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三國のダマスカス  作者: 羽有ル蛇
15/32

仙姑頂に集う

 慶橋は宿営地に入ると大史慈を呼び崔琰を交え、仙姑頂山頂で話した事を伝える。


「わかりました…某は徴兵に伴った練兵と周辺の警護ですな。」


「うむ…それと兵を領地内の村々に出し、知らせを頼む。


内容は…私がこの一帯を治める領主になった事の知らせ。


才がある者であれば登用する旨と、徴兵は…七千募るとするか…それと、徴兵、治水、周辺の区画整備、仙姑頂の整備に従事する者は禄金一、従事している間は無税とする。


崔琰…俸禄の金子は適正か?

問題無ければ…告知の準備を頼む。」


「はい…特に問題は無いかと…ですが、想定よりも民が集まりそうですな…いやはや俸禄に加え、無税とは…慶橋様は誠に素晴らしい治政者で在らせられる。」



 瞬く間に村々に告知内容は知れ渡り、民は新たな治政者である慶橋を歓迎する雰囲気となった。

 才ある者を登用するとした知らせは、驚く事に近隣の多州まで広がり、慶橋の門を叩くのだった。


 徐々に仙姑頂の麓は削られ、従事する者は泥と埃にまみれて石を切り出している。

そんな、人足に紛れ慶橋は汗を拭っていた。


「慶橋様!この辺りも形になってきましたなぁ~」


「うむ…これだけの高さと傾斜であれば、守るに容易かろう。

後は、切り出した石を用い…防壁を造るとしよう。」


 慶橋は、周辺に注意を向ける警護の兵に声を掛ける。


「大史慈が熱心にやっている練兵はどうだ?

もう馴れたか?」


「はい…私は農民でしたので…まだ馴れなくて色々大変ですよ。

大史慈様には、怒鳴られてばかりですよ。

はっはっはっ…」


 兵と談笑する慶橋の元に、馬に乗った兵が現れる。彼は先日、十人長に抜擢され慶橋も一緒に祝ってやったのが記憶に新しい。


「慶橋様!!

登用希望の者が訪ねて来ております。」


「んっ?崔琰が居るではないか?

崔琰では…判断出来ぬ様な輩か?」


「はい…それが崔琰様では、相手に対して礼を失するとの事で慶橋様をお呼びする様にとの事です。」


「なるほど…高名な方か…わかった。

急ぎ身形を整えて、向かうとしよう。」


 慶橋は宿営地に着くなり、自身が騎乗した馬を乗り捨て、天幕に足早に入る。天幕の内には崔琰とが控えていたが、自らの席に着くと件の人物を通す様促した。


 程無くして兵に案内される形で、件の人物達が慶橋の前で拝礼する、慶橋は人物としか聞いてなかった事を反省しながら口を開いた。


「待たせて済まなかったな…私が陛下よりこの地を譲り受けた…慶橋と言う。

見ての通り…まだまだ領地共々、治政者としても半人前故…そう畏まるな。」


「御目にかかれて…大変恐縮で御座います。私は青州北海郡高密県より参りました…姓は鄭、名は玄、字は康成…これに控えるは、手前の門下で郗慮、王基と申します。

郗慮、王基…慶橋に挨拶を…」


慶橋は鄭玄の言葉を手で制す。

「よい…先程も申した通り、半人前の領主だ…必要異常に畏まるな。

して鄭玄殿…そなたの知恵者としての名高さは私とて存じておる故…私に仕えてくれるのか?」


「はい…この地を見、慶橋様こそ仁君であると確証致しました…この上は老い先短い老骨の身では御座いますが、慶橋様に尽くしたく存じます。」


「あい…わかった。後程、門下の者も併せ今後の話をしよう。


して…その方は?」


「はっ!豫州潁川郡潁陰県より参じました姓は荀、名は彧、字は文若と申します。


不才の身なれど…仁君と名高い慶橋様に加えて頂きたく…」


「うむ…まさか鄭玄殿だけでなく、王佐の才と名高い貴殿までもが、私の元に来てくれるとは…誠に嬉しく思う。


早速ではあるが…崔琰、荀彧殿と鄭玄殿に領地の状況を説明してくれ。」


「畏まりました…では、荀彧殿と鄭玄殿はこちらに…」



 崔琰は荀彧、鄭玄に門下の二人を連れ立って、領地の模型を模した部屋に入っていき…この日、部屋の灯りは夜半まで消える事はなかった。

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