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未成熟なセカイ   作者: 孤独堂
第一部 未成熟な想い~小学生編
53/139

第50話

「何か最近、お前冷たいよな」


「え、そんな事ないだろう? 最近は前よりお前らと一緒にいるじゃん」


 相変わらずの校庭でのドッヂボールを終えた幸一・五十嵐・谷口・丸山、そして太一は、教室へと戻る為に階段を上っていた。

 前を並んで歩く五十嵐・幸一・谷口。

 その直ぐ後ろには丸山。

 そして更に一段後ろを太一が歩いていた。


「俺たちの事じゃないよ。倉橋さん」


 幸一の答えに再び口を開く五十嵐。


「あ、それ。俺も思ってた。さっきも教室の所で肩ぶつかったのに、お前直ぐ俺たちのとこに来ちゃて。倉橋さん寂しそうだったぞ」


 幸一を挟む様に隣にいた谷口も口を挟む。


「別に…いいじゃん」


 女の子の話題を出されるのが苦手な幸一は、足元を見ながらポツリと言った。


「いいって…だってお前ら付き合ってるんだろ? 女子が噂してたぜ。放課後図書室でこっそりデートしてたって」


「なっ!?」


 五十嵐のその言葉に思わず声を出して五十嵐の方を見る幸一。


「あ、俺もそれ知ってる」


 直ぐに谷口も口を開いた。


「俺も俺も!」


 後ろにいた丸山も混ざって来た。

 しかし、太一だけは何も言わず、黙って幸一の背中を眺めていた。


「実際、どうなんだよ?」


 ニヤニヤした顔を幸一の方に向けながら尋ねる谷口。


「どうって?」


 倉橋美紗子の名前に、もう殆ど頭が真っ白になっていた幸一は、直ぐに返答が浮かばず、そう言って誤魔化した。


「良いよな~倉橋さんだもんな~ 良いよ、絶対イイ!」


 もう片方の隣では、五十嵐が宙を見ながら羨ましそうな顔で言うと、一人先の段へと早足で上り始めた。


「やっぱり付き合ってんのかよ」


 なかなか答えない幸一に谷口は再度尋ねた。


「ちがうよ!」


 やっと開いた幸一の口から出た言葉は、自分でも驚く程の大声だった。


「ちがうよ。付き合ってなんかいないよ。だって僕達まだ小学生だぜ? なんで皆んな直ぐそうやって騒ぐんだ。倉橋さんは本が好きだから、趣味の話が合うだけさ。本当に、ただの友達なのに、皆んながそうやって騒いだり、冷やかしたり、それに噂話まで。僕もそうだけど、倉橋さんも相当迷惑しているんだぞ」


 最後の方は少しキツイ口調になってしまったと気付いたが、幸一はまあいいやと思った。


「冷やかすのは悪いと思うけどさー。半分羨ましさも入っているんだから。まーしょうがないと、我慢しろよ~」


「そうそう。しっかし、本当に付き合ってないのかよ~。倉橋さんだぞ、倉橋さん。それも彼女の方はお前の事満更じゃない様に見えるし」


「あ、それ俺もさっき思った。教室のとこでお前見ている目がこう、なんていうの? 凄い寂しそうな訴える様な目で」


 谷口と五十嵐の話に後ろから丸山も口を挟む。


「なんか、お前ってイマイチ何考えてるか、分かんないよな~」


「ホントホント」


 谷口の言葉に丸山が相槌を打つ。

 そこで先に階段の踊り場に辿り着いた五十嵐が、急に立ち止まって後ろを振り向いた。


「お前はどう思う太一?」


 上から見下ろす様に太一を見ながら、五十嵐が言った。

 その瞬間全員の足が止まり、一番後ろを歩いていた太一以外が一斉に振り返った。


「お、俺?」


 自分の鼻の所を指で指しながら言う。


「そう」


 五十嵐は冷静な声で直ぐに答えた。

 幸一も、この質問には興味があった。


(僕に美紗ちゃんと関るな。それが美紗ちゃんの為だ。と言った太一は、皆んなの前ではどう答えるのか? あいつは美紗ちゃんが好きだと言った。もしかしたらその為に邪魔な僕に関るなと言ったのかも知れない。確かに今の現状だと、それが正解だとも思えるのだけれど…)


 皆んなの注目が集まる中、太一は軽くニヤリと笑った。


「それは、自分の勝手だと思うよ。好きなら好きだという行動をすれば良いし。友達なら友達として接すれば良い。周りの誰かがとやかく言う事ではないと思うよ」


 太一の言葉に、一瞬全員が沈黙した。

 幸一はこの言葉からでは、太一が太一自身の事を言っているのか、それとも自分の事を言っているのか、その本心を読み取る事は出来なかった。


「そうだよな」


 不意に上から声がして、皆んなが今度は上を向いた。

 踊り場の五十嵐の声だった。


「そうだよな。やっぱり」


 繰り返し言う五十嵐の顔もまた、先程の太一の様にニヤリと微笑んでいた。

 それを見て太一は少し、目付きを鋭くした。


(何だこいつ、俺と幸一の事を何か知っているのか…)





                つづく

いつも読んで頂いて、有難うございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 女子たちの話題が中心でしたので。幸一や太一のことが気になっていました。お前等も加わり思惑も入り混じる展開なれど。それでも女たちにくらべればなあ…と思ってしまいます。よい場面の転換で飽きさせ…
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