12話 明日への準備
長らくおまたせしました。
小山田らが接触したのはM4を中心とした戦車1個大隊83両だ。
これまで独立混成第27師団は散発的かつゲリラ的な戦闘しか行っておらず、組織的な戦闘は行っていない。それにも関わらず米軍にとって驚異的な存在で在り続けてきたのは兵器の性能はもちろん、十分すぎる程にまで訓練を続けてきた隊員達の練度も関係するだろう。
敵はM4、M24を配備するいわゆる一般的な戦車大隊。それに相対するのは2個中隊と連隊本部の2個小隊計32両。戦力的には米軍が圧倒的だったがその性能は段違い。負けるはずがない。
「小嶋、3時方向照準!」
10式の砲塔がスッとM4を狙う。箱のような砲塔目掛けて砲身が冷酷に狙いを定めた。
「ロック!」
「てっ!」
ズドンと発砲。同時に反動で車体が後ろに揺れるが長い長い乗車時間で最早慣れてしまっていた。勿論砲弾は外す事なくM4に吸い込まれ派手な爆発を起こした。
「敵戦車こっちを狙ってる!」
運転手の仲田が叫ぶ。小嶋はすぐ様そにらに照準を向け発砲。小山田車を狙っていたM4は砲塔を空高く吹き上げエンジンの鼓動を止めた。
味方戦車は相変わらずの無被害で、ゲームのような感覚に陥ってしまう。だがここで気を抜けば必ずしっぺ返しが来るのは相場で決まっている。
小山田は絶対に気を抜くことは無かった。自分達の戦車が絶対安全であってもだ。
『こちら1-12。上空に敵機確認、指示を乞う。』
小山田は停車させ素早く上空を観察する。確かに上空に20機程の小型機を認めた。
『こちら01。敵機視認、戦闘中止。全車後退用意、後退!』
状況は一変した。先程まで自衛隊のワンサイドゲームだった戦車戦は再びあの真っ白な煙幕で終焉を迎えたのだ。米軍戦車兵は誰もが途中で終わったこの戦闘に苛立ちや安堵を覚えたが、指揮官は違かった。
(奴ら、対空兵器は無いのか……?)
基地に帰還した小山田は秋沼が危惧していた事をそのままに報告した。
「そうか、やはりハルゼーは出て来たか。」
危惧していた事、それは米軍艦載機の行動の活発化である。
これまで米軍機は度重なる日本軍の特攻機の影響で防空に専念せざるを得ず、有効的な空爆支援が行えなかったのだ。
だが先日の特攻を最後に日本軍機の数が激減。余裕が出てきた米軍は更なる空爆支援を始めたのだ。
日本軍の対空戦闘は虚しく用意に掻い潜った米軍機は次々に機銃、高射砲陣地を破壊。これを制圧した。
「どうしますか? 今のままだと厳しいものがありますし、何より柔軟性が低いかと思われます。」
松本がそう提案した。
現在の独立混成第27師団はまだ指揮系統の統一が進んでおらず、第7と第2で分裂しているのが現状なのである。
「それは解っている。そこでお前達に意見を聞きたい。」
秋沼は一束の書類を取り出し見せる。
「私が上野と話し合って作成した特編成表だ。これなら柔軟な対応も可能になるだろうし、指揮系統の統一が出来る。」
3人の連隊長は書類をめくりながら編成表を眺める。
秋沼が編成した戦闘団は合計8個で、第1〜4戦闘団が戦車連隊と普通科連隊で組み合わされた主力である。第5戦闘団が攻撃ヘリコプターで編成された航空部隊。第6戦闘団は機動即応部隊だ。
これは輸送ヘリと第3普通科連隊第4中隊と第26普通科連隊第4中隊で構成された部隊だ。米軍による奇襲攻撃、自分達による夜襲や奇襲の際に動員される機動部隊だ。
ヘリコプターという機動力を活かした戦術となり、夜間の際は単独で、昼間は第5戦闘団の支援の中で活動する事が前提となる。夜間も状況によっては第5戦闘団が付く。
第7戦闘団は対空支援、第8戦闘団は火力支援となっている。
やがて松本が微笑みながら大きく頷いた。
「団長良いですねこれ。俺は大賛成です。指揮の違う連中を一緒にする辺り団長らしいですわ。」
小山田も続く。
「俺も賛成です。ヘリコプター隊を1個の戦闘団として独立させたのは特に良いかと。士気高揚にもなります。」
2人は賛成だが、沼津だけは難しい表情をしていた。
