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プロローグ

初投稿です。

趣味全開で書いてます。

至らぬ点がありましたらどんどん指摘してください

そこは真っ暗な所だった。夜の暗さとは違う世界が闇に侵食されているような暗さだ。辺りは静寂に包まれていて物音1つしない。


(くそっ……なんで……なんで俺なんだよ…)


磔にされ、身動きもとれず、俺はただただ今自分が置かれている状況に文句を言うことしかできない。自分を裏切ったやつらに激怒し、この状況に絶望しを繰り返していると静寂の世界に物音が響いてくる。


コツ………コツ………コツ……


それはじわじわ首を締め付けるような恐怖感を煽る足音だった。俺はそんな状態に耐えきれず恐怖で目からは涙を、口からは嗚咽がこぼれる。生まれて初めて経験する死の恐怖は形容しがたい絶望感だった。


「そんなに怯えなくとも大丈夫だぞ勇者よ」


いつの間にか“ソレ”は目の前にいた。今の言葉が合図のように闇の空間にろうそくの火が灯る。その姿は人間のようなシルエットだったが、明るくなるにつれ、“ソレ”が化け物だということを本能的に理解する。


「こんばんは勇者さん。そしてようこそ魔族領へ!これから君には打倒人族のための実験台になってもらう」


そう言われた瞬間、俺は走馬灯のようにこれまでの経緯を思い出していた。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





「はぁ……なんか面白いことないかな…」


そんなありきたりな台詞を独り言として呟く俺の名前は矢代(やしろ) 誠也(せいや)。ごく普通の高校生だ。突出してできるようなこともないし、むしろできないことの方が多い。成績は下の上、運動は身長のおかげでそこそこできるが得意じゃない。顔は長いことニートのような生活を送ってきたせいで不幸顔。存在感が希薄だとも言われる。同じクラスだったやつに「去年一緒だったっけ?」と言われるやつだ。加えて子供の頃から病弱体質で1ヶ月に2、3回は絶対に休む。ほら、普通だろ?えっ?普通じゃないって?やかましいわ。


とにかく、なんやかんやで月日が流れて今や高校三年生だ。真剣に自分の進路を決めなくてはならないのだが、あいにくやりたいことも、興味のあることもない。強いて言うなら楽に生きたい。なのにそのためには努力しなければならないという矛盾。世の中は不条理だ。


「はぁ……」


「どうたよ誠也?また世界でも呪ってんのか?」


俺に話かけてきたこいつの名前は安久津(あくつ) 優斗(ゆうと)。俺とは小学校の頃からの付き合いで所謂幼馴染みだ。俺とは違い、イケメンで成績優秀、スポーツも万能という完璧超人だ。


「俺が日頃からイタいこと考えてるような言い方はやめろ」


「違うのか?」


「違うわ!俺だって人並みに色々考えてるのさ」


「へぇ……例えば?」


「………………世界征服とか?」


「平和じゃないのな。重症だな」


失礼なやつだ。皆誰しも1回ぐらい考えたことあるだろ世界征服。………あるよな?


優斗とそんなやりとりをしていると、こちらに駆け寄ってくる人影が視界に入る。


「おはよう!誠也!優斗も!」


やかましいぐらい元気よく挨拶してきたこいつの名前は安藤 (あんどう) 咲月(さつき)。伸長は女子の割には高く、スラッとした体型ではあるが出るとこはでていて、この学校で一、二を争うぐらいの美少女である。俺が何故そんな高嶺の花のようなやつと話せているのかと言うと、咲月とも幼馴染みであり、その期間は優斗よりも長く、幼稚園の頃から一緒なのである。まぁ咲月は覚えてないのかもしれないが、今更言うことでもないだろう。


「あぁ、おはよう」


「おはよう咲月」


「何の話してたの?」


「誠也が世界征服を企んでるって話だよ」


「誠也が?あはは!相変わらず変なこと考えてるね!」


「考えてるわけないだろ。冗談だ冗談」


あははと笑い続ける咲月に優斗が1つの袋を差し出す。


「はい咲月。誕生日おめでとう」


「わぁ!ありがとう優斗!開けてもいい?!」


言うが早いか、咲月は袋を開ける。中に入っていたのは水色のガラスの玉が2つくっついてるヘアゴムだった。


「きれい!それに可愛いね!ありがとう!」


「どういたしまして」


あぁ~暑い暑い。全く、人の目の前でイチャイチャすんなや。


そう、実はこの二人は付き合ってる(らしい)。本当の所はどうだか知らないが、まぁイケメンと美少女、その二人が仲良さそうに話している状況で、そういう噂が聞こえてくるのは必然だろう。二人はそういうことを俺に言ってこないので噂の範疇でしかないが、もし付き合ってるのだとしたら報告みたいなことをされていない俺の心情はちょっぴり寂しい。


