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星空の記憶  作者:
3/3

一人ぼっちの少女

ナナセ、と名乗る少女は、俺を見て微笑んだ。

「それで、お兄ちゃんはなんて名前?」

俺は、名乗るのをためらった。

とりあえず、苗字だけを言ってみる。

「…池端だけど」

「苗字じゃなくて、名前は?」

「…亮平」

俺はぼそっと言った。

ナナセの様子を伺うと、彼女はさっきと同じように笑っている。

「そっかあ、よろしくね、亮平君!」

「あぁ…はぁ」

俺は曖昧な返事しか出来なかった。

(やっぱり…だよな)

「お前、家出したんじゃないのか? 両親はどこだよ、まさか道に迷ったワケじゃないだろうな?」

俺が聞くと、ナナセは首をぶんぶん横に振った。

「違うよ、迷子なんかじゃない。わたし、一人で来たの。ずっと一人でいるもん。列車に乗るのも、わたし一人だよ」

ナナセの大きな目が俺を捉える。

俺は真っ直ぐに目を見れず、うつむいて…。

「はぁっ?」

気づけば、俺の手にはナナセと同じ、金色の切符が握られている。

(うぉ? 俺、いつこんな切符買ったんだ? いや、買ってない! っていうかさっきまで、持ってなかったぞ!?)

「なぁんだ、お兄ちゃんもわたしと同じ列車に乗るんじゃない。よかった、一人じゃ心細かったんだよね」

ナナセが嬉しそうに言うので、「違う、俺は…」と言いかけたけど、途中で考えを変えた。

(やっぱ、こんな小さい子一人で行かせるのもな…。本当に一人で行くんだったら、何かあったときに責任を問われるのは…俺? そうなったら面倒だな)

そのとき、線路の先から明るい光がこぼれてきた。

その光は徐々に近くなり、電車のライトだということがわかる。

「あれだよあれ!」

ナナセが嬉しそうに言う。俺も、目を見開いたままその電車が来るのを見た。

電車は、銀色のボディにキラキラした模様が入った、まるで銀河のような外装だった。

『銀河を本当に走れたら、どんなにきれいなんだろうね…』

幼い頃に言っていたことを思い出し、俺は頭が痛くなった。

やっぱり見たことのない電車だ。俺とナナセが持っている切符の電車らしいが…。

「ほら、行こう!」

電車は、俺たちの前で停まった。ナナセがそう言って、おれに手を差し出す。

(このまま駅に残っても、どうせすることはないんだ。なら…いいじゃないか)

不思議なことばかりだ。

俺はためらったが、この際もうどうにでもなれという気持ちで、ナナセの小さな手を握った。

手を握るなんて…久しぶりだ。


こうして…不良と小さな女の子という変な組み合わせの、奇妙な旅が始まったのだった。


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