敵は公爵令嬢にあり?・改 3
突然だが、犬○家の一族を知っているだろうか。
《返答:当機のライブラリに該当する情報は見つかりませんが、それがこのろくでもない状態を指しているであろうことは予想できます》
結論から言えば、俺たちの訓練機が犬○家していた。完全な犬○家という訳ではなく、上半身が半分ほど残っている半犬○家状態だ。
「ほんっとうに、ごめんなさい!!」
そして犬○家から離れた場所で、この事態を引き起こした当人が全身全霊で謝罪していた。
何が起こったかというと、アリスは騎乗士の操縦を早くも習熟。歩行動作から走行動作、ホップステップジャンプと成功し、続けて倒立前転をしようとした。
しようとしたら、倒立時に両肩が自重を支えきれず脱落。しかして勢いはそのままに頭頂部から地面に接触。頭部と胸部と地面を削り取りながらも、背中のコブが支えとなったせいで背中から倒れることも出来ず、不格好な逆立ちのまま停止するに至った。
「貴女のせいではありませんわ。事前に止めれなかったわたくしの責任ですの」
「ですけど、今回は幸いにもお怪我もありませんでしたけど、一歩間違えればお命にかかわっていたかも」
「それも含めてわたくしの責任ですわ。騎乗士の指導者を請け負うというのは、そういうことですわよ。ほら、いい加減に泣き止みなさいまし。他の方に泣き顔を見られますわよ」
「は、はいぃ……」
他の訓練機を始め、教師の騎乗士も近付いてきた。流石にこの状態では自力での回収も不可能なため、他の機体の手を借りざるを得ない。
更に整備担当だけで修理できる範囲ではない場合、その他のグループの整備担当達に助けてもらうしかない。それはつまり、他人の金で中破機を修理する経験値が得られるのだ。多くの整備担当と指導者にとって、願ってもない幸運だった。
それ故に数機が犬○家に向かっているのだが、その中から1機だけ、俺たちの方へ近付いてくる。
装甲の多くが白で塗られ、さらに一部には金を差し色に使われている機体。そして白と金は、王家にのみ許された機体色だ。
つまり近付いてくるのは、まぎれもなくリギア第一王子に他ならない。
おいおい、このタイミングで接触してくるのかよ……。
機体を片膝立ちの状態で停止させ、コクピットから飛び降りてきた。
「あら殿下。共もつけずにどうかなさいまして? わたくしたちを笑いにでも来られたのですか?」
「……婚約者の身を案じるのに、おかしなことも無いだろう。怪我はないか、マリア。特待生も」
「ええ、ご覧の通り、二人とも怪我一つありませんわ。……ってアレスさん、どうなさいまして?」
アリスは何故か、俺の身体を盾にして、リギアから身を隠していた。
「……わたくしを危険にさらしたので、殿下に合わせる顔がないとかでしょうか」
「その、それもあるんですけど……」
「あるんですけど?」
「この姿、体のラインが出てるのが恥ずかしくて……」
う~ん乙女。言われて思い出したが、確かにこういう会話イベントも原作にあったな。
「肌の露出もありませんし、透けるような素材も使われておりませんわよ。何も恥ずかしくはありませんわ。ですわよね、殿下」
どこか変なところがあるだろうかとリギアに身体を見せてみるが、表情を硬くして顔を逸らされてしまった。
「スタイルいいゴルディナー様には、あたしの悩みが分からないんですよぅ……」
「……短い間に、随分と慕われるようになったものだな」
「殿下を差し置いて、ですか?」
そう問うが、首を横に振られた。
「……この事態を招いたのは、私の失言と、普段からの態度が原因だ」
そして顔を近付けられ、囁き声で、
「周囲の者たちが何か画策している。悪いが、そちらでも注意していてくれ」
それだけ言って、すぐに離れていった。言われるまでもなく、もう知ってるんだけど。
―――こちらが知っていることを承知で、既に殿下の手に余る状態になっているとお伝えになられたのですわ。この場にお一人だけで来られたのも、このことを伝えるためでしょう。
もしかして俺、何かやりすぎちゃいました?
