第40話
今回は、構成上の都合で短いです。
軽く開いた口で言った言葉とは裏腹に、悠那の目付きは鋭く美紗子を見据えている。
「えっ…」
つい口から小さく声を漏らすと美紗子は。一瞬悠那のその鋭い目と目を合わせると直ぐに、下を向いて視線を外した。
『やっぱり付き合っているの?』
たった今悠那が言った言葉が再度体の中を駆け巡る。
体がかっかかっかと熱くなって行く。火照って来ているのが自分でも分かった。
(そうであったなら…いや、大事な友達と言ってくれた。好きだとも…やっぱりそれは、好きあっているという事で。付き合っているという事なのだろうか…)
暫くの間があって、頬を紅くしながら、相変わらず下を向いたまま、美紗子は口を開いた。
「その事はハッキリとは話した事ないんだけれど…多分、そうなんだと思う」
「ぷっ!」
その瞬間、悠那が思わず噴出した。
「美紗ちゃんはウブだな~。やっぱ可愛いよ。いいじゃん♪ 付き合っているんならいいじゃん。そんな深刻に悩む事ないよ。山崎君の事が好きで付き合っているんなら、そんなに悪い事をしている訳じゃないし、男好きでもなんでもないじゃん。やっぱりあいつらが悪いんだよ。自分達がモテないからって」
ニコニコ笑いながらそう話す悠那に、美紗子は思わず顔を上げて、目を大きく見開いて驚いた。
そんな風に思って貰えるとは考えてもいなかったからだ。
嬉しくて体中鳥肌が立った。
そして一瞬、同じ様に言ってくれた紙夜里を思い出した。
「ありがとう」
頬をまだ紅くしたままの美紗子が、恥ずかしそうにそう言った。
そんな二人を羨ましそうに眺めながら、それでも美智子は言わなければならない事があった。
「でも、根本さん達は自分がおかしいとか、悪いとか、思わないと思う」
温かい空気に包まれていたかの様な二人の表情は、その美智子の言葉に掻き消され、二人はそのまま困った様な表情で美智子の方を眺めた。
それから美紗子は何かを決意したかのような表情で話し始める。
「無視だけなら、私そんなにクラス全体の女子と話す訳でもないから、実害はないと思う。昨日も今日も、別に辛い事はなかったし。だから、クラスの空気が落ち着くまで、中嶋さんも、悠那ちゃんも、それから皆んなも、私を無視してもいいよ」
最後の方は後ろを振り返って言った。
「美紗ちゃん」
悠那はポツリと美紗子の名を呟いた。
美智子は寂しそうに黙っていた。
そして後ろの二人は、悠那が何かを言うのではないかと、黙って待っていた。
そして案の定悠那が口を開いた。
「そんなぁー、そんな事言わないでよ美紗ちゃん。彼氏とラブラブなだけで、なんでそんな虐められなくちゃいけない訳? やっぱりおかしいよ。きっと何かいい方法がある筈だよ。皆んなで考えよう。ね」
「でも…」
悠那に肩を掴まれて、そう話し掛けられながら美紗子は、また俯いて視線を外した。
「いいから。明日土曜で丁度休みだから、皆んなで集まってちゃんと考えよう。ねえ、だって絶対おかしいもん!」
俯いた美紗子に構わず、肩を激しく揺さぶりながら悠那は半ば懇願するように美紗子に向かって言った。
しかし美紗子には答えられなかった。
何よりも、友達に迷惑を掛けたくなかったから。
つづく
実は土日の事を考えていませんでした。(泣)これでは永遠に登校し続ける事になる! という訳で、明日は土曜日。今日は金曜日という設定です。つまり放課後の事件からここまで、一週間の出来事。マジか!? (笑)
いつも読んで頂いて、有難うございます。
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