遅刻
目を開けるとそこは自室だった。
「なんだ、夢だったのか」
内容は思い出せないが、なんだか恐ろしい夢を見ていた気がした。起き上がり壁の時計に目をやった。11時35分。完全に昼。
あ、しまった。
今日12時からミユキと約束していたんだ!時間にうるさいミユキは例え電車の故障であろうとなんであろうと遅刻は嫌う。これは非常にマズイ。ベッドから飛びおり俺は急いで着替えた。玄関を出たところで腕時計を見た。11時43分。我ながら素晴らしいタイムで準備をしたな。と、ふざけたことを考えている余裕はない。俺は駅まで全力で走った。11時50分の快速に乗ることができればミユキとの待ち合わせの駅まで8分なので何とか間に合う。
動け、動け俺の脚!
普段から運動をもっとすべきたっだ。歩くと15分ほどの道のり。頑張れば間に合う距離。改札に財布を叩きつけてIC乗車券を認識させ俺はホームへの階段をを一つ飛ばしに上った。
トゥルルルルル。
発車の合図じゃないか!
飛び込むような形にはなったが何とか目的の電車に乗れた。これで待ち合わせには間に合いそうだ。ミユキにギリギリになってしまうことを伝えようとポケットの中に手を入れたが、あるはずの携帯が見当たらない。
しまった、家に忘れてきたんだ。
まぁ、いいだろう。間に合いそうだし。外の景色を眺めながら息を整えた。駅についたら今度は待ち合わせの目印にしている駅前のオブジェまで全力疾走しないといけない。多分2分あれば十分だろう。
大丈夫、何とかなる。
自分にそう言い聞かせながら目的の駅まで心を落ち着かせ体力の回復を待った。
次は動物園前です。
到着を知らせるアナウンスが車内に流れた。俺はドアの前でスタンバイをしスタートの合図を待った。
プシュー。
ドアは開き俺は改札までダッシュした。乗る場所が悪かったせいか、改札までかなり距離がある。同じ電車から降りる人々の群れをかき分けながら俺は改札まで急いだ。何とか改札を抜けたら最後の難関、階段だ。駅前の大階段を降り切ったところに待ち合わせのオブジェがある。
秘儀・一つ飛ばし!
2/3ほど降り切った時にはオブジェが見えていた。そしてミユキの姿も。間に合いそうという安堵感からなのか、それともここまでの肉体へのダメージが響いたからなのか、俺は見事に階段を踏み外してしまった。約20段分の階段を俺は派手に転げ落ちた。俺のものではない悲鳴や叫び声が聞こえ目を開くとそこは地面であり、転がりは終了していた。
大丈夫ですか?
だれか救急車!
そんな中聞きなれた声が聞こえた。
「30秒遅刻よ。先行くね」
あぁ、間に合わなかったのか。
全身の痛みと疲労感から目を開けているのが辛くなり、だんだんと意識が遠のくのを感じた。俺はどうなるんだ?このまま死んでしまうのか?そして、あたりは真っ暗になった。
目を開けるとそこは自室だった。
「なんだ、夢だったのか」
内容は思い出せないが、なんだか恐ろしい夢を見ていた気がした。
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