《返答:明らかに挑発をし過ぎたかと》
―――……それは否定いたしませんが。仮に殿下が周囲に止めるように言っても、それは対外的に『第一王子は今後の事件に無関係である』という扱いにさせられる状態にまでなっているということでしょう。そして止める者がいないという形になるので、内容は段々と過激になるでしょうね。
オイオイどうするんだよそれ。出来れば過激化はさせず、しかし終息もしない程度には維持したいんだが。
―――一応ですが、二つ思いつきますわ。一つは殿下の目のある場所にいること。無関係扱いされても、『第一王子が止めなかった』という状態になれば、無関係という扱いではいられませんわ。それを避けるため、躊躇させやすいかと。
常に王子の目に付くところに、かぁ。……王子を女子トイレとか女子寮に連れ込んだらマズいよなやっぱ。
―――当ったり前ですわー!!! あ、ですが対外的には婚約者なのですし、わたくしのお部屋なら潜り込んでも周囲はお目こぼししてくれるかも……。普段は周囲のため、グループの長として反目を演じている二人。しかし人の目のないところでは……。ンンーッラヴロッマァーンス!!!
こいつまだ王子との結婚を夢見てんなおい。半年過ぎて熱さを忘れたか……。
《提案:ミス・マリア。残る一つの対応方法について提示をお願いします》
―――失礼いたしました。もう一つの手はアレスさんと共にいることですわ。大義名分は『アリス・アレスをゴルディナー家一行から助ける』ということですから。当然、本人を巻き込みそうな時に仕掛けるのは難しくなります。
面倒くせぇ~~~! パーティの時と言わず、とっとと仕掛けてきてくれねーかな。
《報告:今仕掛けられても準備が整っておりません。これ以上の挑発行為は避け、現状維持に努めてください、マスター》
誰だよこんな面倒な状態にしたの。
…………俺かぁ!
「ああ、あと一つ」
リギアが更に話しかけてきた。まだいたのかこいつ。
「コブ付きは胴体の重量増加に合わせて足回りも補強されているが、腕や肩には手が入っていない。未改修の雌型なら分からんが、少なくともコブ付きでは同じことをしても同じ結果になるぞ。注意することだ」
饒舌。早口。一番話したかったのって実はこの内容だろ。
―――殿下があれだけ一度にお話してくれたのは、5年振りですわね。
《質問:5年前に何かあったのですか?》
―――殿下が熱病にかかられましたの。珍しい病気で、治療法を探して国中で大騒ぎになったのですわ。幸い、国に立ち寄っていた傭兵団が治療法を知っていまして無事完治なさいました。ですがそれ以来、人が変わったように無口になられてしまって。
その傭兵団だけど、貢献が認められてリギアの近衛兵団に丸ごと召し抱えられてるよ。ほら、あそこにいる整備士たち。あいつら全員、その傭兵団出身のやつら。
《感想:見たことがない妙に老けた学生達がいると思っていましたが、そういうことでしたか》
今度こそ立ち去った王子と入れ替わるように、教師が近付いてくるのが見える。「一日目で機体をあれだけ動かせるやつがいるのか」という感心と、「一日目で機体をあれだけ破壊できるやつがいるのか」という呆れが複雑に混ざりあったような表情だった。
これは反省文コースかなぁ。
●
そして、2ヶ月余りが経過した。
マリアのアドバイスにより噂は鎮静化もせず悪化もせず。加えて、俺が第一王子の婚約者という立場のおかげか、俺や取り巻き令嬢たちが物理的な被害に遭うこともなかった。
たまに王子の取り巻き三馬鹿がちょっかいをかけてくるのが、多少うっとしかったが。
《質問:その三馬鹿ですが、妙にミス・アリスに執着している節が見られます。何か理由があるのでしょうか?》
