表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/65

ゲロ子が登場です。

この作品で一番気に入ってるキャラです。

ナビキャラって奴ですが……。「関ヶ原で待ってるわ」の半兵衛よりも活躍する予定ですw。

目が覚めた。


生き返っていた。

というより、別人物になっていた。


 俺は体を起こして自分の両手をコキコキとグッパーして動かす。

小隊の宿舎の粗末なベッドに寝ていたようだ。ベッドも粗末だが建物も粗末。トタン屋根と粗末な古い板で作られ、ドアも布で代用という掘っ立て小屋である。ちなみに小隊長も兵士と同じ宿舎で同じ大部屋である。ベッドが選べるくらいの特権しかない。


 今回も小隊長だ。一応、名前はAからBになっていた。

 だが、ちょっとだけ運が向いてきた。

 部屋の壁に立てかけてある武器は長弓。制服の左腕にあるワッペンを見てそれを確信した。

 

 弓と矢が二本デザインされた図柄だ。これは抜刀隊じゃなくて弓兵隊のものだ。


(おーっ!死亡率が低くなる。手柄は立てにくいけど……)


 直接肉弾戦をしない部隊であるから、うまく戦えば死亡率はグッと低くなる。


(やった!)

 何故か喜ぶ俺。(それでいいのか……)


 どうやら、小隊長のような消耗キャラは繰り返し使われるようだ。俺は殺されても小隊長として復活できるようだ。


(死んでも復活できるのはラッキーだな。何回もトライすれば、成り上がれるチャンスもあるだろうし……意外と美味しいかも)


などと、ほくそ笑んでしまった。


(それでいいのか!主人公にこき使われる人生でいいのか?)


 はい。と一瞬思いましたが、やっぱりよくありません。


 俺はさらに自分の置かれた状況を確かめようとステータス画面を開いて見てみた。


 そのステータス画面を見て俺は固まった。文字通りフリーズである。


冷たい風が駆け抜けていく。(ピューッ)


(あれ?)

(確か俺の年齢設定は16才だったよな?)


 このSODというゲームのシステムは、主人公には詳細な設定があり、年齢や容姿など細かく設定できるが、小隊長などというどうでもいい消耗キャラは細かい設定はない。


(男)(女)と年齢設定だけだ。


 確か俺の年齢設定は主人公をやった時と同じ16才だったはず。先ほどの小隊長Aも年齢だけは16才と同じであった。だが、俺のパーソナルデータを示すステータス画面には17才とある。


(いつの間にお誕生日が来たのでしょうか?)

(誕生日?誕生日といえば……あれ?俺の誕生日はなんだっけ?)


 誕生日が思い出せない。いや、俺の本名もなぜか思い出せない。これはどういうことだ?


俺は頭を抱えた。


(弓兵小隊の隊長として復活できたのに、この嫌な予感はなんだ?)



「ああ、それね。主様ぬしさま、ゲロ」


 ポンっと俺の肩に小さなキャラクターが現れた。俺はコイツを知っている。俺がこのゲームの主人公ケイン・ルインソードをとして攻略していた時にプレイのサポートをしてくれていた奴だ。名前を「ゲロ子」という。チュートリアルをしてくれるナビキャラだ。


 ゲロ子と言っても、ゲロをはく残念なキャラではない。コイツはこれでもSODソードオブデュエリストの主人公をサポートする奴なのだ。通常は人間型ヒューマノイドか、妖精型(エルフ、フェアリー等)から選択し、自分なりにカスタマイズして作り、名前も自分でつけられるのであるが、このゲロ子はちょっと事情が違った。


 コイツはこのゲーム購入者限定でたった100人にもらえるスペシャルキャラなのである。スペシャルキャラは全部で5種類あるが、ゲロ子はその中でも人気は最低のキャラで、ヒューマノイド型の女の子がカエルの着ぐるみを着ている容姿なのだ。それなら可愛いと思うプレーヤーがいてもよいのだが、着ぐるみの頭のかぶりものがリアルすぎてちょっとキモい感じだ。しかも体はぴったりとした全身タイツだし。さらにコイツの性格が腹黒くて意地汚いからちょっと引かれている奴なのだ。


 俺も本当は竜族の姫キャシャリーンとか、白騎士エリスとか、コレクター垂涎のナビキャラが欲しかった。どれも美少女で可愛く可憐で萌萌なのだ。でも、俺が引いたのは「ゲロ子」である。ちなみに100人中、ゲロ子を引いたのは三人だけ。3%という低確率の極レアなのに喜べないのはどうしてだ。

 

 名前ぐらい可愛いのをつけても良かったが、俺的にはどうでもよくなったので、適当に付けてしまったが、呼んでみるとこの「ゲロ子」がぴったりのように感じてきた。


そのゲロ子が俺に指摘する。ぺたぺたと俺の肩を叩く。


「主人公以外のその他一般キャラは、死ぬと若さと記憶を失うようです。ゲロっと」


「はあああああああ~ん。マジかよ!」


 俺は頭を抱えてベッドでうずくまる。兵士用の安ベッドがキシキシ音を立てる。


「主様。このゲロ子が嘘を付くと思うでゲロか?」


 そうゲロ子は言うが、コイツはこいつで信用ならない。肝心なところでポカをやる。まあ、サポート役が完璧だとゲームが面白くないからそういう役回りをするのであるが。


「一度死ぬと、年齢は1歳上がるようでゲロ」

「ちょっと、待て。1歳だよな……」


 それなら大丈夫かと俺は一瞬思った。だがゲロ子はデータを挙げる。


「初期における小隊長の摩耗率は一つの戦闘に対して78%になるでゲロ。中隊長に出世するまで20回は死ぬでゲロ」


(ああ……なるほど!)


 このゲーム、中隊長になると急に30代から40代になるのだが、今その理由が分かった。


 主人公やその仲間以外のどうでもいいキャラはこうやって年相応になるのだ。

(さすがSOD、うまくできているゲームだ)


なんて、感心してる場合か、こらああ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