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三國のダマスカス  作者: 羽有ル蛇
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太平道の乱 4

 慶橋は、ため息をつくとおもむろに話を変える。


「時に劉備殿…兵は足りておりますかな!?

よろしければ私が兵を融通致しますが…」


劉備の顔が曇る。


「慶殿…貴殿の目的はいったいなんだ?!


私は今でこそ義勇軍を率いてはいるが、元をただせば只の草鞋売りですぞ!

いったい何の魂胆で…」


慶橋はかっかっと笑い、答える。


「私は見返りなど求めておりません。

只…安寧な時代の為に協力を惜しまないだけです…」


慶橋の顔には一欠片の迷いはない。


劉備はため息をつくと


「貴殿に思惑がないのはわかりました。

ですが…なぜ私なのです!」


慶橋は無邪気に笑う。


「わかりませんか?

全て貴方様の人柄ですよ。


関羽殿や張飛殿と義兄弟の契りも…楼桑村の者達が貴方と共に義勇軍を起こしたのも…全て劉備殿…貴方の仁徳故です。」



慶橋は闇に向かって声を掛ける。


「周倉!大史慈!張任!各々、準備は良いか!」


闇の中から返事が聞こえる

「はい!

既に各部隊1000名、準備は整っており直ぐにでも行動に移せます。」






慶橋は静かに頷いた。




 日付は変わり、劉備は河南に向かい兵を進めていた。

ふと慶橋から預かった兵に視線を移す。


 皆、黒塗りの揃いの冑鎧に身を包み、面構えも精悍でかなりの練度の兵達だ。


 劉備の頭には拭いきれない不安があった。


「なぜ一介の人物がこれだけの私兵を有しているのか…結局、私は民の為と言いながら、訳のわからない人間に良いように使われているだけなのでは…



今は考えるのはよそう…今は只、目の前の黄魔を叩く事のみ。」



 暫くすると先行していた、物見からの報告が劉備に届く。

前方で官軍が黄巾に追撃を受けているらしい。


 一報を受けた劉備は直ぐ様、手勢を率いて黄魔を討つべく馬を走らせる。



 見れば十数騎の官軍が終われている。

劉備は隊に突撃を命じ、あっけない程に黄巾は粉砕されていく。

官軍は一礼をすると自陣の本営まで劉備を通す。


「董将軍!

こちらが我が軍を救ってくれた御仁です。」


 董将軍と呼ばれる男は、拝礼する事なく上から下へ劉備を品定をするかの様に見ている。


「救援感謝する。儂はこの隊を預かっている姓は董、名は卓…貴殿の名と階級は?」


劉備は拝礼する。


「救援に間に合い幸いでした。

私は姓は劉、名は備…将軍、我が軍は無位無冠の義勇軍にございます。」


董卓は目を見開き、怒鳴り散らす。


「なに!義勇軍だと!!

ただの農民ごときに儂の貴重な時間を…時間の無駄ではないか!」


 董卓はそう言うと、劉備を取り次いだ兵に拳を幾度も振り下ろし、自身の天幕に引っ込んでしまった。



 同行した張飛が拳を握り跳び掛ろうとするのを関羽は羽交い締めにして引き止める。


「張飛…今は堪えるよ…官軍に手を上げれば、我等も逆賊!

兄者に迷惑が掛かるのだぞ!」


 関羽に羽交い締めにされた、張飛の体から力が抜けていく。



 劉備は董卓からの休息の申し出を断り、足早に陣を抜け河南に向かう。



 劉備は腐りきった官軍の様を痛感し、今はただ込み上げる怒りを黄魔に向ける。

董卓陣営を発って、程無くして河南は朱儁陣営に入る。


 流石に敵陣に近い為か、殺伐とした雰囲気がそこかしこに漂っている。


 劉備は朱儁の陣幕に通されると拝礼をし、名乗りを上げる。


「私が義勇軍を率いております…姓は劉、名は備と申します。」


朱儁はうむと頷くと


「行軍ご苦労であった…一先ずは休まれるがよい。

劉備殿はこちらへ参られよ…」


そう言うと劉備のみを奥の軍義の座に通す。


朱儁はおもむろに口を開く。


「劉備殿…行軍で疲れている所、早速で申し訳ないのだが…明朝からでも陣列に加わってもらいたい。」


劉備は敷陣図に目を落とす。


「敵は手強いのですか?」


朱儁は黙して頷き


「うむ…先日、地公将軍張宝が敵陣営に援軍で加わってからと言うものの…士気は高く、兵力は強大。

挙げ句に敵陣があるのは天然の要崖ときている…正直、攻めあぐねているだ…」


劉備は青州で慶なる人物から言われた事を思い出す。


「張宝と言うと…あの首領張角の弟分の?!」


朱儁は頷き


「その地公将軍張宝だよ…くそっ!なぜこんな僻地に…」


劉備は何やら考えると


「朱将軍…我が義勇軍に当たらせてもらえませんか?」


朱儁の顔が明るくなった


「本当にやってくれるのか?」


劉備は頷く


「私に考えがあります。

成功するかわかりませんが…悪戯に正面から攻めるよりは、可能性はあるでしょう。」




 劉備は朱儁の陣幕を足早に抜けると、自らの陣幕に関羽、張飛、周倉、張任、大史慈を呼び集める。

劉備は皆が揃うのを待って口を開く。


「明朝、我が軍は敵陣を攻める…目指すは地公将軍張宝の首唯1つ!

敵陣は天然の要崖に隠り、守備に撤している…道はこの谷を抜ける一本道のみ…火計を用いたい何か策はないか?」


開口一発、張飛が口を開く


「まどろっこしい真似は止めて、正面からぶっ潰してやろうぜ!

この張飛様が一人残らず、この蛇矛の錆にしてやる!」


関羽が張飛をなだめる様に口を開く


「そんな事をすれば、我が軍にも多大な被害が出よう…この崖をなんとか行ければ良いが…」


張任が口を開いた


「それならば我が仙姑頂の兵が崖を攻略しましょう!

幸いな事に我が部隊は、山岳にて練度を高めた兵達を連れてきております。

苦もなく作戦を実行できましょう。」


劉備は喜び勇んだ


「では張任、大史慈は兵1000名をもって左右の崖を攻略してほしい。

我等は手勢を持って、敵勢を正面の谷に引き付け、これを攻略しよう!」


周倉は思い出した様に口を開く


「そう言えばこの辺りは、昼夜の寒暖の差が激しく、朝方は霧がでて視界がかなり悪いとか…」


 周倉の話しを聞いた関羽は、髭を扱き何やら思案すると劉備に耳打ちする。


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