あ~それ、リギアのせい。あいつは大抵のものに無関心を装っているんだけど、入学式の後、俺たちが教室に入る前な。リギアの方から主人公を呼んで名前を聞いて、話をしたいって言っちゃうのね。
『王子が極めて珍しく興味を持った女』っていうことで、勝手にリギアはあの平民にご執心なんだって思いこんじゃって、王子のために気を引けないかと勝手に動いてるんだよ。
だけど実は、王子は主人公本人について全然興味が無かったりする。
話しかけたのだって、今の平民の生活が気になったんで少し話がしたい。
名前を聞いたのも、もし聞く相手を間違ってはいけないから確認しておこう程度の理由しかない。
『学園に来た貴族社会に染まっていない平民』であればだれでも良かったってわけだ。
だけどその辺を誰にも説明しないから、三馬鹿が勘違いして暴走しかけてる。
《質問:王子のせいというのは理解できました。残りの一人、ニオスはどうなのでしょうか》
あいつは王子に取り入るために、三馬鹿の付き合いで参加しているだけだね。
ニオス、ついでにリギアも、個別ルートに入らない限りは主人公に興味を抱いたりすらしないよ。
さて、そろそろ近況報告に戻ろう。
3人がつきっきりで面倒を見たおかげか、あるいは本人の努力の結果か。アリスは5月中旬、そしてつい先日の試験の両方で、奨励金が貰える程度に良い成績を残すことも出来た。
ちなみにだが、原作だとここで手に入れた奨励金は、機体の強化資金として使用出来る。
と、ここまでは概ね想定通りであったが、一つだけ誤算が生じていた。
「アレスさんがわたくしの寵愛を受けているからという理由でいじめられるのは、予想していませんでしたわ。ごめんなさいね、アレスさん」
いや、よく考えたらこれ、予想しておくべきだったんだよね。
原作では王子に気にいられている平民が気に食わないという理由で、平民排斥派最大派閥である悪役令嬢の傘下に加わる連中が大量にいたのだ。
となると当然だが、『第一王子の婚約者である公爵家令嬢に気にいられている平民が気に入らない』と考える連中が同じくらいいるはずなのだ。
不幸中の幸いというか、噂の対策がそのまま防衛行動につながっている。さらにそういう連中を取りまとめる程に求心力がある奴がいないので、烏合の衆と化していた。原作だとマリアを名目上の首魁として、取り巻き令嬢2人が実質的な支配者になってたからな。
そのおかげか、物を隠されたりとか服を汚されたりみたいな被害に遭うのは、原作に比べて酷く少ない。いじめられるアリス本人からすれば、何の慰めにもならないんだろうけどね。
「幸い、まだ騎乗士まで何かされたりはしていないみたいですけど」
「分は弁えているということでしょう。騎乗士はわたくしも同乗いたしますから。
もし細工が発覚すれば、その生徒の家は最低でも降爵。程度によっては取りつぶしまで起きてもおかしくありませんもの」
一応、この状況を完全に解決する方法はある。あるんだが……。
《感想:当機の計算ですと、その準備が整うのは、早くても2学期の修学旅行以降になります》
そうなんだよなぁ。俺の準備期間が半年ではなく1年だったらもう用意できてたろうけど。
「マリア様、アレスさん。そちらの問題もありますが」
「もうすぐ開催されるパーティの準備も大切です」
「……ぱーてぃ?」
「何を初めて聞いたって顔をしているのです、アレスさん。4月にもお伝えしていたでしょう。夏休み前にはパーティが行われると」
―――具体的には7月に入ってすぐですわね。ここで交流を広げたりして、2週間後の終業式までの間に、どこの家を訪ねるのかなどの計画を詰めますの。
