序話 生き残ったふたり
明日香村跡から再び歩き始めた4人はとある家に辿り着く。そこは聡ともう一人の暮らす場所だった。
あの場所 (マルクスの墓)を離れてから数時間が経過した。辺りは既に赤く染まり、夕方だということを物語る時間である。そんな中、4人 (聡、龍我、紅茶、油圧式)はとある家の前にたっていた。
外観は洋式のような家だ。レンガ作りの外観だが、実はこのカータフィルという世界にはレンガというものは無い。全て石か木材で建築されており、目の前の家は石作りの様だ。
「鞠菜、ただいま。」
「おかえりー。それと龍我さん、紅茶さん、油圧式さん、いらっしゃい。」
出迎えてくれたのは、さっきまで料理をしていたのであろう、エプロンを着けた鞠菜だ。
そんな中、龍我はある疑問に至った。今自分の目の前にいる鞠菜と呼ばれた女性は、両眼から光のような線が途切れることなく出続けているのだ。
「あの、鞠菜さん。両眼から出ているそれは・・・?」
「あぁ、これ?『神の眼』発動時に出てるものよ。あと、これからは敬語はなくていいわよ?」
「おい聡、これはどういう事だ?『神の眼』は常時発動は不可能なはずだ。」
「・・・俺達に与えられた罪だよ。一つの街、明日香村を守れなかった契約放棄の罪。」
「でも、こうなったことには私たちに後悔はないの。この生命はマルクスに救われた。だったらそのマルクスの分まで生きるのがすじってもんでしょ?」
「俺は理を操って見えないようにしてるだけだよ。ほら。」
聡がそう呟くと、両眼から、鞠菜と同様の光が見えるようになる。だが、聡の場合は右眼と左眼で違うようだ。右眼は光なのに対して、左眼は稲妻のようなものを放っているのだ。話を聞くと、5年前に聡と龍我に起きた龍との一体化及び魂を刻印に封印したことによって『神龍の眼』が形態変化し、今のような形になったという。
「おかげで俺達は街では生活出来なくなったから、こうして離れた場所で暮らしてるのさ。ここは土地がいいから、野菜は作り放題、肉は取り放題、いわばここは宝の山なわけ。」
聡と鞠菜を除く3人が家の中を見渡すと、確かにそうだった。シャンデリアはガラスのように見えたが、よくよく見ると水晶だ。床や壁は木で出来ているし、包丁などの生活器具も鉄やステンレスではなく、どれもこの世界で加工がしにくく、それでいて火が通りやすいものだった。
「でもさ、風呂とか無さそうだけど・・・どうしてるの?」
紅茶が聞くと、聡と鞠菜は顔を赤くして黙り込んでいる。
「あぁー、聞くべきではないことを聞いたな紅茶。」
「え?」
「・・・言うべき?」
「・・・でも言わないと分からないよね、あれは。」
「・・・来る途中に1本だけ道が分かれてただろ?あの先にあるんだよ。」
「交代制だけどね。でもあそこってタオルで体を拭くことなく乾くから、着替えの服だけ持っていけば問題ないのよ。」
その話を聞いて、紅茶と油圧式は唖然とした。一歩間違えれば痴漢行為に等しい。
「鞠菜さん、よくそんなことに耐えられたね。」
「うーん・・・幼い頃からずっと一緒だったから、そこまできにしてないのよね。」
「あ、そう。」
聞いてはいけないことを聞いたと思う紅茶だった。
どうも、著作名と主人公の名前が同じとだいぶ前に指摘されたのに未だに変えていない妹紅聡です。
今回から、第二シリーズである、ほのぼのの章を書き始めます。その場のひらめきだけで書いているので、展開が急かもしれませんが、気にせずに閲覧してください。