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第3話 陣地を作る簡単なお仕事だったはずですけど……1

今日からジャンル替え……。この物語って、よく考えたらファンタジーって感じじゃないですよね?とりあえず、「戦記」に乗り換えました。

ただ、そのうち、魔法も出てくるからなあ……。

 で、そんな(したたかナンナ)のせいで俺の部隊は地面に穴を掘って塹壕を作っている。俺自身も部下と一緒に穴掘りだ。

(はあ~やりたくね~。疲れた~)

 俺はスコップを地面に突き刺して適当に時間を潰す。土を掘るより、スコップにもたれて空を見ている方が長い。そんなやる気のない指揮官なのに、俺の小隊の部下どもは士気が高い。泥だらけになりながら、懸命に穴を掘っている。


 今回の任務は、鉄砲隊の俺の小隊と国軍の工兵隊で作業にあたっている。工兵隊の連中はレンガを並べて大砲の陣地を作っている。これはそれなりの技術がいるから、専門の工兵しかできないだろう。真っ平らな平原に砲兵隊陣地を作るのがミッションだ。


 ケインの奴は騎兵と槍隊を率いて周辺を警戒して不在だ。周辺の10キロ四方を警戒中という状況だ。機動力に欠ける俺の鉄砲小隊が陣地作りをやらされるのは分かる。俺がケインでもそう命じる。だけど、やらされる方はやっぱり嫌だ。よって俺だけ異様に士気が低い。


「う~っ。体は泥だらけだし、仕事はキツイ。腰まで痛くなってきたぞ」

「隊長、戦闘でないだけまだマシですよ」

「そうですよ。死なないだけマシです。これ完成すれば終わりなんですよね。さっさと済ませて街へ帰りましょう」


 兵士どもがそう言って作業に熱心に乗り組む。なんと前向きな部下たちだ。


 確かにこのまま、敵がやってくる事がなければ、このミッションは達成だ。チョロいミッションだったことになる。


(だけど、俺は知っている。これはランクC。このまま終わるわけない)


「ゲロゲロ……。さすが主様。勘が冴えているでゲロな」

「ゲロ子、てめえ。作業が嫌で隠れていやがったな」

「ゲロ子は汚れるの嫌でゲロ。泥汚れでコスチュームが汚くなるでゲロ」


 俺はゲロ子を指で弾いて泥の上に落とそうとしたが、コイツひらりとかわしやがった。


 その時だ。国軍の工兵隊の隊長のところに斥候に出ていた兵士が報告をしている光景が目に入った。兵士は明らかに戦闘してきましたという風体だ。少々怪我をしている。応急手当でしばった包帯が血で赤く滲んでいる。


「敵部隊が接近しています。数は五百。威力偵察部隊とは思いますが、この陣地の破壊が目的だと思います」

「なんだと!」


 ヒゲをはやしたショパン王国軍士官のおっちゃんがそう叫ぶ。陣地作りを専門にしたベテランの士官だ。これまで作った陣地や橋は数知れず……いやいや、この際、端役のおっちゃんのことは語らなくていい。それよりもこのおっちゃんの俺に対する命令の方が聞き捨てならない。


「ということで、我が工兵隊は後方へ撤収する。君はここを死守したまえ」


「はあああああ?」

 とんでもないことになった。ケインがいない今、この陣地にいる上官はこの国軍大尉のおっちゃんである。上官の命令には従うようケインにも命じられていた。だけど、この命令は聞き捨てならない。何故って、イコール「死」だからだ。


「む、無理ですよ~。自分の小隊じゃ、五十人ですよ、五十人。五百の敵をどうやって倒すんですか」

「大丈夫だ。もうすぐケイン傭兵隊の砲兵小隊が到着する」

「いやいや、それはダメでしょう。援軍にもならない」


「まあ、頑張ってくれたまえ。我が軍は建築作業が主業務だ。戦う部隊ではないのだ。工兵隊、全員撤収だ。あとはケインの疾風の獅子の傭兵隊に任せる」

「ま、待ってくださいよ~」


 俺の叫びも無視かい。


「主様。困ったゲロが、やることあるでゲロ」


 工兵隊が撤退して呆然となる俺を見てゲロ子がいいことを言った。そうだ、ボーっとしてたら死ぬ。必ず死ぬ。やることはまずケインの本隊に知らせることだ。敵は五百だがケインがくれば互角である。兵数で互角ならプレーヤーキャラの部隊が強いに決まっている。SODとはそういうゲームだ。


「ケインの部隊が到着するのが早いか、こちらが全滅するのが早いかでゲロな」


 ゲロ子に言われて思い出した。こんなシナリオあったわ!

 

 疾風の如く引き返し、敵を撃破していくのだが、あと一歩で味方が全滅してゲームオーバーに何度なったことか。その度に、


「もう少し頑張れや、ボケ!」

 

 と悪態ついていた過去の俺。敵に囲まれケインの救援を今か今かと待っていた部隊のことなど省みたことはなかった。


「報いでゲロな……。主様。少しでも生き残れるよう部隊の配置に気を配るでゲロ」

「ぐああああっ……」


 俺は頭を抱えた。配置に気を配るっていっても、やれることは限られている。五十人の部下をスクウェアに配置する方陣しかない。かろうじて作った塹壕とレンガの塀の後ろに隠れて攻撃するしかない。幸いなことに砲兵小隊の援軍が早めにやってきた。大砲が三門設置される。右と左と正面に配置する。大砲を設置するところは早めにできていてよかった。

 だが、陣地の完成状況は30%ぐらいだ。陣地の防御力は全く期待できない。

(俺はここで三度目の死を迎えるのか~? いやだああああっ……)

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