神様との会合
今回は短めです
気がつくと、俺は真っ白な空間にいた。
「…ここは……?」
ボンヤリしていた意識が徐々に覚醒していく。
(俺は……確か……そうだ!優斗と咲月は?!)
教室での出来事を思い出し、辺りを見渡して見るが、二人の姿はどこにもない。それどころか人も物も、何一つ見当たらなかった。
『呼び出せたのは君だけか』
「ッッ!!誰だ?!」
現状に混乱していると、突然、どこからともなく声が聞こえてきた。
『そう構えないでよ。僕は君たちの世界で言うところの神様って存在かな?』
「か、神様?」
『そう。君たちのクラスに起きた出来事を説明しにきたんだけど、どうやら思ったよりも召喚するのが早かったようだね。まぁ一人だけでも呼べてよかった。とりあえず、時間もないから手短に話すよ?まず、君たちのクラスは異世界に召喚魔法で喚ばれた。その異世界の名前は『アルトリアム』。分かりやすく言えば剣と魔法の世界だ。ただ、アルトリアムでは多くの知性を持った種族がいるため、戦争や闘争が頻繁に起こっている。今回、君たちを喚んだ国は、人族、つまり人間が治める国だね。今、人族は魔族と言われる種族と戦争状態で、しかも劣勢だ。本来、禁忌であるはずの召喚魔法を使ったのは、それだけ追い詰められてたってことだね。ここまではいいかい?』
いいかい?とか言われても………まぁなんとなくそんな気がしてはいたが、やっぱりよくある異世界召喚ものか……まさか当事者になるとはな…
「……つまり、俺たちは戦争の道具として喚ばれたわけか」
『まぁ、身も蓋もない言い方をするならそうなるね。異世界人は召喚される過程で魂が強化されるから、その影響で何かしらの能力に目覚める。それが1つなのか、複数なのかは個々で違いがでるみたい。加えて身体能力にも補正がかかるから、戦争の道具としてはうってつけだね。まぁめったに行われないから、どうなるのかは、僕にもわからないけど』
頼りない神様もいたもんだ。っとそんなことより、
「なぁ、俺は何のためにここに呼ばれたんだ?そんな説明は向こうの世界でも聞けると思うんだが?」
『まぁね。君をここに呼んだ理由は別にある。まず1つ目は能力の付与だね。あ、僕が君に与える能力だから、召喚による能力の覚醒とは別だよ』
「ありがたい話だが、いいのか?俺だけに与えてしまうのは公平性に欠けるんじゃないか?」
『そう。それが僕の2つ目のお願い。君にはその力で他の人たちを出来る限りの範囲でサポートしてあげて欲しい。本当は何人かの人にやってもらいたかったんだけど、残念ながらここに呼べたのは君だけたがらね』
「なるほど……それは全員じゃなくてもいいか?」
『というと?』
「俺にだってやりたいことと、やりたくないことがある。親しいやつとそうでないやつ、どちらを助けるかと言われたら親しいやつを優先するに決まってる。貰える能力にもよるが、俺一人じゃクラスメイト三十何人もフォローするのは物理的に不可能だ」
『それは仕方がない。さっきも言ったけど出来る範囲でいいよ。酷い言い方をすれば全滅さえ回避すれば何も文句はないよ。君にそんな重荷を背負わす僕に贅沢を言う権利なんかないからね』
神様は自嘲気味に言う。神様も平和な世界の学生を争いに投入することに、少なからず思う所があるのかもしれない。
「……わかったよ。出来る限りでな」
『それだけで十分だよ。さて、時間もなくなってきたし、後は能力を与えるだけだけど、最後にもう1つだけ』
「ん?」
『これは余力があったらでいいんだが、アルトリアムにはとある人物が世界のどこかで封印されてるらしい。名は『サーシャ』。この人物を解放してあげて欲しい』
「明確な場所はわからないのか?」
『うん。僕の干渉力が及ばない場所に封印されてるみたいでね。アルトリアムのどこかということぐらいしかわからないんだよ』
「……わかったが、そっちはあまり期待するな」
『わかってるよ。っと、もう時間だね。それじゃあ能力は与えておくから向こうの世界で確認してね』
「あぁ。もう会うことはないかもしれないが、一応聞いとこう。神様、名前は?」
『そういえば、まだ自己紹介してなかったね。僕の名前は『アルス』。生きていればもう一度ぐらい会えるかもね。矢代 誠也君』
「そうか。じゃあまたなアルス」
瞬間、俺の体が光り、再び視界が真っ白に染まった。
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『ふぅ。行っちゃったか』
誰もいなくなった真っ白な空間に声が響く。
『誠也君、君は気づいてないかもしれないけど、君の魂のスペックは既に神に近くなっているんだよ』
次の瞬間、真っ白な空間が崩れ始める。
『君なら女神を救うことができるかもね』
そして、空間は完全に崩れ去った。
―――願わくば、君の歩む道に幸多からんことを―――