太平道の乱
慶橋は配下に渡した書簡にも敢えて外した名を聞く事になろうとは…慶橋は馬から降り、静かな口調で言う。
「周倉殿…頭を上げて下さい。私の元に来たいとは一体…」
周倉は口を開いた。
「私は張兄弟の理想に賛同し鉅鹿に馳せ参じました…しかし…同士達には志はない。…あれでは…山賊と変わらん!」
周倉はそう言うと言葉に詰まる。
慶橋は周倉の肩に手を添え、言い聞かせる様に呟く。
「近い将来、貴殿にとって神に等しい武人に出会うでしょう…それまでは私の元に好きなだけ居なさい。」
慶橋は周倉達と共に仙姑頂に入ると配下に彼等の住居を与え、更にすでに集まっていた他の人物とも顔を合わせた。
冀州鉅鹿郡より権謀術策に長じ、博学多才の人物として名を知られる田豊。
冀州牧韓馥に騎都尉として仕えるも見限り仙姑頂に来てくれた沮授。
荊州南陽郡より円月刀と弓の名手、黄忠。
益州蜀郡からは貧困の中、文武に優れた張任。
この分なら暫くすれば、書簡に記した人物達はそれなりに集まるだろう。
慶橋は早速、大史慈の兵5000、黄忠に兵5000、張任に兵2500、周倉に兵2500仙姑頂にある兵を全ての兵を集め慣熟練兵を行う様に命じる。
続けて慶橋は田豊、沮授を港に案内すると船団を使い、沖に見える小島を舟が留置き、兵が相当数居住出来る様に拡張整備を命じた。
荀彧には功城弩の開発に当たらせる。自身は、鍛冶場に向かい連弩試作に性を出すのだった。
鍛冶場から纏まった数の鍛造の剣と試作型の連弩が届いた。連弩は諸葛式をボーガン寄りにアレンジした物で、若干の軽量化と携行性を高めてある。
試射では、従来の弩と遜色なく…飛距離も250mで的の中心に寄せる事が出来た。
慶橋は鍛冶場に連弩の量産を指示し、なかなか成果の上がらない造船区画に足を運ぶ。
「どうだ?頼んでいる舟の出来は?」
「これはこれは…慶橋様、ご指示のあった舟ですが…船首部分の湾曲が難しく、まだ思う様な形になりませぬ。
楼船の方は、問題無く…新しく付けた船首の開口分と船首及び、船尾に付けた功城弩の台座は、全方位に向けての射撃が可能になっております。」
「あいわかった…件の舟に関しては、引き続き研鑽してくれればよい。」
それから時は流れ、甲子の年甲子の月…八州に股がり各地で太平道が決起する。
各地での官軍との小競り合いが慶橋の耳にも入った…張兄弟は約束通り、仙姑頂周辺には手を出さず近隣の青州城を攻めている。
慶橋は予てより手配してあった連絡を今か今かと待ち続けた…慶橋の就くと決めた劉備の挙兵を…
幾度も出兵を求める官軍の使者が来ても相手にせず…
いく月が過ぎて慶橋の元に一報が入る。
《劉玄徳起つ!》
慶橋は報告を聞くと、大史慈、周倉、張任等を呼び寄せると、三人には鉄で作られた鍛造剣、矛、帷子を渡し書簡を持たせ劉玄徳義勇軍に合流する様に命じる。




