5話「作戦会議と大剣黒滅刀」
「さて、今すぐにでも出発しようと思うが…全員どう考えている?」
「私は向かうべきだと思うわ。どうせあなたの事だから、ある程度絞り込めているでしょうし。何より今は龍我君達を含めて23人…負けるなど早々ないわ。それと…」
龍我達が考えをまとめているあいだに、聡を含めた神々の転生体達は次々と作戦会議を進めていく。編成人数、構成、戦い方のパターン、敵の動きに対する対処法、万が一の対処法等だ。これまで数多くの作戦や戦闘を駆使し、死闘を乗り越えて来た龍我だったが、神々の作戦はそれを上回る速度で考えられていく。
勿論、鞠菜や瑠菜は聴いているが、龍我達が困らない様気を配っていた。
「何か分からないところでもあった、龍我?」
「分からないよりも作戦が凄すぎる。俺達要らないんじゃないか?」
「そんな事ないわ。打消系の能力は私だけだし、回避系の能力者はいない。龍我がいるからここまでの作戦が成り立っているのよ?それに再生系の能力者が複数いることに悪い事は無いし、祈願はより効率良く敵を無力化出来るようになるわ。聡は良い人材を集め過ぎなのよ。」
言われてみると確かにそうだ。聡の関わる依頼は誰の犠牲もなく、相手が全滅する事もなく解決する。復讐を仕掛けてくるものも少なくはないが、何事も無かったかのようにあしらっている。
「今までのことを考えると…僕達よくここまで生き延びてこれたよね。何事も最前線に駆り出される僕達は、誰かがいなくなっていてもおかしくはなかった筈の依頼が多かったしね。」
そんなこんなで話が進んで来た頃、聡に悟、スカーレット、ミノルンの3人が話しかけた。
「兄さん、ちょっといいかな?」
「なんだ、3人揃って?」
「俺達も行かせてほしい。」
「…だろうと思ったよ。でも駄目だ。調整が終わったばかりで、まだ感覚に慣れていないお前達3人には危険すぎる。」
「それは承知の上よ?勿論、不味いと思ったら直ぐにここに戻るわ。」
「…お前達にとっては未知の世界だ。それでもか?」
「あら、私達が誰の血を引いていると思ってるの?」
「実践が1番感覚を掴みやすい。俺はそう思うが?」
「お願いだよ兄さん!少しでも皆の負担を減らしたいんだ!」
3人が深々と頭を下げる。これまでにも複数人が同時に頭を下げるシーンは何度かあった。だが、3人程居座ってお願いをする事はまずなかった。それ程までに、聡の血を引いているということだった。
「全く、誰の血を引いたことだか。」
「グウの音も出ねぇ。…分かったよ、人数が増える事に越したことはないしな。但し、お前達が危険になっても助けられない可能性があるからな?」
「分かってるわよ。よし、決まった以上さっさと準備するわよー!」
「おっけー!んじゃまた後でな兄貴。」
「急にごめんね兄さん。」
「悟は行かなくていいのか?」
「うん。僕はもう準備出来てるから。」
悟の装備は大剣だ。装飾は何一つ無く、刀身は青黒く光っている。聡が丁寧に研いていた証拠だった。
「黒滅刀…だと!?」
「え?あぁ、そうだぜ。探すのに苦労したんだよなこれ。偽物が沢山あるから、本物を探すのに1週間かかったんだぜ?」
「偽物がある事すら初耳なんだが!?」
衝撃的だった。偽物はその剣の性質や能力には劣るものの、形は同じで装飾なども似せることから、それを本物と勘違いし使用している者もいるという。
「で、本物は何処にあったんだ?」
「黒滅王が刺した台座から1mmたりとも動いてなかったよ。推測からするに、台座に刺さっているものを見て偽物を作ったんだろう。」
龍我が唖然とするその時も、着々と準備が進んでいく。作戦開始は目前までに迫っていた。