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三國のダマスカス  作者: 羽有ル蛇
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乱世の始まり~そして群雄割拠へ

 何進将軍の檄により各地の州牧、太守は十常侍を討ち、治世を正し帝を救い出すべく兵を大挙して洛陽の宮中を囲む。


何進は自ら集めた諸公に問う。

「聞け!諸公らに問う!


貴公等が如何に国の行く末を案じ、命をかけて献言しようも、十常侍に尽く握り潰され、帝のお耳には何一つ届かん!


今や治世は乱れ、民の怨嗟の声は高まるばかり、この上は十常侍を根絶やしにするしか道はない!」


 諸公は日頃の十常侍に受けた仕打ちを口にし、十常侍討伐に賛同する。


 最中、宮中に潜ませた密偵が告げる。

「申し上げます。

たった今、帝が崩御なされました!


蹇碩は十常侍と図り、帝の喪を隠し、将軍を宮中に呼び出し誅し、協皇子を擁立する所存であります!」


集まった諸公は口々に言う。


「十常侍め弁皇子を廃し、帝を傀儡とせんとするか!


もう許せん!宮中に兵を進め、蹇碩諸とも十常侍を誅滅するのだ!!!」


 何進は自ら、諸公と5000の手勢を率いて、宮中に入り手当たり次第宦官を殺して行く。

その最中、兵の手から逃れた張譲等、十常侍は何太后に泣き付く。


「何太后様…どうかお助け下さい!

太后様の兄上…何進将軍が宮中に兵を入れ、我等宦官を誅せんとするのです!」


何太后は話を聞き、思案すると頷く。


「わかりました…兄を諫めましょう。

ですが…張譲、わかってますね?」


十常侍は互いに顔を見合わせると頷く。


「もちろんで御座います…帝には、弁皇子を擁立するに異論御座いません。」


 何太后は張譲等の言に頷くと立ち上がり、兄である何進の姿を宮中に求める。


 宮中の所々に宦官が死んでいる、兵達は虱潰しに宦官を捜し出して殺している。

その中、何進は宦官の髪を掴み、正に宦官の首を剣で切り裂いていた。


「兄上!


張譲達、宦官を見逃して下さい…企みを企てた蹇碩は、誅され目的は果たしたでしょ?」


「ならん!

十常侍等を見逃しては、後々の禍根となろう!」


「ですが…兄上、張譲等は我が子、弁を擁立するのに協力すると言いました。


兄上ならいつでも、十常侍等を誅せましょう…今は、利用すれば良いのです。」


 何進は何太后の言葉に納得しない訳にいかない。


「わ…わかった…兵は退こう。


目的である蹇碩共は誅された!!!

諸公のお陰で、宮中は正された…これ以上、宦官を危害を加える必要はない!」


付き従った諸公は、何進に異を唱える。


「将軍、お待ち下さい!

いくら蹇碩共を誅したとて…十常侍を見逃せば意味を成しません!


先々に必ずや害となりますぞ!」


「五月蝿い!

目的は達したのだ!諸君等は宮中より、一刻も早く兵を退け!」






 程無くして、吉日に弁皇子は帝位に擁立御位される。参列した百官は、少帝を祝し万歳を唱える。


 何進、何太后の力が増した宮中では、粛正が吹き荒れる。

協皇子を陳留王に封じ、これに対抗せんとした董太后を河間に幽閉、内々に毒殺し、権力を盤石とした。



 時を経たずして、何進は再び諸公に偽りの詔を発す。一度は見逃された張譲等十常侍は、何進等の権威を失墜させるべく、洛陽の都中に流言を用いたのだ。


 ただ前回と違うのは、辺境で野心を持ち、虎視眈々と時節到来を待つものがいた事だらう。


各州から集まりつつある軍勢は、洛陽に向け怒濤の如く兵を進める。


 そして、この事は張譲等十常侍の耳には入る。張譲等は何太后の名を偽り、宮中に何進を呼び寄せる…何進は、城外に詰める十数万の兵に慢心し、付き従う将兵が止めるのを聞かず、何進は宮中に戻ってしまう。


 程無くして、城壁の上から1つの首が投げ落とされる。その首は、愚かにも止められる事も構わず、宮中に戻った何進の首だった。


 首を投げ落とした、十常侍は諸公に向かい言う。


「貴公等は、逆賊何進に呼応し、畏れ多くも帝に弓を引くか!


今、兵を退くのなら貴公等の罪は問わん!即刻、兵を引け!」


諸公の中から誰かの呟きが聞こえた。


「所詮は肉屋…可太后に便乗した無能な成り上がりか…」


 そして、終には済南の相を経て、典軍校尉となった曹操が声を上げる。


「我等は何進大将軍の意に賛同し、決起したのだ!

何を臆する必要があろう!全軍、逆賊を討て、突撃ぃぃ!」


そんな曹操に袁紹が問う。

「曹操…貴様、十常侍の企てで何進将軍が害されるのをわかっていて行かせたのか?」


「ふん…無能な肉屋には、丁度良い役目であろう?

お陰で我々は、大手を振って宮中に攻め入る大義名分が得られたのだ。




袁紹殿…剣を借りて人を殺す…ご存知ですか?

そう言う兵法もあるのですよ…」


 押し寄せる大軍に洛陽の城門は、脆くも撃ち破られる。宮中に雪崩れ込む兵達は、老若男女問わず手当たり次第に人を斬る。

最早、統制は執れなくなった兵の目を盗み、十常侍は少帝である弁皇子と陳留王協皇子を拐い、一路郊外を目指し、馬車を走らせる。

しかし、馬の操作を誤った張譲が、馬車ごと谷底に落ちてしまう。


 谷落ちる事なく助かった、少帝と協皇子は自力で街道に出て助けを求める。

運よく崔毅なる男に助けられ、翌日、少帝等を捜索する袁紹の部隊に迎えられる。

 そして、袁紹の動きを察知した辺境の西涼太守 董卓が自軍の全てを用い、袁紹の上前を撥ねるべく…袁紹を追う。


 袁紹が少帝に拝礼し、崔毅の居を発とうとするところ、董卓の軍が取囲み、袁紹の部隊を威圧する。


 協皇子は少帝を前にして無礼な董卓を一喝する。

「自は、帝を害しに来たのか?!

それとも、迎えに参ったのか?!


もし迎えだと言うのなら、何故剣を抜いておるか!

帝の御前だ!下馬して控えよ!!!」


「ははぁっ!

失礼致しました。


西涼太守 董卓…帝を御迎えに上がりました!」


「うむ…役目ご苦労…間違いなく帝を御送り致せ。」


 董卓は、あまりに毅然とした陳留王に圧倒され、かしずくが頭の中では陳留王を利用する事を思案していた。


 無事に袁紹、董卓は少帝と陳留王を洛陽まで送り届た。

 自身の兄、何進の死に動揺すらしなかった何太后も、少帝の無事に涙したのだった。


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