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三國のダマスカス  作者: 羽有ル蛇
10/32

序章 ―北軍の進軍 10―

 新潟市街にほど近い裏路地に橋本と後藤の姿はあった。


 橋本は周りの様子を伺い、後藤に目配せしている…後藤は銃剣を抜き、マンホールの蓋を銃剣でこじ明けると二人の姿はドロ臭い闇の中に消えた…



 鼻をつく凄まじいヘドロ臭に顔が歪む…臭いで目がしみて満足に目を明けられない…


 橋本達は手早くガスマスクを装着すると深呼吸してマグライトを着けた。


マスク越しにでもヘドロ臭がする気がする…


 橋本は床に下水路図を展げ、後藤に進行方向を示す…後藤は黙って頷くと下水路を北上した。


 時たま爆発音とズーンと言う振動でコンクリの塊や砂がパラパラと落ちてくる…

かなりの時間がたっただろう…地上では戦闘が続いている様だ…


 後藤はマンホールの梯を登り、蓋の隙間から外の様子を伺う。


 駅前の大通りだろうか…いつもなら人混みで賑わっているであろうと容易に想像出来る。


しかし、今は北の勢力下となり活気はない…


再びマンホールを閉じ、目的地に向かう…。





 もう何度目だろうか…いい加減確認作業がしんどく感じた頃、マンホールの隙間から北の安っぽい迷彩を着込んだ兵士達が見えた…ビンゴ!


後藤は下水路に降りると、橋本にハンドサインで目当てのポイントである事を伝え辺りが寝静まるのを待った…




 銃声が聞こえなくなってからかれこれ数時間…再びマンホールの蓋が開き、隙間から月の明かりが下水の中に射し込む…


 北の兵士の動きの隙を見付け、近くのビルの陰に滑り込む…どうやら見付かってない様だ…


 ガスマスクを外し、濃いめのドウランを顔に塗りたくる…


 敵の宿営地に潜入し、車両の陰から一際警備の厳しい倉庫に目星を付ける、あれが目標だろうか…


 警備は二人…共にAKで武装している。

橋本は近くに落ちていたボロキレを銃口に巻き付けると、後藤にも同様にするよう促した…

距離にして150m…外す事は許されない…照門から望む兵は呑気にも欠伸をしている…


 程無くしてブシュと言う発射音が4度聞え、兵士はその場に崩れ落ちた…

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