「…………」


そんなことを考えてると、咲月がこっちをジト目で見ていることに気づいた。


「……なんでしょうか?」


「……………」


「わかったから睨まないでください」


そう言って俺は鞄の中から袋を2つ取り出し、まず1つ渡す。


「まぁとりあえず、いつものやつな」


「えぇ~またぁ?芸がないよ!」


「おまえが毎年欲しいって言ったんだろうが。あげなかった時はめちゃくちゃ泣くし…」


「そ、それは昔の話じゃん!」


「じゃあいらないのな?」


「いらないとは言ってないよ!」


全く!と咲月は頬を膨らませながら怒ってますよアピールしながらそっぽを向く。それを苦笑しながら見ていた優斗が俺の持っているもう1つの袋を見つけた。


「あれ?そっちの袋は?」


「ん?あぁ、これな」


不機嫌中の咲月も気になっていたようで、チラッと目だけこっちを向く。


「これあげるから機嫌直せよ」


「……別に怒ってないし。てか、これなに?」


「まぁ開けてみ」


咲月は言われるがままに袋を開ける。そして中に入っていた物を見て驚愕した。


「ッッ!!誠也!これ!」


その袋の中に入っていたのはネックレスだった。


「ま、高3だしな。たまにはこういうやつを選んでみたってうお?!」


咲月は感極まったのか、勢いで抱きついてきた。


おいおい!彼氏(?)の目の前で他の男に抱きついちゃいかんでしょ?!さすがに優斗も怒っちゃうんじゃないの?!


そう思って優斗の方を見るが、何故か暖かい眼差しでこちらをみている。ちょっと!止めなさいな!


「ありがとう!誠也!」


「お、おう。まぁ喜んでくれてよかったよ。欲しかったんだろ?ってかちょっと離れて」


「???私、頼んだっけ?」


「いや、この前三人で遊びに行ったじゃん?その時、なんかやたら1つの店の方を見ていたからさ。あと、離れてくれませ―――」


「えっ?!!そんな見てた?!いや、でもあの店、ネックレス以外にもあったはずじゃ…」


「まぁ、その辺は勘だな。なんとなく喜びそうなやつを選んだだけだ。あと、離れて―――」


「すごい!ドンピシャだよ!欲しかったんだよこれ!あ、でも高かったんじゃ……?」


「部活やってるお前らとは違って俺は暇だからな。バイトして結構稼いでたんだよ。で、離―――」


「そうなんだ!ありがとう!誠也!」


お礼を言いつつ咲月は、より一層強く抱きついてくる。だが、抱きつかれているこの状態は精神衛生上、色々まずいので、強引に引き剥がす。


「ほら、二人とも、そろそろHRが始まるぞ?席に着いとけ」


「そうだね。席に着こうか咲月」


「あ、うん!えへへ」


と言っても優斗は俺の横の席で、咲月はその横の席なので、急がなくても十分間に合う距離だがな。


俺が席に座り直し、一息ついてると教室の一部から視線を感じた。


(またか……)


そいつらは学校のアイドルである咲月の言うなればファンクラブみたいな連中だ。どうやら咲月と話す俺の存在が気に食わないようで、しょっちゅう嫉妬や憎しみの視線を飛ばしてくる。


(ま、()()()がある限り手は出してこないから大丈夫だろう)


そして、1限目が始まるまで寝ようかなと机に突っ伏そうとした瞬間、クラスにいる全員の体が光り始めた。


「なっっ!!」

「きゃぁぁぁ!」

「なんだこれ!」

「まぶしい!」

「目が!目がぁぁぁ!」


クラス全体が混乱に陥る中、俺は真っ先に優斗と咲月の無事を確認する。優斗も咲月も突然の発光に目がくらみ、目を押さえている。俺は寝ようと目を閉じていたので目に直接光を浴びなかった。俺は席を立ち、優斗と咲月の手をつかむ。


「なんだかわからないが、ここにいるとヤバい!逃げるぞ!」


二人を強引に立たせ、教室の外へと引っ張りながら走る。そして、もう少しで廊下という所で急に二人の手の感触が消える。


「おい!どうし―――」


振り返ったそこには―――






――――誰もいなかった





教室内はさっきまでいたクラスメイトがいなくなっており、優斗も咲月も消えていた。


「どうなってやがる………」


直後、視界が真っ白に染まり、急な浮遊感が襲ってきた。それを最後に俺の意識は途切れた。





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