馬鹿が空から落ちてくる 1
原神楽しい^^(本音)
仕事がクッソ忙しい(建前)
グレイたちのデートから少しばかり日が進み、5月も半ばになった。
この間にあったことと言えば、そうだね。中間試験だね。日本と違ってゴールデンウィークなんて習慣がこちらにはないので、なんか変な感じはするな……。
ちなみにリアは中間試験を堂々とサボった。機械いじりに夢中になっていたせいである。まぁ、あいつの留学目的はこの国の慣習について学ぶことではなく、一足先に航空能力を手に入れた人型ロボット、騎乗士についての理解を深めることなので、リアの判断は全くもって正しい。
リーファはサーシャとターニャを引き連れてリアを説教しに来たが。
ちなみに俺も中間試験を堂々とサボった。新型機の設計に夢中になっていたせいである。
そして俺もリーファに説教された。完全にとばっちりだと思う。
―――というか気になっていたんですけど、何でまた新型機を作る必要があるんですの?
いい質問だマリアァ! 乙ポイントを1点あげよう!!!
《感想:ひっさびさに出てきましたねそれ。正直、存在を忘れてくれたのではないかと思っていたのですが》
半年ぶりくらいに出した気がするな。う~ん、スッキリ!
―――便秘みたいに言うのはやめてくださいます?
《感想:そういえばマスターは快食快便ですよね》
本来の年のせいか、肉や油よかさっぱりした野菜を食うことが多いせいかもなぁ。
―――やめろっつってんだろ!!!
ともあれ新型機の件だが、確かに俺には専用機、薔薇獅子がある。にも拘らず、新型機を求める理由。それは、目の前に広がる光景がそのまま答えだ。
リントヴルム王立貴族学園、騎乗士用訓練場にずらりと並ぶのは、黄色と黒で彩られた9機の獅子型騎乗士。即ち、獅子型正式量産機、壱式獅子だ。ニオスが使用した1号機以降、着実に量産され、その数を増やしている。
先行量産試験機である零式獅子との差異はほとんどない。というか逆に、その少量の差異については、零式獅子の方が壱式獅子の仕様に合わせるように改修されている。微妙に仕様が異なる機体が2種類あると、運用に無駄な手間がかかりそうだという理由によるものだ。
壱式獅子のフレーム色は黒だ。零式獅子が装甲とフレームの色を合わせていたのと違い、壱式獅子は黄色の装甲と黒のフレームで、色を合わせてはいない。ちなみに零式獅子の塗装は同じ塗料を使っているらしいのだが、フレームと装甲の材質の違いのせいか、色味が結構違ったりしていた。なんつーか、こう、リアルグレ○ドっぽい感じで。
そして壱式獅子にも、換装式全装甲機構のコンセプト通り、特定用途に特化した装甲が取り付けられている。
ずばり、訓練用だ。
その名も壱式獅子・コブ付き。名前の通り、背中にはウイングユニットの代わりに巨大なコブが取り付けられている。あ、言い忘れていたが、壱式獅子の正式量産機採用に伴って、命名規則も変更されて、今後は壱式獅子・○○って呼ばれることになった。これは先行量産試験機の3機も同じで、例えばレオニスが使っていた剣撃獅子は、零式獅子・剣撃って感じに。
壱式獅子・コブ付きは訓練用の機体なので、完全に非武装だ。両腕の回転式武装腕部機構に取り付けられた計六つの黄色と黒の縞々コンテナは全てエアバッグだし、新規に追加された頭部バルカン砲は未装填。そして背中のコブはパラシュートである。壱式獅子は零式獅子の特徴を引き継ぎ、単体でも飛行可能だからな。零式獅子の時に開発したウイングユニットは、個々の運用目的を補強するためのものなので、ウイングユニット無しでも飛ぶこと自体に支障はない。そして平々凡々なパイロットであっても飛行訓練が行える以上、パラシュートを組み込むのは必須だ。
というかびっくりしたのだが、この世界、今までパラシュートが存在しなかった。
《補足:致し方ありません。パラシュートの構想自体は1400年代後半にはあったとされますが、実際に実用化を検討され始めたのは1780年代です》
これまで騎乗士が高所から降下するときは、フライハイト鉱石に頼っていた。そしてほとんどの騎士は自分が空を飛べるイメージが出来ないので、発生させる浮力は単純に運頼みである。あの鉱石が発生させる浮力はかなり不安定なので、大体2割前後が運悪く着陸ではなく落下になってしまう。
とまぁ、そういう『とりあえず8割がた安全に降りる手段が既にある』という状況もあって、パラシュートの発明にまでは至っていなかったらしい。
薔薇獅子の初登場時、運が悪ければあの時、派手に落下してたんだよな……。まぁ、過ぎたことだし別にいいか。
さて、壱式獅子の紹介はこの辺りにして、何故壱式獅子の量産が、俺が新型機の開発に着手することの答えになるかについて説明しよう。
ぶっちゃけ、薔薇獅子と壱式獅子って、殆ど性能差がないんだよね。
つーか汎用機として開発された薔薇獅子と、特定環境特化対応型換装機として開発された壱式獅子では、壱式獅子側の得意な戦術に付き合うと普通に負ける。いや、パイロット能力の差で勝てるかもしれないが、多分いいとこ辛勝辺りだろう。
一応、壱式獅子はその運用目的上装甲服の着用が難しいので、物理的な攻撃に対する防御力だけは薔薇獅子が大幅に上回ってはいるのだが、装甲服はビームやプラズマ兵器相手には、ベニヤ板の壁よりも心もとない程度の防御力だ。高エネルギー攻撃の場合、普通に燃えるせいである。
そして、だ。これが一番重要な理由なのだが……。
やっぱさー、後継機って欲しいじゃん?
