大な竜が空を舞い、その威風凛々とした姿が生徒たちの目を引いている。しかし、竜は攻撃する気配はなく、ただ広大な翼を広げ、空中で踊るかのように演技を繰り広げていた。
その光景は美しく、圧倒的だった。しかし、竜が低く飛びながら校庭に向かっているのを見た瞬間、人々の驚きは恐怖に変わった。
「何てことですわ。」
ルカの声が、混乱と恐怖に満ちた校庭に響き渡った。
校庭の混乱が広がる中、竜がゆっくりと降り立ち、姿を現した。しかし、その姿は驚くべきものだった。竜の姿をしているのは確かだが、その目は知性と感情を秘めた輝きを放っているかのようだった。
リリアーナと友人たちの驚きが広がる中、竜は大きな翼を広げて、生徒たちに語りかけるように響かせる声を発した。
「わはドラゴンの資質者、ドラゴニウス。わの目的は戦いではない。わは平和と共存を望む者だ。」
校庭に響くその言葉に、一瞬の沈黙が訪れた後、人々の間にざわめきが広がる。リリアーナと友人たちの瞳には、驚きと興奮が交錯していた。
「平和と共存…?」
アンナが小さな声でつぶやいた。
「そう。われらは力を合わせて、この世界をより良いものにする道を探すべきだ。」
ドラゴニウスの声は、威厳と共に優しさも感じられるものだった。
リリアーナは友人たちを見つめながら、その瞳には新たな決意が輝いていた。
「ドラゴニウスさん、わたしも力を合わせて、平和を守る手助けをしたいです!」
リリアーナの声が力強く響き渡った。
この時、強く握られた拳から小さな雫が垂れていたことに誰もまだ気づいてはいない。