「わ、忘れてました! どうしましょう、あたし何も準備してない、いや何を準備すればいいのかも分からないです! 今から参加辞退って間に合いますか!?」
「落ち着きなさい。準備ならわたくしの方で済ませておきました」
「はぇ?」
「パイロットスーツでスリーサイズも把握してましたからね。数は多くありませんが、ドレスを用意しておりますわ」
「というわけでアレスさん。この後は何もご予定はないはずですよね?」
リリーナ嬢がアリスの右肩を後ろから抑えた。
「これからそのドレスについて、試着に行きますわよ」
カタリナ嬢がアリスの左肩を後ろから抑えた。
「オーッホホホ! 今日からはパーティの作法を叩き込みますわよー!」
「あ、逃げ場ないやつですかこれ」
アリスが会場に行かないと三馬鹿が釣れないからな。逃がすわけには行かない。
●
開催中のパーティの様子をお伝えする前に、現在の各陣営についてまとめておこう。
一つ目。俺が率いる悪役令嬢グループ。主人公の数少ない仲間なので悪役と称するのは変な感じはするが。目的は楽しく好き勝手に頑張りますって感じだ。
《反論:違います。いえ、陣営としてであれば違わないでしょうが、マスター当人、及び我々の目的は、2年後に勃発する見込みの戦争に備え、国内における騎乗士の性能向上です。
本来、マスターの言うところの『原作』であれば、ミス・アリスが王子たちと懇意になる中で達成されていくはずですが、マスターがミス・アリスを取り込む方針でしたので、『原作』の方法は使えません。故に我々で対応せざるを得なくなりました》
二つ目。リギア王子率いる攻略対象グループ。正確には何も言わない王子を忖度、もとい王子のためにと勝手に王子の心情を妄想して暴走している王宮有力貴族の息子たち。
三つ目。公爵令嬢である俺や、攻略対象グループに注目されている平民を快く思わない有象無象。つまりモブ。
四つ目。その他大勢。まぁ三つ目以外のモブだね。ここは騎乗士の訓練でアリスと仲良くなった連中とか、あとは学内権力戦に興味がない生徒たちで占められている。
そしてこの三つ目。ここがおかしい。いくら相手が平民とは言え、公爵令嬢のお気に入りだ。旗頭もなしにちょっかいをかけれるだろうか。いや出来まい。だって俺にチクられたら大変なことになるぜ。まさか全員がそれすら予想できないお花畑ではないだろう。
つまり、実行を示唆した連中がいる。原作ゲームにおける悪役令嬢のように。
というわけで、場も温まっているパーティ会場の様子をお伝えしましょう。
多くの参加者がいるにもかかわらず、パーティ会場はしんと静まり返っていた。中央に作られた空間には、俺とアリスと取り巻き令嬢の2人。そして王子をはじめとする攻略対象の5人だけが立っている。
《感想:全然温まっていませんね》
―――ひえっひえですわよ。
言葉の綾だよ!
それ故に、リギアの発した声はよく聞こえた。誰もが聞き逃すまいと、耳をそばだてている。
「……これは、どういうつもりだ?」
そう話すリギアの足元には、白い手袋が片方だけ落ちていた。
俺が投げつけた手袋だ。
―――あれ? 殿下たちを挑発して決闘を挑ませる計画ではありませんでした?
いや、俺もその予定だったんだけど、よく考えたら原作と同じように王子が俺に決闘を挑んでもおかしくないほど環境が整っていないんだわ。
かと言って、三馬鹿が王子の代わりに手袋を投げつける可能性もない。あくまでもトップはリギアだ。三馬鹿に「王子のために」という理念はあっても、「王子の代わりに」という思考はない。
となると俺がやるしかねーじゃん。
―――この方、もしかして行き当たりばったりで活動しているだけではありませんの!?
