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21話


 呪いが消えてから黄金郷(エルドラド)のみんなの動きははやかった。


 僕は体力と魔力が回復する歌を歌いながら、用意してきたポーションで仲間の傷を治しつつ皆の動きを見ていた。

 助けたみんなは呪いがなくなり傷が治ると、今まで息も絶え絶えだったのに直ぐに救援に来た仲間にポーションを貰うと、他の傷ついて動けない仲間の治療に回る。

 流石平均Bランクで構成されたパーティーと関心した。


 僕達が来るまで、呪いで傷も治せず傷ついた体で動くこともできなかった彼等の心労は計り知れなかったはずなのに、良くすぐに動けると……。


 もし、僕達が来るまでに魔物や心無い他の冒険者がやって来たら彼等は殺されていた可能性が高い。

 しかも運よく魔物や心無い冒険者が来なくても、救援が間に合わなかった場合も待っていたのは死。

 僕ならそんな緊張と絶望が長時間続いた後に直ぐに動けと言われても無理だと思う。

 僕達が助けに来た仲間のほとんどの傷が治された時、不意に声を上げる仲間がいた。


「えっ⁉ なんでプレイが吟遊詩人の仲間と一緒に歌っているの⁉」


 その声を皮切りに皆が驚きの声を上げていく。


「プレイがダンジョンに来ているのか⁉」

「ついにプレイもダンジョンに⁉」


 あっ……確かに助けに来たみんなはここ最近の話をしらないから驚くのも無理もない。

 でも、声をかけてくるみんなの表情は嬉しそうで、僕がダンジョンに来ているのを喜んでくれているのがわかる。

 ……少し涙ぐみそうになる。


 僕がそんな事を考え説明をしようか迷っていると、あちこちから全員の傷が治ったと声が上がりアールさんが声を上げる。


「では、皆さんこれからダンジョンから帰ります! 状況はかなり明るいものとなりましたが決して油断しない様にお願いします」


 アールさんが皆に油断しない様に声をかけた後、僕達は地上を目指し進みはじめる。




 地上を目指して帰る途中、僕は来る時とは違い先頭を歩くのではなく、みんなの中心部を歩いていた。

 それはアールさんに言われてだけど、僕はスキルでその役割を大きく替えれるから前にも後ろにもすぐに援護に行ける様に中心部に居て欲しいとの事だった。

 みんなと足並みを揃えてあるいていると、助けられた仲間の一人が小さな声で話しかけてくる。


「……なぁ、プレイ。さっき吟遊詩人のみんなと歌を歌っていたけど、遊び人のプレイが歌って意味があるのか?」

「うんうん、私も思ったけど。もしかして、プレイの職業って吟遊詩人だったの?」

「いや、色々あって……ここでは説明しきれないんだ」


 僕がそう言ったところで前方の動きがとまり、僕達も足を止める。

 僕達は前を向き話しはじめる。


「……何かあったのかな?」

「休憩にしては早いよね……」

「もしかして助けてもらった俺達の事を気にして休憩をとるのかな?」


 僕達がそんな話をしていると、仲間が道を作るように左右に分かれはじめる。


「ん? 代表の誰かが来るのかな?」


 僕達が歩いてくる人物に目をむけると、リサの師匠だった。

 リサの師匠は誰か探している様で僕達の近くに来ると、まわりを見回す。

 僕がその様子を見ていると、不意に僕と目が合いリサの師匠が口を開く。


「プレイ! あんたの意見が聞きたい! 前に来な!」

「「⁉」」


 助けられた仲間は僕の最近の事情を知らないため、驚いた様子で僕を見る。


「みんな、ごめん前に行って来る」


 僕はそう言って、みんなが呆然と僕も見るなか前に向かう。


 僕が先頭に来ると、その場所には各職業の代表者が集まっていた。


「プレイ! こっちこっち!」


 僕に気づいたリサが僕に声をかけてくる。


「少しプレイさんの意見を聞きたく来ていただきました」


 リサの言葉で僕に気づいたアールさんが僕そう言って手招きする。

 僕はアールさんに言われるままに近づくと、何故各代表が集まっていたか理解する。