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ところで、学園に納品された壱式獅子は全部で10機である。対して、訓練場に並ぶんでいるのは9機。
残る1機はどうなったかというと、まぁ、残念なことになっていた。こう、なんつーか、木偶の棒?
別にぶっ壊れたとか言う訳ではない。単に、リアが乗って飛行能力を試そうとしただけだ。
リアがマキャヴェリーという機体を開発したのは、リアの祖国で使われている人型ロボット、竜護機の機体の操縦適性が全くなかったせいである。
そして、竜護機というのはその目的が違う故に名前が違うだけで、基本的な操縦方法は騎乗士と大して変わらない。
つまり、竜護機を動かせないリアでは、当然ながら騎乗士だって動かせない。
『ちょっとセンパイ! これどうにかならないんスか!?』
「貴女の体質についてまで、わたくしがどうにかできるわけないでしょう。いいから一度降りてきなさいまし。別の方法を考えましょう」
俺がそう言うと、隣に立つアリスがちょこんと手を上げた。
「マリア様、リアちゃんをサブシートに乗せて飛行操作してもらって、機体の方はあたしが動かすってのはどうですか?」
『それっス!!』
先ほども解説した通り、壱式獅子は単独飛行能力を有している。両腕のエアバッグに背中のパラシュートは、その飛行能力を訓練するためのものだ。
それ以外に、コクピットにも工夫を凝らしている。最初から複座式になっているのだ。これまでの騎乗士と違い、獅子型は二回り以上も大型だ。なので、そうするだけの空間的な余裕もあった。この複座式、単純なパイロットの補佐以外にも、訓練用としての役割を持たせている。もし操縦者が訓練中、飛行操作を誤った場合に備え、サブシートに座る者、つまりこの場合は指導者が、飛行操作のコントロール権限を委任することができるのだ。アリスはその用途を逆に利用し、飛行操作に関する部分だけはリアにやらせようというわけである。
「そうですわね。では、それでやってみましょう」
ところで、リアがリントヴルムまで留学してきたのは、騎乗士、つまりこの国やグリプスの人型兵器だけが先んじて飛行能力を獲得したからである。
そして、リアが主人公たる原作ゲーム、『貫いて、マキャヴェリズム』では、一切の航空戦力が登場しない。
結論から言おう。
壱式獅子・コブ付きは墜落した。
ヴィネリア・ロンゴミニアドは、飛行操作適性をこれっぽっちも持っていなかったのである。……うん、まぁ、そんな気はしていたよ。空を飛ぶって概念自体がない世界観の登場人物なんだからさ。
機体から降り、膝をついて項垂れるリアに俺は声を掛けた。
「落ち込んでいる場合ではありませんわ、リア。失敗は成功の母といいます。これからどうするかを」
「き、きぼちわるいっズ……」
と、顔を青ざめたリアはそう言った。これ落下の衝撃で酔ってるだけだわ。すっかりグロッキーなリアとは対照的に、同じ機体に乗っていたはずのアリスはけろりとしている。
「あー、マリア様。多分ですけど、リアちゃんは致命的なまでに適性が無いと思います。失敗とか訓練とか、そういうので解決できるレベルではないくらいに」
「そん なに」
「やたらと方向音痴なのもそのせいなんですかねー? 多分ですけど、自分がどこに向かって進んでいるのかを自覚できてない、といいますか」
「ああ、成程。歩くだけだと二次元で済みますが、飛んでいる状態だと上下が増えますものね」
「水の中でどっちが水面なのか分からなくなる感じみたいですねー。……ところでリアちゃん、ひょっとしてカナヅチだったりする?」
「ウ、ウチはハンマーじゃないっスよ……」
「泳げないんじゃないのか、とアリスは訊ねてますのよ」
「なんで知ってるんスか……」
「カナヅチ治したら飛べるようになりますかね?」
「試してみないと分かりませんわねぇ……。飛行訓練の実験として、泳げるものと泳げないもので分けて調査してみるべきかしら」
「それよりもウチはどうすりゃいいんスか……。これじゃあ人型兵器の普遍的飛行能力の研究が進められないっスよ~。せめてデータだけでも取りたいっス~」
俺とアリスは顔を見合わせた。
「……どうしましょうか、マリア様」
「ううん、騎乗士も動かせない。飛行操作もコントロール出来ない」
いや、待てよ。そもそも、さっきリアがサブシートで飛行操作を担当したのは、リアが騎乗士の操縦適性事態を持たないからだ。つまり、
「それなら、始硬剣に天竺葵を括り付けて、無理矢理飛ばす?」
その言葉に、リアは目を見開き、
「そ、それっスーーー!!!」
おい本気かこいつ。いや言った俺も俺なんだけどさ。
「マリア様……」
と、アリスが呆れたように俺の名を呼んだ。
うん、そうだね。新型機の設計をやっている真っ最中だっていうのに、またやること増えたね。
《感想:いつも通りですよね》
まぁ、俺は単独でも飛べるし、新型機には現状、天竺葵との連携機能を組み込む予定もないし、乗り換え後のことを考えると、こうすることで色々と丸く収まる、のか……?




