表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三國のダマスカス  作者: 羽有ル蛇
16/32

漢七刀の刃

 翌日、慶橋の天幕前には武官である大史慈を筆頭に崔琰、荀彧、鄭玄、門下の二人も兵と共に整列している。

慶橋は兵達を見渡し、告げる。


「今日まで長く私を支えてくれた…大史慈、崔琰の両名を裨将軍に任じる。

両名は職務に一層励む様に!

続いて新たに陣営に加わった荀彧を右軍師、鄭玄を左軍師に任じる。


領地の一層の発展の為に…皆一丸となり精進する様に!


以上…解散!」


 兵達が捌けるのを見送った崔琰は、慶橋の天幕に入り慶橋に恭しく拝礼する。


「慶橋様…此度は裨将軍に任じ頂き誠に有難う御座います…然れど我が身は余りに不才…お考え直して頂きたいのです…」


「崔琰…私は今まで支えてくれたうぬに報いたいのだ…受けてくれぬか?


身に余ると言うなら…剣技を研けば良いのだ。」


「畏れながら…慶橋様、私には大史慈殿の様な力はありません…故に許されるなら鄭玄殿の元で勉学に励みたいのです。


昨晩、荀彧殿、鄭玄殿に門下の二人と領地の件で話すに、私は我が身の無知を痛感したのです…幸い鄭玄殿は慶橋様に仕えながらも、門下として指導頂けるとの事でしたので…」


「うむ…鄭玄、崔琰の担当してた治水、街の整備、開墾はどう致す?」


「我君…畏れながらも治水は右軍師 荀彧殿に、街の整備は私が監督すれば問題無いかと…開墾のみ崔琰殿に任せるがよろしいかと…


以前の様に崔琰殿一人に任せる訳ではありませんから…各分野で今まで以上の成果が期待出来るかと…」


「鄭玄の言…わかった。

崔琰…一度任じた役をおいそれと取り上げる訳には参らん…暫し鄭玄の元で学びながら、裨将軍として開墾のみに尽力せよ。


何れ…崔琰の業績に見合う役を、改めて任じるとしよう。」


「慶橋様…誠に…誠に有難う御座います…」



 慶橋が仙姑頂に来て一年の歳月が過ぎ、秋が終わる頃、各々に任せた分野は一応の成果を出し、街として次の開発段階となる。


「この一年で各々が十二分に成果を出すに至った…皆の者、ご苦労だった。


ついては街の…商業の発展を目指す。

開発する分野は鍛冶、造船、林業…そして、領内に数多ある港の整備を行う。」


「畏れながら…慶橋様、三つの商業は職人の育成で御座いますか?


畏れながらも人の育成は一朝一夕では…」


「荀彧…話には続きがある。

川沿いに鍛冶区画、湾に面して造船区画、仙姑頂の麓に林業の集落を築き、技術を研磨発展を促すのだ。


湾に関しては防波を造り、湾内の漁師の安全を図るのだ。」


「慶橋様…畏れながら…防波とは何でしょう?

初めて聞く言葉ですが…」


「ふむ…言葉より書いて見せるか…」


 慶橋は徐に立ち上がると、剣を抜き大地に線を刻み説明を始める。


「先ずこれが港だ…で波は外海よりこの様に来る。

そこで…この様に石や土を海中に盛り、波を遮るのだ。これにより湾内の波は静かになり、舟の安全が図れるのだ。」


「成る程…この様な物があるのですな…わかりました。領内の湾には全て防波を設置し、整備を急がせましょう!」


「うむ…では湾の整備は荀彧に一任する。続いて鍛冶はどうだ?鄭玄。」


「はい…門外漢な為、あまり詳しくは存じませんが、鍛冶は鋳造と言う方法を使っていると記憶しております。」


「鋳造か…型は砂や粘土か?

であれば…鍛造を行える者を一定数育てるか、鋳造は鋳造で造る物があるしな…出来上がる物が違えば鋳造と鍛造も仲違いしまい。」


「畏れながら…鍛造とは?」


「鋳造に関してはわかるな?

鍛造は…読んで字の如し、熱した鉱物を叩いて鍛えるのだ。

これを繰返す事により、鉱物から余分な物をなくし…鉱物本来の強靭さと柔軟さを持たせるのだ。」


「その様な方法があるとは…世間は広い…」


 慶橋は懐に忍ばせてある刃渡り15cm程のナイフを取り出すと、皆に見える様に鞘から抜き、左手に持つ自らの剣に一閃する。


キンと金属音がすると…剣の中程から剣が切り落とされる…


「どうだ?

これが鍛造で造られた小刀の切れ味だ!

無論、剣を切ったとて歯こぼれなどない…素晴らしかろう?」


 大史慈を始め、皆が小刀と断ち切られた剣を見比べている…よく見れば大史慈の手はワナワナと奮えている。


「慶橋様…慶橋様は、帝より《漢七刀》の称号を頂いたと聞き及んでおりますが、まさか…?!」


「うむ…帝には私が以前鍛えた小刀を数本をお譲りした…そこで、これと同じ様な事を見せてな…あの時は、兵の鎧兜も纏めて切ったか?


それで鍛冶としての《漢七刀》の名を賜ったと言う訳だ。」


「大変不躾なお願いなのですが…某に剣を鍛えて頂けないでしょうか…その…慶橋様の打たれた刀身に年甲斐もなく、心打たれました。」


「うむ…褒美には丁度良いか…大史慈は剣で良いのか?

では…打ち上がった暁には褒美と致そう…それまで、職務に励め!」


「ははっ!

この大史慈…命に代えましても果たして見せまする!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