わたしがリリアーナ
「わたしがリリアーナ...!この⚫︎⚫︎を統べる者よ!」
自信と不安の入り混じった少女の声が響き渡る。一瞬の静寂が流れ、観衆の老人がぽつりと声をこぼす。
「...ああ神よ、祈りが届きなさったか。」
「...長かった。ついに私達にも...!」
その声を皮切りに口々に歓声をあげる民衆の姿に、嬉しそうに顔を見合わせる仲間たち。リリアーナと名乗る少女も胸を撫で下ろし、頬を赤らめ目元には涙が滲んでいた。
「さあ、ここからだ。ここからがわたしたちが築く世界。みな、共に行こう...!」
時は遡る。
灰色の雲が空を覆い、荒涼とした大地に影を落としていた。この世界において、特別な力を持つ者たちが「資質者」と呼ばれ、社会の要となっていた。しかし、その中には光り輝く者ばかりではない。
リリアーナ・ノクターンは、名門資質者の一族に生まれながら、その運命を背負っていた。高い塔の上にそびえる家族の屋敷から、広大な敷地が一望できる。鉄の柵で囲まれた庭園には、風に揺れる紫色の花々が咲き乱れ、優雅な雰囲気を醸し出している。
しかし、その美しい景色とは裏腹に、リリアーナの心は複雑な感情で揺れ動いていた。彼女は誕生から狙われ、守られ、そして厳格な家訓に縛られてきた。金髪の髪は、高い髷でまとめられ、紫色のドレスを身に纏っているが、その瞳には抑えきれない切なさが宿っている。
「お嬢様、今日もご健在で何よりです。」
メイドのエリザベスが丁寧にリリアーナに近づき、敬意を込めて一礼した。エリザベスの黒いドレスが、彼女の白い肌と対照的に美しい調和を生んでいる。
リリアーナは微笑むと、窓の外に視線を向けた。街の中心部で行われる資質者たちの試合が見える。闘技場には人々が群がり、熱気と興奮が漂っている。その中には彼女の幼馴染であり、彼女が秘かに憧れているアスターの姿もあった。彼の髪は真っ赤で、闘志に燃える瞳は一際輝いている。
「エリザベス、私はもっと自由になりたいの。この家族の期待や過去の因縁に縛られずに、自分の人生を歩みたいのです。」
彼女の声には決意が込められていた。彼女の心は、高鳴る野望とともに揺れ動いていた。