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レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした  作者: 桐山じゃろ
第四章

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26 再びトーア大陸にて

*****




 転移魔法の移動先は、無意識のうちにトーア大陸中央にある世界一高い山の天辺を指定していた。

 大魔王によってギロが放置されていた場所だ。

 我を忘れていたギロと戦う際は異空間を展開していたから、この場所に戦いの跡はない。

 あの時のギロも強かったなぁ。無事でいてくれて本当に良かった。

 と、思い出に浸っている場合じゃない。

 ジュアル国へは多分足を踏み入れたはずだが、正確な位置は曖昧だ。

 冒険者ギルドで持たされたトーア大陸の大まかな地図を見てジュアル国の位置を確認し、改めて転移魔法で飛んだ。



 ジュアル大陸の城下町は、他の町と同じく活気が溢れていた。

 僕を呼んだのはジュアル国だが、城下町の冒険者ギルドへ向かって欲しいとのことだったので、早速ギルドハウスへ足を運んだ。


 ギルドの建物の扉を開けると、すごい喧騒が押し寄せてきた。

「北の戦線が崩れた! 誰か行けないか!?」

「レベル九十パーティが退却してくるって連絡が!」

「回復魔法使い、魔力残ってる奴早く! 少しでもいいから!」

 建物には空間魔法使いが防音の結界を張っているため、この大騒ぎは町には漏れていない。

 しかも、中にいる人が慌てて外へ飛び出しても、扉は素早く開閉し、外へ出た途端「何も起きてませんよ?」という顔つきになるのだ。

 魔物の勢いが凄いことを、冒険者ギルド内だけで収めようとする冒険者魂がすごい。

 僕は回復魔法使いを呼んでいた人のところへ行って怪我人を癒やしてから、受付へ向かった。


「こんにちは。エート大陸から来ました、ラウトと申します」

 挨拶とともにステータスを表示させると、僕より年上だろう受付の女性は一瞬目を大きく見開き、それから落ち着いた声色で「ようこそおいでくださいました」と定型文の挨拶を返した。

