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オンラインノベルを科学する

異世界で改革を"させられている"主人公たちに関して~構造的に見ていく

作者: undecane

僕自身の個人的な見解を書いていく。


そして、僕は哲学を専攻している身ではないので間違っているかもしれない。


よろしくお願いします。

最近、オンラインノベルの"タイトル"のキーワード解析を始めた。


解析の結果、


「異世界に転生して、俺最強」


が、現在の"なろう"系オンラインノベルの主流であることが分かった。

実際に読み進めていくと、この分析の通りのことも多い。

皆さんも"確かにな"と思っていただけるはずだ。




ここで、「異世界に何故行くのか」という点に注目したい。




「俺、ツエーするんでしょ?」と思われるかもしれません。


でも、そんな、上っ面だけ見ていたのでいいのだろうか?




異世界に行ってすること。



冒険をするだけでなく、

商売を始めたり、

農業改革したり、

政策を立案したり、

軍を指揮したり、

民主主義を取り入れたり、

…etc.


と多岐にわたる。




不思議なことに、異世界に行くと突然、改革を始める「改革オタク」になってしまっているように見えるのだ。


このことは、幾つかのエッセイの中でも既に指摘されており、「著者の方々の能力不足・知識不足」と結論付けている記事も見られることがある。




そうなのかもしれない。

そんな風にも感じる。

でもちょっとだけ、待って欲しい。


もしかしたら、「改革オタク」にならなければいけない、そんな主人公の立場があるのではないか?


異世界で成功する保証のない、各改革をそれでもやらないといけない理由があるのではないか?


テンプレ化してしまってわからないが、最初の物語構築者には意図があったのではないか?


僕にはそう思えてしまった。





今回は、科学的ではないと思う。


すごく哲学的で、霞をつかむような話になってしまっている。


間違ってるかもしれない。


ご了承願いたい。





まず、仮定をする。

今回扱うのは、神様に役割を与えられて、幼少期に転生し、記憶があり、魔法などのスキルは生得的な適性が必要だとする物語設定だ。

よくあるテンプレだね。




取りあえず、結論から見ていく。


問 :何故異世界に行くのか?

理由:現実世界における、実存 (真の私とは何か?) を捉えることからの逃避


 1. 異世界で、理想 (とされる) 私を手に入れる (仮初のアイデンティティの確立)

 2. 今までの真の自分へ絶望し、これを回避する必要がある。

 3.「生まれつきの、崇高な理性 (前世の認識)」の基、行動する必要が出てくる。

 4. 進歩主義、そして、自文化中心主義への邁進。

 5. 無理のある農業改革・行政改革・民主主義化が横行する。




最初は、現実世界での実存を捉えること、それから逃避することで始まる。

"現実"世界や"現実"の他者との"つながり"を避け、実存を捉えることを"拒否する"。

「真の私とは?」という疑問から、逃げるわけだ。


現実世界を拒否しているのかもしれない。



そして1. だ。神に誘われて異世界へ行くことになる。

異世界では理想的な役割 (仮初のアイデンティティー)をゲットする。

「真の私とは?」という疑問とはおさらばだ。




しかし、そうは問屋が卸さない。


2. この段階で主人公は今まで (現実世界) の"真の自分"に絶望することになる。

キルケゴールは「死に至る病」の中で、絶望を2つ挙げている。

1つ目は、理想にたどり着けなかった"真の自分"。

2つ目は、理想を達成したことで放棄した"真の自分"。

理想の成就に関わらず、"真の自分"に対して絶望することになる。


異世界に行った、主人公は"理想の自分"を得ることで絶望するわけだ。

耐えられるわけがない。


さらに、"理想の自分"により、"真の自分 (前世の自分)"のみならず、今の理性 (前世の認識)を否定することになるからだ。



異世界に転生することで、主人公は図らずも、


理想の自分の獲得 = "真の自分"の放棄 = 現在の理性の否定


の関係に苦しめられることになる。

("真の自分"と"今の理性"の二重の苦しみを味わう。)




3. 何とか自分が絶望せずに済む方法はないか? 今の理性を肯定できないか?

そう (無意識に) 思った主人公は、「生まれつきの、崇高な理性 (前世の認識)」に頼ることになる。

少なくとも、今の理性は否定したくない、そんな心境 (無意識) だろう。

自身の理性を尊重することで、"真の自分"への絶望からも回避したいと望むことになる。




4. 主人公の「生まれつきの、崇高な理性」は進歩主義的思想なのだろう。

行きつく未来はみんな同じ。

発展していくと同じ未来になるはずだ。


そんな考え方は、何時しか


"前世の世界"が優れている。

"異世界"は劣っているな。

"劣った社会"を進歩させてあげなくてはいけない。


という考えに至る。

そうなっても不思議じゃない。


主人公は自文化中心主義に則った行動をとることになる。


(中世ファンタジーは言うまでもないことだが、実は"なろう"系のスペースオペラ作品でも、前時代的な封建主義・帝国主義的設定の作品しかない。転生先は、劣った社会じゃないといけないのだ。)




5. 絶望を回避するための自文化中心主義。

主人公はたいして知識のない農業改革・行政改革・軍事改革・民主主義化を進めることになる。

それが異世界で成功するとは限らなくてもだ。


主人公の絶望を回避するためなので、周囲のことはお構いなしに改革が進む。

加えて、主人公の理性を肯定するためなので、改革は留まるところを知らない。




それでは、この"改革"はいつ終わるのか?


異世界が発展しきるまでか?


他にもう一つだけ終わらせる方法がある。


それは、"前世からの生まれ変わりであること"を異世界の人たちが受け入れること。


こうして初めて、主人公は"真の自分"に向き合うことができるようになり、改革は落ち着く。(多分)





今回の投稿では、下記の問いに答える形になった。


1. 何故異世界に行くのか?


2. 何故異世界で改革するのか?


3. 異世界での改革は終わらせられるのか?




僕は哲学の専門ではないので間違っているかもしれないが…。


今回の考察。


上記の問いに関しての答えとして、悪くはないのでは…と思っている。


オーラを感じるなと思ったら評価・ブックマークしていただければと思います。

そうすると筆者のMotivationが更にUpします。


下記<オンラインノベルを科学するシリーズ>作品もよろしければどうぞ。

下記リンクから飛べます。


「オンラインノベルに於ける傾向分析を科学的にしていく」


「オンラインノベルの次に来るもの~「破壊的イノベーション理論」から見た"なろう"系オンラインノベルの躍進と衰退」


「オンラインノベルの執筆に於ける作者のリソースの配分~「ワインバーガー・ドクトリン」で考える」


「死亡して異世界に行く」のは、かなり奇跡的なことかもしれない~各種調査から分かった実態

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― 新着の感想 ―
[良い点] 理想の自分の獲得 = "真の自分"の放棄 = 現在の理性の否定の部分が上手く纏まってますね(*'▽') [気になる点] 逆に行先が遥かに進んでいて、良いように主人公があしらわれ、そこから頑…
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