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第1話はこれで完了です。

お気にり登録ありがとうございます。

「ゲロゲロ……。本部より命令受信。弓兵は移動せよとのこと、ゲロ」

ゲロ子がプレーヤー(ケイン)からの命令を伝える。

「ば、バカじゃないのか!敵の背後に回れって……。遮蔽物も何もないぞ。しかも、敵の退却路を弓兵がふさいでどうするんだ!」


 おそらく、敵の背後から射撃して敵へのダメージを最大限にしようというのだろう。

(それは素人の作戦だよ!)


 俺は地団駄踏んで悔しがるが、今の身分ではプレーヤーの命令に逆らえない。ゲームの世界においてはプレーヤーは神様なのだ。射撃体制を解いて、俺の弓隊は敵の背後に回る。


(せめて、せめて、こっちへ来る前に射撃で全滅させる。それしかない!)


 俺はそれに賭けた。


 ちなみにケインの奴。ファイアー・アローの補助魔法はかけてくれない。MPが少ないに違いない。いや、死ねと言ってる部隊に投資はしないか。俺だってしないわ。


 三方を包囲された盗賊団。もはやこれまでと退却しようと唯一包囲されていない後方に目をやった。そこには弓兵小隊が隊列を組みつつある光景が……。

 絶望感で顔が蒼白だった盗賊の頭は、それを見て希望が湧いてきた。すぐさま、配下の部下にどなり声を張り上げて命令する。


「者共、生き残るチャンスがあるぞ! 後方の弓隊を撃破して退却だ~」

「うおおおおおっ!」


 このチャンスを逃すまいと盗賊団が一致団結する。


(ですよね~。俺が盗賊でもそこに死中の活を見出しますよ)


 盗賊団は死に物狂いだ。むちゃくちゃに武器を振りまして突入するから、こちらもビビってしまって攻撃ができない。


(ですよね~。遮蔽物も何もないからこっちも怖いよ!)


 盗賊団と弓兵が入り乱れての大乱戦。おかげで盗賊団の足が止まった。


「よし!僕の作戦通りだ。弓兵ごと殲滅する。これでパーフェクトだ」


 ケインが高らかに宣言する。


(おいおい、お前、この戦い、最小限の被害でクリアするんじゃなかったのか!)


どうやら、ケイン奴。盗賊団の全滅ボーナスにターゲットを変更したらしい。一小隊の犠牲で完全撃破を狙えるのだ。こういう状況なら俺もそうするだろう。こうなる前に手を打つべきではあるが。


「撃て!」


 左翼から銃隊は射撃する。盗賊と弓兵がバタバタ倒れる。


「た、隊長~っ!」


 叫びながら倒れて砕けていく俺の部下たち。

(す、すまん……)

 右から槍隊の一斉3弾突き。盗賊と一緒に突き刺される弓兵。


「うぎゃあああ……隊長~さらばですう~」

(重ね重ね、すまん)

「主様。ケインの騎馬兵が突撃してきますでゲロ!」


「突撃速度を上げる!魔法チャージ×2を発動」


 赤い光に包まれて、スピードを上げるケインの騎馬隊。赤い火の玉になって突っ込んでくる。怒涛のごとく、突破して蹴散らしていく主人公ケイン。


(ああ……気持ちいいんだろうなあ)


 俺もケインをやっていた時は、最後にトドメをさすこの騎馬突撃は気分爽快であった。


(くそ、せめて、せめて……馬にはねられて死ぬなら、ルカちゃんに!)


 俺は乱戦の中、ケインの傍で一緒に馬を操るルカちゃんの前に出ようと思った。この状態だと俺の死は100%確実である。これはこのゲームをやり尽くした俺の判断だ。どうせ死ぬなら、ルカちゃんのお馬で死にたい。


 実は、ルカちゃんに殺されるとシナリオクリア後に、ルカちゃんの膝の上で死ぬことができるのだ。一般小隊長の数少ない恩恵なのだ。あのムチムチの太ももに頭を乗せることができると思うだけで、この不幸な状況をチャラにしたいと俺は思った。


「ご、ごめんなさい。本当にごめんなさい……」


 キラキラ輝く涙が2粒、俺の顔に落ちる。両手を握られた俺は苦しい息の中目を開けてこういうのだ。


「俺のような名もない小隊長のために涙を流してくださるなんて……俺はなんてラッキーなんだろう。この世を去る最後に見たものが女神さまなんて……」



(クサイ……なんてクサイ台詞なんだ!)


 ついでにキスをお願いしてみよう。死ぬ間際なら案外聞いてくれるかもしれない。


 そんな妄想をする俺は、ルカちゃんの赤毛の馬の前に出ようとしたが、その瞬間、巨大な黒馬が俺を跳ね飛ばした!


「そ、そんな~っ!」


 宙に舞う俺の体。

 

 俺はダイタロスのおっちゃんにはねられた。


 戦いが終わり、俺をはねたダイタロスのおっちゃんが俺を抱きかかえる。


「このダイタロス。この戦場で命を落とした勇者の名を覚えておこう。おっ!お前、あの時のいいケツしていた小隊長ではないか! そう言えば名を聞いてなかったな。お前、名は何と?」


「う……っ」


 俺は死にながら目から涙を流す。


(筋肉モリモリの汗臭いおっさんの腕の中で死にたくない~。しかも○モ疑惑の~)


「名は何というのだ!」


 おっちゃんがキレれて俺の体を揺さぶる。


「しょ、しょう……小隊長B」

「そうか、小隊長B、お前の名前はこのわしの記憶に留められた~」


 ダイタロスのおっちゃん、あとなんかわめいていたが、もう俺の意識は途切れていた。本日、2回目の死のようです。


(ああ~こんな死に方いやだ~)


明日からはタイトル通り、小隊長Cですね。

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