啓示 不条理の治世にて
不条理の治世にて叫び、行動する者達、玉座に居る者の手は彼らへのばされる。不条理の兵は彼らを刺し殺せはするが、彼らの言葉を捕まえることは出来ない。彼らの言葉は我々への啓示、彼らの言葉は不条理に関する証言。話者の受けた不条理が、彼らの言葉を啓示へと変える。
未だ完成せず
各哲学篇
1.私が狂人か否かはすぐに分かることだ。私が正しかったかはすぐには分からない。
2.この時代にはいかなる者も、必ず歓迎される。不条理はいかなる者も拒まない。いかなる者もまた、不条理を拒めはしない。
3.もしも世界の終わりに運良く見えられたら、その時こそ各人の神聖さが必要とされる時である。
4.あなたに、信仰対象を崇めるか侮辱するかの二択しか与えないような宗教には気を張っていなさい。
5.何かを称えるために別の何かを貶めなければいけないと思っているなら、悪いことは言わないから今すぐ思い直せ。
6.限界の時には、太陽の光が鬱を運び始め、波の音が死を誘う歌に聞こえ始める。
7.各人の唯一性のみを故にして、人間の価値とするのは止めておきたまえ、それがそうでなくなる時が来る。
8.そこのお喋りさんよ、反語と疑問の違いが分からないなら家へ帰りたまえ。
9.いつから人間はこうも犠牲者へ厳しくなったのか。
10.いつ来るか分からないものについて話すのは止めてくれ。
11.我々に、優劣をつけてはいけない事の優劣をつけさせ、取り返しのつかない事を取り返せというのが不条理の一形態である。
12.それは、人間と共に生まれてきた。人間の殺し方も苦しませ方もよく知っている。しないだけできっと救い方も知っているだろう。
13.皆、人間らしさを持って目を開き、機械的動作とともに目を閉じていく。
14.誰であろうと、自殺なんかしないで生きていてくれる方が嬉しいのが事実である。しかし、その言葉が彼らを救いきれない事もまた事実であって、その事が私の精神を殺す。
15.私は、自分の命と引き換えに不条理をこの世から消しされると分かったら、喜んでそうするだろう。しかし紛れもない事実が、私一人の人生のみでは絶対に不条理を消しされないということを語る。それによって私は他者の犠牲が必要とされていることに絶望し、咽び、嗚咽する。
16.どうして諦めることができようか!どうして諦めることが、あの情景を前にしてできようか!人は場所も時も選ばず死に、希望は一番我々を潰す時を選んで絶望に変わるあの情景を前にして……。
17.道理は死んでいる。罰当たりは罰を受けず、愚か者は不条理の側へ無意識のうちにつくが、放っておかれる。不条理の治世が終わらないからである。抵抗するものは不条理に苦しめ続けられる。不条理の治世が終わらないからである。道理は死んでいる。
18.繰り返し続ける中、その神聖さを保ち続けられるものは少ない。人間は長くても百年ちょっとで死ぬ、神聖さを失わないために。我々は、その脆さそのままで繰り返しの中に放り込まれた。
19.お前の出身なんてどうでもいい、お前の外面なんてどうでもいい、お前の価値はそんな所にはないからだ。この際にはその胸の奥にある信念が、不条理に耐えられるか否かだけがお前の価値を決める。
20.いい加減気が付かないか、この世において安心して寄りかかっていられるものなど何も無いと。昨日お前に非暴力を教えた者が、今日暴力の利をお前に教えている。
生存篇
1.どれほど矛盾に充ちていようとも、我々は生きることを選択する。いかなる批判も論も我々を転向させはしない。
2.どれほど不条理が囁いても、どれほど愚か者達が勧めても、私はお前が生き延びていてくれることを望んでいる。愚か者の言葉も私の言葉も本質に変わりはしないが、それでも私の言葉は忘れないてくれ。
3.この繰り返しが終わったら、一人でも何人でも、一緒にテラスカフェで打ち上げをする。それを信じて今を生きている。信じられなくなったら、大変なことになるだろう。
4.不条理の治世においては、生きているだけで褒められるべきである。また、不条理の治世においても、死ぬということはまったくもって非難される理由にならない。
5.本人に任せるが、出来ればそうして欲しいことが沢山ありすぎる……。
6.どれだけ不条理に論敗しても、その勝敗を破棄して守りきらなければいけない物、それが生存の神聖さと死人の尊厳だ。
7.
目が覚めたなら、どうぞ深入りされよ。我々は然るべき所にいる。クロスオーバーというキーワードが、興味ある者を然るべき所へ導かん事を。