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三國のダマスカス  作者: 羽有ル蛇
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群雄割拠 ―董卓暗殺―

「慶橋様…親書で御座いますか?」


「崔琰か…平原の劉備殿から少しな、宮中に繋ぎを取ってほしいそうだ。」


「宮中に…それはまた…」


「うむ…今の宮中は董卓の権力下、あの類いの者は寝首をかかれるのを恐れるからな…丁度良い、献帝に顔見せする次いでに王允にでも会って来よう。」


「そう言えば、荀彧殿が慶橋様を探しておりましたぞ。なんでも推挙したい者がいるとか申しておりました。」


「荀彧の推挙であるなら直ぐにでも会わねばな。」


「慶橋様…この度、私が推挙致しますは、淮南郡成徳県にて沈着冷静にして豪胆と聞こえ高い劉曄殿、兗州山陽郡より弁舌に冴えた満寵殿、私の甥になります荀攸殿…何れも慶橋様に仕えるべく、参りました。」


「そうか…劉曄殿、満寵殿、荀攸殿よく参られた、色々と至らぬ私だが支えてほしい…」


「荀彧…鄭玄とよく話し、劉曄殿等の事を決める様に…それと韓馥殿具合はどうか?」


「韓馥殿は高齢な上、馴れぬ長旅の為…今暫くは、休養に充てるほかないかと…」


「うむ…その辺りは、伴をした閔純等に任せ、必要とあらば助けてやるが良い。」






 慶橋は一路河を船で登っていた、護衛に太史慈と黄忠、手勢で400の兵もいる。

甲板に設置された功城弩は、念の為、布を被せ隠してある。

 船旅は順調で、陸路であれば半年近くを要する行程も、一月半あれば往き来出来るだろう。


 廃都洛陽を過ぎ、暫くすると官軍の舟が近付いて来たが、船にはためく旗を見て、接舷せずに岸に戻っていく、都への先触れの馬が駆けるのが見えた。


 私の印のある船に、領地と同じ様な事をすれば、ただでは済まないのを理解しているのだ…青州仙姑頂は、現在後漢の領地ではなく、仙姑頂と国名を名乗っている。水滸伝の梁山泊を何となくだがイメージしてみた。


 長安に程近い港に船を寄せ、長安からの迎えを待つ…暫くすると馬車と、それを守る様に騎馬が船の脇にまで来た。

 馬車から降りる人物を見る。


「久しいな…王允殿、随分と老け込んだではないか?」


「慶橋様のおかれましては、お健やかに御過ごしの様で…此度は、帝にお目通りとの事ですが…」


「うむ…その辺りの事は、馬車の中で話すとしよう。」


「うぅむっ…承知致しました、こちらへどうぞ…」


 慶橋は促されるままに馬車に乗り込み、太史慈の配下100人が護衛の任に着く。


「して…此度の訪問の真意を御伺いしても…」


「司徒王允殿程の者が…わかっているのであろう?」


「では…やはり董卓を?」


「その為に参った…王允殿が知る限りで構わん、董卓配下の事を教えてくれ…」


「わかりました…先ずは董卓の李儒、李傕、牛輔、郭汜、張済、樊稠、胡軫、王方、李蒙等は、引き込んでも害悪にしかなりますまい…故に慶橋様が引き込むなら賈詡、徐栄等がよろしいでしょうな…賈詡に道理を説き、徐栄は利を以てすれば可能かと…」


「なるほど…では、帝に謁見の後、酒会を催し…賈詡、徐栄に接触を図るとするか。」


「では都に戻り次第、友の黄琬や士孫瑞等と協議して、事に挑みましょう。」


 帝への謁見は、つつがなく進行し、献帝は霊帝から聞き及んだのか、慶橋を叔父とし大いに歓迎した。

 その夜、王允は慶橋来訪を歓迎する酒会を催し、その場に賈詡、徐栄等を招待した。董卓は呼ばれない事を不服に感じるが、来賓である慶橋の希望と聞き、承服するほかなかった。

そして、慶橋、王允等の謀略は、睦言の如く静かに推し進められた。






「何とっ!誠かっ!」


「はい…この度、帝より董太師に御位を譲るとの詔を承りました。」


「して司徒の王允等は、何と申す?」


「此度は帝よりの詔…王允殿等は、全て恭順の意を示しております。」


「そうか!

では速やかに出立の準備を整えよ!」




 道中、董卓一行を濃い霧が遮り、差し込む日の光りは赤みを帯びていたのを、董卓は不信に思い賈詡を喚び問う。


「賈詡!これは何ごとか?」


「天に紅光、地に紫の霧…これは董太師が、御位に昇られるのを、天が示す…吉兆に御座います。」


「なるほど…吉兆であるか。」



 董卓一行が長安の城外に差し掛かると、文武百官が並び出て、恭しく出迎える。

城内に入ると徐栄が配下を従え、馬車の警護についた。


「ぐふふっ…これで宮中はおろか、大陸が意のままよ。」


 馬車の窓から長安の様子を見ていた董卓が、付き従っていた賈詡と徐栄に問う。


「賈詡!徐栄!

何故出迎えの者が、腰に帯剣している!」



 途端に董卓の乗る馬車に、四方から槍が射し込まれ、驚いた馬が馬車を横転させる。次々と射し込まれる槍を受け、馬車から董卓が転がり出てくる。


「しぶといヤツ…何をしてる!槍で突き殺せ!

矢を射掛けよ!」


 董卓のこれ迄の行いが、全て悪意となって董卓を次々と襲う。董卓の着衣はビリビリに破け、着込んだ鎧に血が滴るり、冠は外れて悪鬼の如く、髪を振り乱し叫ぶ。


「貴様等…謀りおったなっっ!


李儒!李傕!牛輔はどこにいるっ!!


なっ…慶橋…何故、貴様が?!」


「勅命だ!

徐栄殿、逆賊董卓を討ち取れ!」


「董太師…勅命により失礼致す!」


 徐栄の剣が董卓を背後から袈裟斬りにする、びちゃっと水を撒き散らす様に血が吹き出る。董卓は兵の剣を奪おうと手を伸ばすも、再び徐栄に斬りつけ突き殺されてた。


「…やったぞ!」


「董卓を討ったぞっ!」


「やった…董卓がしんだぞ~っ!」


 この日、董卓が殺された事を耳にした長安の人々は、歓喜の声を上げては町に飛び出で狂喜乱舞した。

 この後、長安・郿に居た董旻、董璜をはじめとする董一族は、悪逆の限りを尽くした董卓の連座として皆殺しにされた。また、董一族の遺体は集めた上で火を着けられた。

 広場に曝された董卓の遺体は、生前からの酷い肥満体で、折りしも暑い日照りの為に屍からは脂が地に流れ出す程で、見張りの兵が戯れに董卓の臍に灯心を挿した火は、数日間に渡り燃え続けた。



 各地の諸公は皆、董卓の死を知ると祝杯を上げて歓喜した。

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