「自分も特に異論はありません。しかし気になる点があるので意見具申させてもらいます。」
沼津が第8戦闘団を指差して口を開いた。
「この第27特科連隊なのですが、102大隊(M270MLRS)は自走出来るのでともかく、101大隊(FH-70)は少々不安点があります。敵はこちら程ではありませんが機動力がありますし、こちらには無い航空戦力があります。それらに狙われた際に真っ先に狙われる可能性は捨てきれません。」
沼津の意見は最もであった。
現在自衛隊の主力支援火力となっているのは部隊内では99式15榴と呼ばれている、99式155mm自走りゅう弾砲なのだが、101大隊は牽引式のFH-70なのだ。
ある程度の自走は可能だが、時速16kmと遅く、展開はこの時代の砲と比べたら格段に早いのだが足手まといになりかねない。それよりも心配なのは……。
「それに、大規模な支援砲撃を行うのならばFH-70用の砲弾は少なすぎます。99式は演習の規模から4回戦分ほどありますが、FH-70を保有する101大隊含む第1特科団は派遣隊です。戦力として加えるにはいささか疑問を感じます。」
秋沼が難しい顔で答える。
「ふむ……確かに一理あるな。砲弾は99式と共有出来んのか?」
「出来ないことはないと思いますが、俺はFH-70を使うなら99式に全部託した方が効率的には良いかと思いますよ。」
松本が答える。
「自分もそう思います。ですがそれでは隊員にも不満が出るでしょう。こうしては如何でしょうか? 主力は99式にして、FH-70はあくまで予備としては。最悪砲弾は撃破された99式から持って来れば良いですし、給弾車がやられればトラックで運びましょう。」
小山田が提案する。沼津もそれに同意した。
「よし。ならばFH-70は予備に回そう。先に浦和に回すよう高野(第8戦闘団団長)に伝えてくれ。」
従者に頼む。秋沼は立ち上がると早速編成作業に取り掛かった。
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夕方。
もうすぐ夜更けとなる時間だが、この独立混成第27師団仮陣地は慌ただしかった。
第201師団と隊員が協力してトラックにすぐに必要としない装備品を詰め込み、浦和に移動する準備を行っていたのだ。
更に、少し離れた所には特別編成された第27混成施設団が201師団の陣地と27師団の陣地構築の為に出撃しようとしていた。
201師団の工兵隊と各連隊の作業中隊が運搬手伝いの為に派遣されて来ているのだが、その重機の多さに度肝を抜かれている。
しかも渡される工具もツルハシや安物のスコップではなく高性能なスコップ等なのだ。これは作業が捗ると工兵隊も大喜びである。
更に秋沼はあまり多くない食糧を工兵隊の兵士にのみ譲渡した。この時代の兵士はろくな物を食べていない事を知っていた為、活力を付けてもらう為である。
「では行って来ます。」
施設中隊3個を率いる太田三佐が敬礼して踵を返す。施設作業車に乗り込むと旧軍のトラックと一緒に中隊は日本軍陣地へと向かって行った。
秋沼らも陣地構築が始まる。まず必要なのは第8戦闘団の陣地だ。
第8戦闘団の主力は99式である。これらは自走可能な為万が一の際にはすぐさま陣地移動が可能であるが、砲撃中はそうも行かない。
護衛部隊として第2高射特科大隊が配属されているが、数も多いわけではなくこれらの隠蔽陣地が必要となる。
その次に2個主力戦闘団が待ち伏せとして待機出来るような巨大な隠蔽陣地も構築する。現在使用している陣地は仮である為、その気になれば熟練した戦車兵なら見つけられてしまう。
少しでも味方の戦闘を有利に進める為に見分けがつけられない程の隠蔽率を高めた陣地を構築する必要があるのだ。
だがそれよりも秋沼の頭を悩ませている事がある。現在の陣地と浦和までの距離だ。
現在独立混成第27師団がいるのは千葉県である。細かく説明すると、現代で言えば国道128号を永田駅方面に見ると左手に板倉方面県道21号に別れる道がある。そこを真っ直ぐいくと蓮華寺がある小高い小山のような地点に到達する。
