君を愛しているから、僕をいつも感じる為に僕の眼球を君へ。
僕の好きな女の子は、目が見えない。
彼女は、幼い時に病気で目が徐々に見えなくなったらしい。
今では、ほとんど両目とも見えていないと僕に話してくれた。
僕はそんな彼女に恋をする。
彼女は眼は見えていないが、心は凄く透き通るほどに綺麗で。
僕が彼女とずっと一緒に居たいと望んでしまった。
彼女は目が見えない分、いろんな事に興味を持ち僕に何でも聞いてくる。
彼女の好奇心が、僕の心を掴んだ。
無邪気で純真な彼女は、キラキラの笑顔を僕にいつも放っていた。
僕と彼女は、徐々に仲良くなっていく。
彼女との最初の出会いは、【病院】だった。
彼女は、眼の検査を定期的にしに僕と同じ病院に来ていた。
僕は、肺に腫瘍がデキて病院で診てもらっていた。
そこで、僕と彼女は知り合ったのだ。
僕が彼女にどんどん惹かれていくと同時に僕の腫瘍もあちこち
転移していく。
彼女の眼は、健康な人の眼球を移植すれば治るらしい。
それには先ず、ドナーが必要だった。
僕は、彼女に隠れてドナー登録をしていた。
僕が死んだあと、眼球を彼女にあげるためだ。
僕をいつも僕を診てくれる医師にだけ、その話をしていた。
・・・そして、目の見えない彼女が僕にこういう。
『悟志君が良ければ、今度! ドライブに行きたいな~』
『いいね! 行くなら自然がいっぱいある山の方がいいかも!』
『うん! そしたら、お昼ご飯作っていくね!』
『深月ちゃんが、手作りで作ってくれるの?』
『これでも、料理はそこそこ出来るんだよ』
『そっか! 楽しみにしてるね!』
『うん!』
・・・僕は、彼女と一緒に行けるデートはこれが最後だと思った。
もう、僕の体は限界に達していたからだ。
歩くのもやっとで、薬を飲まないとまともにも歩けなかった。
僕を診てくれる医師も、僕にこう言っていた。
『悟志君! 外出はこれが最後になるよ! これが終われば
直ぐに入院してもらうからね』
『は、はい!』
*
今日だけは、彼女とふたりの時間を楽しみたい!
彼女は、目が見えない代わりに音やにおいが敏感になっていた。
いろんな事に興味を持つ彼女が僕は本当に好きだ!
楽しい時間は、あっという間に終わってしまう。
そして僕は、その日彼女の家の前まで彼女を送るとこう言った。
『今日は、凄く楽しかった! でもごめんね、深月ちゃん明日から
僕は旅行に出かけるんだ! いつ帰って来るか分からないんだ』
『えぇ!? 急な話ね! でも旅行から帰ってきたらお土産話を
たくさん聞かせて!』
『もちろん、いいよ!』
『じゃあーまたね!』
『うん、またね。』
・・・それが、彼女と最後の会話になった。
何故なら、僕は病院に入院して直ぐに亡くなってしまったからだ。
でもその代り、僕の眼球は彼女に移植された。
今は、彼女の眼はよく見えるらしい。
『なんて、ステキなの! こんなに世界はキレイなのね!
でも、なんだか不思議だわ! 懐かしいような寂しいような
この眼は、誰のモノだったのだろう...。』
最後までお読みいただきありがとうございます。