「罠が復活している?」


 僕が思わずこぼした言葉に各代表が頷く。


「ああ、こんな事は私もはじめてだよ。プレイ何か知ってないかい?」

「いえ、僕もこんな事は知らないです……」

「やはりプレイさんも知りませんか……これは慎重に進むしかありませんね」


 リサの師匠の言葉に知らないと答えるとアールさんも慎重に進むしかないと頭を悩ます。


 ここに来て新たな予想外、普段ダンジョンの罠は一度壊したり解除したりすると、しばらくの間は機能しない。

 だけど僕達がこの階層に下りてきてまだ数時間しか経っていないのに罠が復活していた。

 みんなと合流する前に壊したり解除した罠が復活しているのは、はっきり言って異常だと思う。

 しかも、今見ている罠はこの階層で出てくる罠にしては凶悪なもので、本来出てくるのはもっと下の階層のはず……。


 僕がそんな風に思いながら罠を見ていると、アールさんが話しかけてくる。


「プレイさんどう思います? 私は、今まで知られていませんでしたが我々の人数が多くるなるとダンジョンがその人数に対して罠を強化するのではないかと予想します」

「確かに普段の倍の人数で今僕達はいますから、アールさんの予想は正しいと思います。それであればこれからの帰り道も決して油断はできませんね」

「私もそう思います。ですが……」


 そこまで言ってアールさんは考え込む。


「何か嫌な予想が?」


 僕が意を決して聞くとアールさんは答える。


「ええ、普段の罠からは考えられないような広範囲の罠があるんじゃないかと思いまして」

「確かに、これだけ異常事態が続いてるのであれば、アールさんの言うような広範囲の罠もあるかもしれません。気をつけます」

「ええ、お願いします。何かあればすぐに連絡を」

「はい」


 僕とアールさんは話をおえるとそれぞれ自分の持ち場につく。


 僕は今、リサの師匠と一緒に先頭を歩いている。

 先ほどの話から僕とリサの師匠はいつも以上に慎重に辺りに気を配りながら進んでいる。

 それは、僕とアールさんがしていた広範囲の罠があるかもしれなと言う話をリサの師匠にしたところ、リサの師匠もその可能性は高いと頷いたから。


「私が気にし過ぎなのかもしれないが嫌な雰囲気だ……」

「いえ、僕もさっきの罠の事を考えたら、さっきの罠からここまで罠が無いことが気持ち悪いです」


 僕とリサの師匠の話の通り、さっき復活していた罠からここまでの間に罠が()()

 それは以前から知られている場所にあるはずの罠すら無かった。


 僕はチラリと後ろを振り返ると、リサも何か感じるものがあるのか表情が硬い。

 振り向いた僕にリサが短い言葉で話しかけてくる。


「プレイ何か嫌な予感がする」

「うん、僕も嫌な汗がとまらない」

「止まりな」


 僕がリサと話していると、リサの師匠が僕達に止まるように言う。

 リサの師匠を見ると、苦虫を嚙み潰したよう表情をして前を見ている。

 それにつられ僕も視線を前に向けると、そこにあからさまな罠があった。


「ちっ! あんな罠見た事ないね! しかも発動しているよ!」


 そこには魔法陣があり、しかも明滅していた。

 魔法陣の罠の種類は幾つかあるけど、どれも直接法陣を踏まないと発動しない。

 本来は罠に気づけさえすれば、矢や魔法を使って簡単に壊すことができるけど、僕達が目にしている罠はすでに発動していて魔法陣が明滅している。


 魔法陣の明滅が早くなり、その明滅がとまり魔法陣が光っている。


「来るよ!」


 魔法陣の上に黒い霧があらわれ、見る見るうちに大きくなっていく。


「止まった……」


 霧が大きくなるのが止まるのを見てリサが思わずこぼす。

 その瞬間、リサの師匠が声を上げる。


「ぐあっ!」


 僕が慌ててリサの師匠を見ると利き腕じゃない方の腕が地面に転がる。

 それを見た僕の視界は真っ赤に染まる。


「くそっぉお!」


 僕は思わず叫ぶと同時にスキルを発動させる。


(≪鬼ごっこ≫を発動します)