そこを目の前にして後ろの付近に現在陣地を構えており、米軍の侵攻路に当てはまっている。
ここから浦和までは約70km。90ならば1時間程で到着するのだから無理な距離では無いのだが、問題なのは量、つまり人だ。
全員が一応車両移動出来るのだが、その規模がいかんせん大きい。これだけの部隊が一度に動けば敵にその動向がバレる。それはマズイのだ。
「ここに留まるか浦和に後退するか……難しくなってきたな……」
浦和に移動する気ではあったのだが、201師団も連れて行くとなると無理である。秋沼は数分悩んだが、キッパリと決めた。
「上野。不謹慎な話だが、ここを死に場所にしようと思う。」
のんびりとタバコを吸っていた上野は秋沼に向き合う。
「俺はお前の親友だ。どこまでも着いて行くし、その覚悟もある。だが他の隊員にはちゃんと伝達しておいた方が良い。中には前線から離れられると希望を持ってる奴もいるんだからな。」
上野の指摘にもちろんだと秋沼は頷いた。
外では重機がエンジン音を響かせ戦車用の塹壕を掘っており、工兵や隊員が協同で戦車の偽装作業や細かい作業を行っている。
掘り出した土は盛り土で歩兵陣地の強化を行ったり、201師団から分けてもらった土嚢袋に詰めて塹壕の補強をしている。
秋沼の考えた戦闘内容としては、敵は戦車を前にして前進している事から、戦車部隊を前にして普通科部隊を後ろに配置している。
その後方10kmに特科を配置し特科の前方4kmに高射特科を配置している。
恐らく戦車主体になるだろうが、普通科は201師団に派遣することも有り得るだろう。
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その頃、白子町周辺で待機していた米第1軍団の陣地内では大規模な侵攻の準備が整えられていた。
第1軍団を構成するのは第25、31、41歩兵師団と2個戦車旅団。それと2個独立戦車大隊である。
戦車の数は700両近くに達し、日本軍の貧弱な部隊や陣地など軽々と突破して見せるという意気込みが上陸当初はあった。
だが何度か報告のあった強力な戦車部隊と遭遇したという話を聞くたびにその士気は低下してしまい、今ではクルーガーでさえ頭を悩ませている。
だが作戦は続いている。覚悟を決めたのか、翌日早朝に1個戦車旅団(3個戦車連隊中核、M4シャーマン135両、M26パーシング52両)が前進する事が決定した。
歩兵連隊2個がその後方から前進し、戦車旅団の前方を偵察中隊が進むという普通の陣形である。
クルーガーは焦っていた。
第6軍は湘南地区と千葉を担当しているのだが、湘南地区は今のところ順調に進んでいるのだ。
だが千葉はどうだろうか。成田方面と木更津方面に向かう部隊からの報告では順調で、後遅くて2日で到達出来るという所なのに、強力な戦車部隊のせいで千葉方面は延々として進んでいないのだ。
総本部からは遂行の催促がうるさく、更迭もありうるという電文まで送って来るほどだ。
後ろにいるくせに前線を知らない奴らと心内罵りつつもクルーガーはあらゆる手段でなんとか千葉方面に通じるこの通りを突破しようと考えていた。
板倉さえ突破してしまえば平野が広がり、千葉までは一直線となる。
「ジャップの忌々しい特攻は終わってらしいからな……明日からは満足な航空支援が受けられるだろう……。」
クルーガーはそう呟くとゆっくりと目蓋を閉じた。
fin
寒さが盛り返してきた中、皆様はいかがお過ごしでしょうか。松ちゃんです!
長くおまたせしました!こちらは久し振りの投稿なので、過去作を確認しながらの執筆でした。
砲弾なのですが、実際どうなのか分かりませんので、一応併用は出来ると言う設定にさせて頂きました。
3月下旬に引っ越しがあるので更新速度が今よりも遅くなってしまうかも知れませんが、お許し頂ければと思いますm(_ _)m




