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三國のダマスカス  作者: 羽有ル蛇
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序章 ―北軍の進軍―

 20××年、加速的な温暖化と深刻化する食糧事情の中、かれこれ何度目だろうかと言う6カ国協議で北に対しての経済制裁と食糧供給停止が決議された。


 いつもの如く、北の代表は足早に退室していく…最近では見慣れた風景…


 翌朝、世界に対しての将軍がバングル独特のけたたましい声がテレビから鳴り響き、一方的な宣戦布告はなされた。


 誰もが事の信憑性を疑い、まるで下らない冗談を嘲るかの様に市街のモニターの前を通り過ぎて行く…





 街が目覚める頃、市ヶ谷の防衛庁では肩に金バッチを付けた情報官が、事の信憑性を裏付けする情報を掻き集めるべく奔走している。


 各師団は事の信憑性に疑問を感じながらも、防衛庁から発令された警戒体制に対応するので一杯一杯の様だ。


 朝のニュースを他人事の様に眺めていた橋本 慶一の携帯から呼び出し音の《ワルキューレの騎行》が鳴り響く…着信画面も一瞥する事なく、携帯を操作して耳に当てる。


「はい…橋本です」


 留守役の後藤三曹が慌てふためいた声で巻くし立ててくる…


「橋本二曹!ニュースを見られましたか?

内閣から各師団に警戒体制が発令しました!

勤務明けのところ、申し訳ありませんが急ぎ帰隊して下さい!」


 なにが帰隊だ…こっちは警衛明けの休みだぞ!

苛立ちを覚えながらも橋本は、とりあえずの指示だけは出しとく。


「ああ…わかったから落ち着け…昼には隊に戻る。情報を集めておく様に…それから陸士達には私物の整理、後家族宛てに遺書を書かせとけ。」


 携帯の向こう側の後藤は命じられた事で少しは落ち着いたのか安堵したのか元気な声で復唱する。


「了解です!

後藤三曹、これより情報収集及び、営内班にて指示を実施します。」


 橋本は先程煎れてすでに温もりはないコーヒーを恨めしそうな顔で見た後、空き腹に冷めきったコーヒーを一気に流し込み、ポストに入った新聞を引き抜いて足早に家を後にした…




 もう二度と帰る事のない家になるとは露程も考えもしないで…




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