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三國のダマスカス  作者: 羽有ル蛇
13/32

張角の庵

 張角の庵は出会った場所から一時間程歩いた所にあった。


 家の中に通されると角の弟だと言う二人が、屈託のない笑顔で橋本を迎えてくれた。

 弟達は宝と梁、橋本の身なりを見ても何も訪ねはしない…ただ…良く来たと歓迎するだけだ。


 橋本は知っていた…この人の良い兄弟が数年後には「黄巾の乱」を引き起こすのだ…



 梁は橋本の服に目をやると、家の奥でなにやら物を漁っている。


「その格好じゃ…何かと目立つじゃろ…」


と言って着替えを放って投げた。


 橋本は着替えを受取り、一礼するとそそくさと着替え始めた…脱いだ迷彩は雑納に無理矢理押し込んだ。身に付けていたナイフの類いは、用心の為一本のみ懐に入れ、残りは背納にしまい込む。


 小銃は弾倉を抜き、もしもに備える…銃身は一応は布でグルグル巻きにして何だか解らない様にした。

 誰かに見られても良い様に、部屋隅あった背負いの竹籠に雑納や背納と一緒に片付け、念の為布を掛けておく。



 明日はこの辺りが初めての橋本を梁と宝が案内してくれると言う。



橋本は二人の好意甘える事にした…


 歴史がどの様にして進むのかは解らないが、今は暫しこの気持ちの良い男達に流されてみよう…




 橋本は久しぶりの床に体を横たえると、意識が微睡む中少し考えていた。言葉が何故、通じるのかさっぱりわからない…この頃の中国は、春秋の名残で言葉の統一は完全ではなかったはずなんだが…橋本は心地好い眠気にあっさりと思考を手放し、泥の様な眠りに堕ちていく…



 翌朝、朝靄で霞む中、橋本はあまりの寒さに目覚めた。


鳥がさえずっている…清々しい朝だ。


 布くるまれ…籠にしまわれた小銃に目を移す、先日の戦闘が嘘の様に感じるが…しかし、ここに居る事もあの戦闘も全て、現実なのだと感じる。


 暫くすると宝が橋本を起こしに来た…どうやら朝飯の用意が出来た様だ。


 卓には兄弟が揃い、橋本を今か今かと待っていた。

橋本は勧められるままに汁物を一口すする…「旨い!」


 梁が作ったのだろうか…嬉しそうに橋本の食べっぷりを見ている。

その顔は無邪気な子供の様だ。



 程無くすると庵を人が訪ねてきた。

角は橋本に梁達と町に行く様に言うと奥に篭ってしまった。


 外に停まっている馬を見る限り、かなりの身分の人間…梁達はふてくされる様に訪ねてきた人物が宦官である事を漏らした。


 聞けば宦官だけでなく、各地の名士や武官も教えを受けに来るのだとか…



 なるほど…太平道の乱は八つの州で一斉蜂起したが、当時の交通、通信では考えられない【同時多発】的行動だったが…外部のパトロンや官軍に内通者がいたか…。


 事実、角の持つ儒教的要素が要因が鍵だった…当時の中国では儒教の教えが広がり、宦官や皇帝の親族も例外ではなく、民にとって儒教=宗教的概念はある意味国家よりも重要だった。



 橋本は周囲の地形を頭に入れる様に歩き、そして見るもの全てを梁達に訪ね、書留た。



 日が傾き、夜が訪れる頃、梁達は庵に着いた。

角は客が居なくなった後も部屋から出てはこない。



 橋本は考えていた…この時代に来た意味を…何をなし、何を遂げられるのかを。


 翌朝、橋本は角に地方の有士を紹介してもらえる様に嘆願、角は渋々ながらもこれを了承した。

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