相談 その3
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(なかなかの覇気と力に満ちた人物ね。)白銀の古龍エオストレはヒルデガルトの影から首だけをもたげながら、ヨーゼフが出ていった扉に視線を向けた。
「それにしてもアデルハイトの爪の槍と鱗の盾がシュタイン王家に伝わっているとはね。アデルハイト自身がシュタイン王家に繋がる人物にそうした物を渡した記憶は無いんだけど。」アデルハイトの生まれ変わりであるエオストレが呟いた。
「それは、先ほどエオストレがおっしゃっていた、一度だけ人間を手助けした時のことでしょうか?」エオストレの呟きを耳にしたヒルデガルトが質問した。
「そうよ。さっきも言ったように、古龍はその強大な力の故に基本的に人間を含め、こちらの世界の者たちには干渉しないの。それは大きな魔力を秘めた身体の一部を分け与えることも含まれるわ。アデルハイトは武具や防具にできる爪や鱗を与えたのだから、人間にとってそれに見合うだけの脅威が存在したということ。そして、そんな脅威はシュタイン王国の歴史の中には無かったわ。」
「その脅威というのは、もしかして、聖フリューゲルたち七聖人が魔王を封じた時のことでしょうか?」ヒルデガルトがおずおずと尋ねると、エオストレは翼を羽ばたかせ、白銀の光の粒を撒き散らしながら、「ご名答!」と少し冗談めかして肯定した。
「まあ、私もヒルデガルト、あなたと血の契約を結ぶ形でしっかり干渉してしまったから、不干渉なんて偉そうなとしたことは言えないんだけどね。」
「何にせよ、今のところ王宮内ではアデルハイトのことは噂にもなっていない様子だったわね。上手く聞いてくれて助かったわ。」エオストレはそう礼を述べながら、右の前足をヒルデガルトの左手の上に重ねた。
古龍の掌はするりと滑らかでひんやりと心地好いと思いながら、ヒルデガルトは右手をその前足の上に重ねた。こちらは滑らかだが硬質な手触りで、ほんのりと温かい。
「大切なエオストレのためですもの、頑張ってアデルハイトの行方を探しますわ。」ヒルデガルトはそう言って重ねた手に力を込めた。
「一つお聞きしたいのですけれど。」ためらいがちにヒルデガルトが切り出した。
「先ほど、古龍は基本的にこちらの世界に干渉しないとおっしゃいましたが、エオストレは私と契約を結んだことで他の古龍から怒られたりはしないのですか?」
「心配してくれてありがと。でも大丈夫よ。自ら謙抑的に振る舞うというだけで、何か罰があるわけではないから。」
「でも、龍鱗一枚を与えることさえ厳しく律されているのに、私はエオストレの血を頂いてしまって・・・」
「うーん。あれは不可抗力というやつね。生まれ変わったばかりで寝惚けていて、目の前に差し出されたあなたの指に反射的に噛みついてしまったから。あのままだとあなたの身に悪い影響が出かねなかったから。まあ、出会い頭の事故のようなものよ!」エオストレは少し目を逸らして軽い口調で応えた。
「エオストレ、あなたの血を頂いたことで、あなたから私に魔力が流れ込んで、私の中に収まりきらなかった魔力が髪から光の粒になってこぼれ落ちていますわよね。」
「ええ、そうね。私が羽ばたいて、光の粒が舞うのとお揃いね。でも、私から一方的にあなたに流れ込むのではなくて、私がヒルデガルトの、あなたの魔力を使うこともできるのよ。」
「そんなことが・・・。そうした魔力のやり取り以外にも何かあるのでしょうか?」
「それ以外だと、声に出さなくても念を飛ばすことで会話ができるとか、ヒルデガルトの影が射す所に自由に出没できるとか。あとは、そうそう、あなた自身の肉体的な回復力も上がっているわ。」
「回復力・・・」その言葉にヒルデガルトは、エオストレと出会った日に、ひどく挫いた足が知らぬ間に治っていたのを思い出した。
「あとはあなたが私とどれくらい魂を通わせられるか、あなたに能力があるかにもよるけれど、私が使える力の一部、たとえば魔法を使えるかもしれないわ。」そういってエオストレは尻尾の先から光の球を出して、ヒルデガルトの方に押しやった。
「だから、さっき教えたように、身体の中での魔力の流れを操る練習をしっかりやってね。」
「が、頑張りますわ。少しでもエオストレのお役に立てますように。」光の球を受け止めながら、ヒルデガルトは頷いた。
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