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三國のダマスカス  作者: 羽有ル蛇
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群雄割拠 ―冀州―

 袁紹は、韓馥の救援の求めに応じ、直ぐ様冀州に兵を進める。

韓馥等は城門まで臣下を連れて、袁紹を迎えにいくが、袁紹は下馬する事なく城内に入り、韓馥に譲位を求め、韓馥には名ばかりの位を与え、政から遠ざけんとした。


 韓馥はその夜、腹心達を集め己の人を見る目のなさを嘆き、陳留郡太守 張邈に妻子を連れて逃れる事を伝えた。袁紹に仕えるを良しとしない配下の者も、共に従えて張邈の待つ陳留郡に向かう。そして、この夜…袁紹の陣地から一人の男が秘かに抜け出していた。この男、未だに一兵卒なれど…姓は趙、名を雲、字は子竜と言った。


 袁紹に韓馥の行動は伝わっていたが、とるに足らない事と聞き流し、寧ろ厄介払いが出来たと喜んだ様だ。


 その頃、公孫瓚の軍勢は、北平と冀州の境に陣を築き、袁紹からの連絡を待っていた。


「何だと!袁紹が冀州を乗っ取っただと!?

冀州は我、公孫家と割譲の約束を交わしたではないか!


こうなれば力ずくで、冀州を我が物にし…袁紹に思い知らせてくれる!」


 公孫瓚は弟の公孫越を使者に出し、冀州割譲を理由に軍を進めようとするが、公孫越は道中で袁紹の手の者にかかり、討死してしまう。


 公孫瓚はこれを受けて、烈火の如く怒り、袁紹と磐河を挟み対陣する。

橋の上で繰り広げられる戦闘は、凄惨を極める…怒声が響き、人も馬も傷付いては磐河に落ち、河の水を赤く染める。

 乱戦の中、公孫瓚は敵将文醜により追い込まれていた。文醜は槍を奮い、盾を以て公孫瓚の槍をいなす…あわやと言った所で、両者の間に涯角槍が突き刺さる。


「誰だ!邪魔するヤツぁ!」


「私がお相手しよう。」


「誰か知らんが、錆にしてくれる!」


「ご随意に…」


 文醜が馬上から激しく突き、男は柳の枝の如く、しなやかな動きで避ける。

男の持つ涯角槍がまるで生き物の様に、突いては薙ぎと変幻自在の攻撃となり、文醜の槍を巻き上げる。


「えぇい覚えておけっ!」


「た…助かった…嘸や高名な武人なのであろう…礼を申す!


その方…名は?」


「私の名は…姓は趙、名は雲、字は子竜と申します。

袁紹に仕えていたのですが…袁紹に忠臣救民の心なく…身限って飛び出してきたのです。」


「何と!袁紹に仕えていたのか…むぅ…暫しの間で構わん!我軍に加勢して貰えまいか?」


「わかりました…我槍、暫し貴公の為に奮いましょう!」


 公孫瓚は帰陣後、趙雲に騎馬を与え、陣容の立て直し袁紹の攻勢に備える。


 その頃、洛陽から一度平原に戻っていた劉備は、公孫瓚の危機と聞き、加勢すべく軍勢を連れ一路、冀州を目指していた。




 公孫瓚は脚の速い白馬を選りすぐり、白馬陣として先陣に配し、袁紹の先手を取らんとしていた。

 対して袁紹は陣の左右に弓兵を配し、防御の陣とした。


「今日こそ袁紹を討ち、越の仇を討つ!

全軍突撃ぃぃ!」


 磐河に架かる橋に公孫瓚の騎馬が雪崩れ込む、袁紹は橋の中央に騎馬が到るのを待ち、矢を射かける。瞬く間に人馬が矢に倒れ崩れる、そこに秘かに渡河していた兵が襲い掛かる。橋に取り残された騎馬が、混乱の中次々に倒れていく。


「公孫瓚様!後方より袁紹軍が!」


「なっ…しまった!白馬陣が挟撃されてしまう!

一度引き、陣を立て直す…引けぃ!!」


「逃がすなっ!追え!」


「公孫瓚様!私が追撃を抑えます…今のうちに後退して立て直しを!」


「趙雲!?…すまない!」


趙雲の騎馬隊が馬首を返し、袁紹軍に当たる。


「敵は渡河の為に歩兵ばかり!

押し切れ!」


 袁紹軍の先陣の中、趙雲の騎馬隊が斬り込み、兵に槍を奮っていく!袁紹軍は突然の反撃に浮き足立っている…そこに側面から見知らぬ一団が、攻撃を仕掛ける!


「退け退けぃ!」


 先頭の虎髭の男が、手に持つ蛇矛を奮う度に幾人もの兵が、血を吹き出し倒れ、更に後から来た男は、青龍偃月刀を一閃すれば瞬く間に兵が朽ちてゆく。


「張飛様が相手になってやらぁぁっ!

何処からでも来やがれ!」


「関羽雲長此処にあり!!」


「ひぃぃっ!む…無理だぁ~!」


「袁紹様!陣が…我軍が総崩れに…!」


「奇襲とは言え、剛勇で聞こえる関羽と張飛が相手に加勢とあっては…」


「ぬぅ…仕方ない…全軍撤退だ。」


 まるで競う様に兵を倒す二人に、袁紹軍は動揺し、我先にと逃げ出し、遂には撤退させる事となる。



「礼を言うぞ…劉備!

よくぞ加勢に来てくれた!


お主等が来てくれねば、我軍は危ういところだったぞ。」


「間に合って良かった…公孫瓚殿は盧植先生の下で経書・兵学を学んだ兄弟子…声を掛けて下されば、いつでも馳せ参じたものを…」


「はははっ…お主は相変わらず義理堅い男よ!


そうだ!お主にも紹介しよう…此度の戦いで我軍に加勢してくれた趙雲だ!」


「お噂はかねがね伺っております…私、姓は趙、名は雲、字は子竜と申します。

お会い出来て光栄です。」


「これは丁寧に…私が姓は劉、名は備、字は玄徳。これは義弟の関羽と張飛と申す。

宜しく頼む。」


 公孫瓚はこの後、酒席を設け劉備等を盛大に労り、その席で劉備は趙雲と大いに意見を交える。

 劉備は、この年若い美丈夫の物静かで実直な様に好感を持ち、趙雲は劉備の噂に違わぬ高潔さに畏敬を抱く…



 冀州で起こった公孫瓚、袁紹の小競り合いは

時を経ずして長安の董卓の知るところになり、董卓の仲立ちで和睦する。

 袁紹は得たばかりの冀州が安定しておらず、又、公孫瓚は長引く遠征で兵達が継続しての戦闘が困難と判断したからだった。



 翌日、公孫瓚・袁紹は共に陣を引き払い、領地へと軍勢を戻す。

しかし、反董卓連合軍の崩壊と諸公の対立は、一層激しさを増していくばかりであった。


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