《肯定:ようやくお気付きになりましたか、ミス・マリア。そうです。マスターは方針は決定し、そのための準備も行いますが、何か問題が起こったら基本その場しのぎです》
人生なんてそんなもんだよ。なんでも都合よく計画通りに進むのは空想の世界だけだっての。
それに切札は準備してるから大丈夫だって。まぁ見てな。
「どうもこうもありませんわ。妙な噂を流させ、低俗な嫌がらせも辞めさせるために、手っ取り早く決闘で白黒付けようということです」
「……いつ、俺がそのようなことをした?」
「直接行ったのは殿下ではありませんわ。アレスさんを気に入らない方達です。
指示のみにとどめ、自らは手を汚さない。王族の振る舞いとして間違いはありませんが、その責任は取らねばなりません」
「お待ちください、マリア様」
口を挟んできたのはグレイ。リギアの乳兄弟だ。続けて宰相の息子であるヴァイトも隣に並んでくる。
「それを殿下が指示したという証拠はあるのですか?」
「いいえ、ありませんわ。殿下は言葉少なな方ですもの」
俺の返事に二人は失笑する。
「ははは、それでは」
「ですが、それ故に殿下の御意思を推し測り、代行する方もおられます。それを止めないということは、即ち殿下の御意思に他ならないでしょう。違いますか、代行されるグレイ様?」
「……確かに、私はその立場を任せていただいております。それでは、私が嫌がらせを指示したという証拠があるのですね?」
「いいえ、ありませんわ」
先ほどと一句違わぬ言葉を返す。
「そしてこれも同じこと。殿下に対しグレイ様がおられるように、グレイ様のために行動する方々がおられます。そしてその者たちの行いをグレイ様が黙認するということは、つまりグレイ様の、延いては殿下の元に責任があるということ」
「……面白い理屈ですが、滅茶苦茶だ。それでは誰が何をしても、殿下が責任を取ることになってしまう」
「イニミト。ツェッフィ。ズォエー。ヴァイツ」
ある生徒の家名だ。即ち、グレイの生家であるアトライア家、そしてヴァイトの生家であるイーリッヒ家に属する騎士のうち、今年入学した子がいる家名である。
その羅列に二人は顔を訝しめるが、これだけではまだ弱い。どの騎士がどの家に努めているか程度なら調べればすぐに分かるからだ。
故に、最後の情報が強い効果を発揮する。
「そして、ニエサン家とファイラー家は実行なされませんでしたので、制裁されていますわね」
「何故! いや、どうやって!?」
声を荒げたヴァイトが、失言に気付き顔を青くした。ほらこんなもん。
《感想:お粗末でしたね。騎士を目指すために入学しておきながら、最も重要な騎乗士の訓練に一度も出てきていないのですし》
―――普通なら上が訓練できるように面倒を見ますから、何も問題が起きていないと思う方が難しいですわ。策士気取りと聞いていた通り、詰めが甘すぎますわね。
ニエサンとファイラーに指導してくれる人がいないのか、何なら紹介しようかと尋ねたら、申し訳ないという顔で断られて、その理由も簡単に口を割ってくれたよ。
あ、俺が直接聞いたわけじゃないよ。俺の家や取り巻き令嬢の家に努める騎士の子供が先輩にいて、そこから更にその人達の伝手でさらにもう2つ3つと経由させてるから。
まぁ忖度できない程度には素直みたいだし、それが俺と繋がっているとは予想も出来ないだろうね。
「馬脚を露しましたわね、ヴァイト様」
「い、いや……これは私が勝手にやったこと。殿下は関係ありません」
「その理屈が本当に通ると思っているのでしたら、わたくし、父を通して宰相閣下に次期宰相について忠言をお伝えいたしますわよ」
「く、それは……!」
「……もういい」
「で、殿下?」
「もういいと言った。何が望み、……いや、何故決闘を?」
王子たちの後ろで脳筋のレオニスが「え? あれ、どういうこと? オレにも分かるように説明してくんない?」と困惑しているが、同じようによく分かっていない生徒もそれなりにいた。
俺の後ろにいるアリス・アレスって名前の原作主人公とかな。
「『それだけ分かっているのなら糾弾すればいい。決闘を挑む意味がない』と、殿下はそうお考えなのですわね」
俺の都合でそうはいかないんだよなぁ。ここでの決闘イベントは、多少の無理筋でも絶対に必要だ。
だから、
「わたくしも、鬱憤が貯まっておりますの」
決闘に、感情以外の御託が必要でして?
―――この作者、もしかして行き当たりばったりで執筆しているだけではありませんの!?
《肯定:ようやくお気付きになりましたか、ミス・マリア。そうです。この作者はやりたいシーンは決定し、そのための伏線も張りますが、何か問題が起こったら基本その場しのぎです》
しょーがねーだろプロット何も書いてないんだから