 僕は大幅な身体能力の向上で、壁に激突するのを避けるために約1/3ほどの仲間を対象に鬼ごっこを開始すると、罠に向かって短刀を投げ、そのまま横に走りだす。

 甲高い音が鳴り僕の投げた短刀が叩き落された。


 僕は短刀が弾かれた事を気にせず、そのまま罠を中心に円を描く様に走りながら、ついさっきまでいた場所に目をむけると地面に鋭い斬撃の跡が残っていた。

 そこから視線をずらすと、リサの師匠が後方から来た回復魔法を操る仲間に魔法をかけられている。


「プレイ! 奴らの目を集めろ!」


 そう僕に叫んだのは前衛の代表。

 やつら? そう思って僕が罠の法に視線を向けると、霧の中から続々と魔物があらわれる。

 しかも、この階層では本来出てこない深い階層の魔物の姿もちらほらと見られる。

 僕は、今までで一番の身体能力の向上を感じつつ魔物に向かって走り出しす。

 そして、マジックバックから取り出したすと、数本の槍を走る勢いを乗せて投げつける。


「プレイやるじゃねぇか!」


 前衛の代表が喜色を露わにして叫ぶ。

 僕が投げた槍は魔物を数匹串刺し、さらにして地面に刺さり魔物を地面に縫い付ける。


 そして、地面に縫い付けた魔物に矢や魔法、斬撃が飛びクランの仲間が一匹一匹確実に葬っていく。

 僕は槍を投げた事で短くなった魔物までの距離をとるために、再び円を描くように走り出す。

 魔物は仲間が殺されるきっかけを作った僕に執拗に攻撃を繰り出してくる。

 そんな魔物の攻撃を避けつつ、僕は魔物との距離が開くと再び槍を取り出し魔物に近づきながら投げつけ続ける。


 その後、僕達は順調に魔物の数を減らしていき、その数が残り数匹になり僕も少し安心した瞬間クランの仲間の悲鳴が聞こえる。

 声のした方に目をやると数人の仲間が倒れていた。

 クランの仲間は体を両断され、駆け付けた仲間がそのそばで項垂れている。

 僕は慌ててその場に駆けつけると、仲間の回復魔法を扱える仲間の方を向き叫ぶ。


「すぐに回復魔法を!」


 だが、帰って来たのは声にならない返事。

 僕より先に駆け付けた仲間は悔しそうに頭を横に振っている。


 そ、そんな……。

 彼等の行動は、すでに仲間が回復できない状況だと言っていた。


「即死だ……」


 唖然とする僕に誰かが言った。


 そ、そんな……ここまで上手く言っていたのに……。

 僕がもっと上手く魔物を引き付けていれば、みんな死ななかったんじゃ……。


 僕は事実を聞き、地面に膝をつき呆然とする。

 心の内から後悔の念があふれ出し、仲間の遺体をただ呆然と見つめていると、突然殴られ吹き飛ばされる。

 僕は自分を殴った相手に視線を向けると、それはリサの師匠だった。


「何ぼうっとしてるんだい! リサが死んでも良いのか⁉」


 そう言ってリサの師匠は再生させられている途中の腕でリサを指さす。

 リサは先ほどの攻撃を受けたのか、まわりに回復魔法を使える仲間が集まっていた。


「そんなわけあるかぁああああ!」


 僕はリサの師匠の言葉で我に返ると魔物に向かって走り出す。

 それまでは、まわりの仲間に被害が出ないかと思って控えていた毒や爆薬などの攻撃に使える様々な道具をバッグから取り出し、最後に残った魔物に狙いを定める。


 仲間に被害が出るかもしれない? それなら、その頭をフルに使って考えろ!

 今までは机上の空論だった事を実行できるスキルを得たんだろう?

 やれ! 自分の大切な人をみすみす殺される様な馬鹿になるな!


 僕はそう自分に言い聞かせると最後に残った魔物に向かって駆け出した。

 

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