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三國のダマスカス  作者: 羽有ル蛇
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反董卓連合の終り

「この者か?」


「はい!この趙岑なる者が申すには、董卓軍は汜水関の守備隊を残し、洛陽に向かい撤退したとの事です。」


「それが謀である可能性は?」


「袁紹殿!ここは追撃に向かうべきかと…」


「うむ…全軍出陣だっ!」


 反董卓連合は途中武牢関に入るももぬけの殻だった為、そまま洛陽に軍を進め、洛陽をその目に捉える…洛陽の都は、遠目にもわかる程、炎上していた。それを目にした誰もが沈黙のまま、佇むしかなかった。


 連合軍は炎上する洛陽に入り、初めて董卓軍が洛陽を放棄し、長安に向かった事を知る。

連合の諸兵士は力を合わせ、燃え上がる家屋に水を掛け、消火にあたり一応の落ち着きをみせる。



 燻町並みの中、盟主 袁紹の元に諸公等は集まり、軍議を行うも、此度の戦いで董卓と自分達の力の差に知り、消極的な発言を繰り返すばかりだった。


「今こそ董卓を討つ絶好の機会でわないか!

何故、追撃に移らん!」


「曹操殿、どの軍も疲弊している…ごり押しは危険だ。」


「馬鹿な!

董卓は都を焼き払い、天子を拐かし、天下は動揺している…正に今董卓を討たねば何時討つと言うのか!」


「黙れ!曹操!たかだか5000の兵を連れた貴様が、一端の口を利くな!」


「袁紹…貴殿の考えはわかった!

我、曹家の私兵5000のみで、董卓の追撃に当たらせてもらう!」


 曹操は袁紹等と決別すると、長安へ至る道をひらすら進む…本来であれば埋伏の謀を疑わなければいけない地形ですら立ち入って行く、兵を休ます事なく進軍した結果、隊列は延び…疲労の色が濃くなっていく。

曹操の馬が沫を吹き、倒れて初めて周囲を冷静に見る事が出来た…がそれは遅すぎた。

 曹操の周囲には、付き従う曹洪、曹仁、曹純、夏侯惇、夏侯淵と数百の兵のみで、後続の兵は見えない。


「なんと愚かな…回りを省みず、気が急くに任せて来てみれば…これでは戦う事も儘ならないではないか!」


「曹操様、ここは暫し兵を休ませ、後続を待つがよろしいかと…」


「夏侯淵…すまない!

交代で周囲を警戒し、皆も休め。」


 そう言うと、曹操は兜を脱ぎ、腰を落ち着ける…見れば見るほど埋伏にぴったりの場所だが…今はそれに至らない董卓軍に礼を言わねばなるまい。


 後続の兵がちらほらと見えるなか、徐々に兵達の緊張感が抜けていく、突然周囲から矢の雨が降り、落石が兵を押し潰してゆく…


「待っていたぞ!逆賊曹操!」


「くっ…徐栄…」


 万が一に備え、董卓が配した徐栄の部隊は、曹操等を取囲み攻め立てる。

徐栄に預けられた兵は10000、対して曹操は手勢数百…圧倒的な戦力差に加え、士気は低く疲労困憊の兵では耐えきれるものではなかった。

瞬く間に渓に追い詰められた曹操等は、一筋の希望に活路を見出だし、自ら飛び込んでいく。





 下流に流され、河から上がった曹操は、その場で腰を落ち着けさせ…河の流れに目を向け呟く。


「全てを失ったか…しかし、生きていれば再起の望みも叶おう。


一から考えて出直すとしよう…」


 すると川沿いを来たのか曹洪等が走り寄る、兵を入れても両の手で、事足りる数にまで減ってしまった。


「従兄上!よくぞご無事で…」


「曹操様!」


「曹洪、曹仁、曹純…お主達も無事だったか!夏侯惇、夏侯淵…よくぞ戻ってくれた…」


「お力添えになれず…申し訳ありません…」


「曹洪…私は二度と袁紹の様な男は頼らん!

自ら道を切り開いてくれよう…


先ずは、手足となり働く者が必要だ!夏侯淵…心当りはないか?」


「陳留郡に名高い者が、野に居ると聞く…当たってみよう。」


「従兄上!青州に知恵者が多く居ると聞き及んでおります…必ずや連れて参りましょう。」


「青州か…かの地には確か『漢七刀』なる鍛冶が、居たな…是非とも力になってもらいたいものだ…」






 曹操が董卓追撃に向かった後、諸公等は示し合わせたかの様に洛陽の都を…宮中を探る。その様は、火事場泥棒の様だ…彼等が兵に命じて探させているのは、十常侍らが弁皇子等を拐かした際に紛失したとされる《伝國の玉璽》…天子の印章。

 国賊董卓打倒と勇ましい大義を掲げておきながら、なんとも浅ましい事か…慶橋は、《玉璽》を錦の袋に終うと、洛陽を後にする。



 探せど見付からない《玉璽》に苛立つ諸公の元に、追撃に向かった曹操が董卓に敗北し、連合を離脱し河内郡に戻った事が伝わる。

 曹操の連合離脱にならい、諸公は洛陽を後にしていった。しかし、諸公の《玉璽》に執着する心は強く、真っ先に江東に軍を退く事になった孫堅に疑惑の目は向けられ、それは江東の地で新たな火種となる。


 洛陽を後にした袁紹軍は、河内郡に陣を築き、兵達の休息に充てていた。

しかし、実態は食料が困窮しており、軍を退く事が叶わない状態だった。

 そこで袁紹は腹心の言葉を受け、冀州刺史の韓馥に食料の無心をする。韓馥はこれを断るではなく、親切にも食料を送ってよこした。


「名家の出である儂が物乞いの如く、食料の施しを受けるとは…」


「袁紹様、冀州を獲られては、如何でしょう?


冀州の地は、肥沃であります…この地を奪い、天下に向けて足掛かりの地盤とするのです。」


「なるほど…韓馥は元を正せば、袁家に仕えていた身…不服などありますまい!」



 袁紹は腹心等と策謀し、二通の書簡をだした。一つは北平太守 公孫瓚に向け、冀州攻略の共闘を申し出るもの、もう一つは冀州刺史 韓馥に向けた食料の礼と公孫瓚が冀州を奪わんとしている事をしたためたもの。


 これを受けた公孫瓚は、直に挙兵し冀州を目指す。公孫瓚出兵の報告は直ぐ様、韓馥の元に届けられ、軍議の上で袁紹に救援を求めた。


 後日、韓馥は、自身の見通しの甘さを後悔する事になる。



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