 それから小声で「そちらの扉の向こうへどうぞ」と促され、言われたとおりにした。


 案内された部屋に入った途端、後ろからくたびれた装備に身を包んだ壮年の男性も入ってきた。どうやらこの人がここの監査役らしい。

 僕を見るなり怪訝そうに眉をひそめたが、受付さんが耳打ちするとカッと目を見開いた。

「すまない。他の大陸で尋常ならざる力を揮ったと聞いていたから、もっとこう……厳つい大男を想像していたのだ」

 僕が勇者であることを知った人は、だいたい似たような反応をする。

 平均より背丈はある方だが、体格は何故か、クレレやヤトガのように大きくならないのだ。

 冒険者だから普通の人より運動量も食事量も多いのに。

「よく言われますので、お気になさらず。ところで、かなり切迫した状況のようですね」

「大陸全体での魔物の侵攻程度は把握しきれていない。少なくともこの城下町からおよそ五キロメートル地点まで、難易度Sが近づいてきている」

 城下町どころか、この大陸で難易度Sに対応できるパーティはわずか十組しかいない。

 ちなみにエート大陸には百組ほどいる。

 ここ最近、トーア大陸の高レベルパーティは常時出勤状態なのだとか。

「では僕が討伐してきます。クエストとしては登録されていますか?」

「これだ」

 監査役からクエストメモを手渡された。予め準備してあったようだ。

 難易度Sのクエストが十に、Aが二十。

 大陸の八割を占める山は魔物も棲めないため、場所は町から五キロメートル以上二十キロメートル未満の地点に集中している。

「どれか一つでも片付けてもらえば助かる。野営の物資はこちらで……」

「物資は必要ありません。これなら今日中に全部片付きます」

 思ったより少なくてよかった。

「は!? 全部!?」

「行ってきます」

「ぶ、武運を?」

 監査役が驚いているが、説明する時間も惜しい。僕はさっさとギルドハウスから出た。



 防護結界が風を切る音にも慣れてきた。

 シルフの風による低空飛行で移動し、指定された魔物を次々討伐していく。

 精霊は僕の身体から少し離れてもすぐに戻ってこられるので、倒したあとの魔物の核の回収はスプリガンに任せている。


 スプリガンと言えば、この前まで少し心配だった。

 魔王の核を預かりを安請け合いしたせいで、大魔王が復活したと気に病んでいたのだ。

「誰が持ってても、僕が魔王を全部倒す限り同じことになってたから」

 僕と他の精霊たちで宥めても、スプリガンは凹みっぱなしだった。


 精霊たちが一時期僕の身体から離れていた際、皆は僕の力に耐えられるようになろうと、鍛錬を積んだとか。

 僕の呼びかけで僕のところへ帰ってこられたから、鍛錬はしていないのだが、スプリガンだけその鍛錬を再開した。

 精霊の鍛錬ってどうやるのかと訊いたら、精霊の力を出し入れしながら、自然に満ちる魔力を少しずつ取り込むのだそうだ。


 だからなのか、スプリガンだけ他の精霊より一回り大きくなっている。

 核の回収も素早く行い、僕の低空飛行にちゃんとついてきている。

「無理はしないでよ」

「平気スプ!」

 灰色の大猫は真剣な表情で、どんと胸を叩いた。



 日没ギリギリの時間には、指定されたクエストの魔物を全て討伐した。

 ついでに大陸全土を気配察知して、これといった魔物がいないことも確認する。

 城下町へ戻ると、受付さんが再び部屋へ案内してくれた。


「これは……本当に……規格外の勇者だな」

 机の上に討伐してきた魔物の核を並べると、監査役はその一つ一つを確認して、唸った。

「他の大陸では、今日倒した分の魔物が全て再出現するような現象は収まっていますが、念のため今日は近くの宿にいますね」

「ああ、部屋ならこちらで」

「もう宿代払ってきてしまったので」

「無欲すぎるというのも聞いたとおりだな……」

 そんなことはない。僕は貰いすぎているのだ。



 監査役の部屋を出てギルドホールへ入ると、冒険者たちは表情に余裕を持った明るさを取り戻していた。

「なんでも勇者がこの大陸に来て高難易度を一瞬で片付けてくれたらしいぞ」

「一瞬てのは大袈裟じゃないか?」

「でも俺見たんだよ、高速で移動する人影をさ」

「俺は話を聞いたぞ。あの勇者ならそのくらいやりかねないってな」

「魔物がいなくなったのは本当だしなぁ」

 僕の噂でもちきりだった。こそばゆい。

 見た目が監査役の想像するような大男じゃなくて、よかったかもしれない。僕は誰にも気づかれずにギルドハウスから出ることに成功した。




 真夜中に、それの気配を察知した。

 僕は身支度を整えて宿のカウンターに「急用ができたので発ちます。お世話になりました」というメモを置き、宿を後にした。


 気配の場所は、山の天辺だ。




「来たよ。さ、遊ぼっか……んんん?」

 大魔王は山頂にふわりと浮いていた。

 相変わらず、身体の大半は様々な生き物を混ぜて溶かして固めたような見た目をしているが、顔と両手以外にも、両足が白く滑らかな人の形になっていた。

 人だったらかなりの美人だろう程整った顔は、嫌そうに歪めていることで台無しだ。

「ええ……もうちょっと強くなってると思ったのに。あんまり変わってないじゃない。あーあ、つまんない。さっさと終わりにしよっか」

 大魔王は僕を見るなり、大きなため息をついて何かごちゃごちゃと言った後、白い片手を僕に振り下ろした。

 あれがまともに放たれたら、衝撃波だけで山肌が崩れるだろう。

 僕は異空間を展開し、衝撃波は右拳で打ち払って相殺した。

「あれ? 手加減しすぎちゃったかな。えいっ」

 もう一度、同じ攻撃。

 今度は剣で斬り落として、そのまま大魔王に向かって行った。

「嘘っ!? どうして……わ、わああああああああ!」

 腕を十字に重ねて僕の剣を受け止めようとしたが、その腕ごと叩き斬った。

 切り落とされた腕は地面に落ちる前に蒸発するように消え去り、大魔王はすぐに腕を再生させた。

「なんで、なんでよっ! だって力そんなに感じない……ま、まさか……」

 僕の気配は、以前大魔王と対峙した時より弱く感じられるだろう。

 そう勘違いさせるために、わざと力を身体の中に抑え込んでいるのだ。

 僕の身体を何かが覗き込んだ気配がした。大魔王が鑑定スキルでも使ったのだろう。


「そ、そんな……なに、これ、人間が、こんな力持って……」


 現在の僕のステータスは、すべての能力値が五百万を超えている。

 大魔王の能力値は、平均およそ三百万。

「やられっぱなしって結構腹立たしいな。こんどはこっちから行くぞ」

 僕が剣を振り上げると、大魔王はヒュッと息を飲んだ。

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