7話「神魔対戦」
「そういえば聡、あの子はどうしたの?」
「どいつの話だクシナダ。俺はお前に会わせた奴なんぞいすぎてどいつのことを言っているのか分からん。特徴をいえ特徴を。」
「ほら、赤髪で軍服みたいな服装着ていた子よ!」
「あぁ・・・正斗のことか。もういねぇよ。」
「どういうことです聡さん?」
「ヴァルキリーがいるところでは話したくなかったんだがなぁ・・・正確には行方不明と言うのが正しい。」
「当時の状況を説明願えるかしら?行方不明と言われてはいそうですかとはならないわ。」
「俺はしたくねぇ。あの日は本当に最悪なときだったんだから・・・」
かたくなに拒否をする聡はただひたすら街に向けて颯爽と駆け抜けた。
聡は過去を話したがらない。特に自分にとって最悪の出来事である時は尚更口を紡ぐのだ。その性格になってしまった理由はいくつかあるが、一番はやはり神魔対戦であろう。クシナダは、その神魔対戦の出来事を走りながら思い出していた。
今から3世紀程前、つまりは18世紀のことである。人類が知らない場所<レヴィンファリアント>と呼ばれる場所で、神魔対戦は起きた。事の発端はハーデスの裏切りによるもの・・・と称されてはいるが詳細は未だ謎に包まれている。理由はごく単純で、神魔対戦以降21世紀である現在までににハーデスの転生体は確認されておらず、この対戦に参加したのはゼウス、ヘラ、ルシファー、アマテラス、信長、ロキであったが、ゼウス、ヘラ、ルシファー、アマテラスはあまりこのことを口には出さず、聞かれても黙秘を貫いているからであった。信長とロキでさえ、発端については何も知らないのだという。前に一度だけアマテラスに聞いてみたが、原因は<レヴィンファリアント>にあったとされる聖銃『フォトンクス』を巡ってトラブルがあり、それを鎮魂させるためだったとのこと。片方は聖銃保存派、もう一方は聖銃軍武派だった。
聖銃軍武派は、『フォトンクス』を使って異世界征服および奴隷化を企んでいたらしい。元々こういう関係の仕事に慣れていた七人はすぐさま議論し、軍武派の鎮魂および殲滅を決定。すぐに行動を開始した。
聡が能力(あらゆる理を操る程度の能力)を発動し、レヴィンファリアントに行くゲートを形成。七人はそれぞれ二刀流直剣、太刀、レイピア、二刀流短刀、槍、魔杖、狙撃銃で出撃し、結果的にハーデスを含め軍武派を撃滅、六人は狙撃銃と『フォトンクス』を回収して帰還した。
聞き出せたのはこれだけであり、ヴァルキリーもクシナダも知らないことばかりだ。
本当の平和とは何なのか・・・聡は何を急いでいるのか、作戦に参加している誰一人として分からなかった。