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 まあ、難しい話は置いておいて、俺は主であるケインとショパン王国にある傭兵ギルドに来ている。ギルドというのはいわゆる組合。傭兵団はほぼ、この組合に加盟している。加盟した方がいろいろと便利だからだが、毎月、加盟金を取られるのと紹介してもらった仕事の報酬から10%を差し引かれる。それでもここへくれば仕事があり、報酬についてもきちんと保証されているのだ。メリットは大きい。


 このショパン王国の傭兵ギルド本店は首都のクロービス中心、商店が立ち並ぶ商業区画の真ん中にデーンと大きな建物を構えている。ピンはねする金が莫大らしく、どこの街へ行っても立派な建物である。表扉には2人の衛兵がおり、傭兵団の印であるエンブレムを確認する。これは傭兵ギルドに登録した傭兵団の団長のみに与えられるものだ。


 エンブレムは傭兵団事にデザインが違っており、ケインのエンブレムは吠える獅子の顔を象ったものだ。これはケインのオヤジの代から受け継いだものだ。俺がケインだったときはこれを持って軽く見せて扉をくぐったものだ。


 今はそれを持つケインの後ろに付いていくしかない。衛兵は顔見知りらしく、ケインの顔を見ただけでエンブレムの確認はしない。ただ、後ろの俺にはするどい目つきで睨んだ。


「ああ、こいつは最近雇った小隊長なのでよろしく」


 そうケインが言ってくれたので、俺は咎められなかったのだが入り慣れたギルドにこういう仕打ちを受けるとは……。ちょっと悲しくなった。

 

 中に入ると1階はただ広い空間に大きな掲示板が中央に置かれ、そこに依頼の紙が一面に貼られている。これは傭兵ランクEのものが受ける依頼だ。紙には仕事内容と依頼者名、報酬について書いてある。Eランクの場合は、戦闘だけでなく日常の作業も依頼としてある。これは弱小の傭兵団が命の危険なく、お金が稼げるようにという配慮だ。城の塀を直したり、橋をかける作業をしたりと仕事は多岐にわたる。ただ、こればかりやると傭兵隊ではなくて、単なる建設業者と変わらなくなるので士気が下がる。

 

 傭兵隊長はその辺のバランスを取りながら仕事を受けるのだ。但し、ケインの場合は既に傭兵ランクはDであった。これは彼の父親の築いた実績のおかげである。若造が起こした傭兵団は普通、Eから初めてDに上がるまで普通は早くて5.6年はかかる。下手するとずっとEということもある。それはこの傭兵ギルドの1階フロアを見れば分かる。結構なベテランの傭兵がランクE専用の掲示板を見ている。考えようによっては危険な仕事を選ぶよりも楽で安全な仕事でまったりと過ごしたい傭兵団もいる。規模が小さければ小さいなりにできる仕事は山ほどあるのだ。無理をする必要もない。

 

 新規募集を行わず、規模を拡大をしない傭兵隊はそのうち、平均年齢が上がり、報酬は高いが危険な仕事が能力的にはできなくなり、せっかくDランクやCランクになっても降格を申し出たり、下のランクの仕事を引き受けるしかなくなるのだ。1ランク下の仕事なら傭兵ギルドも紹介をしてくれるのだ。

 ランクDの傭兵団は掲示板からではなく、窓口で専用ファイルから依頼を選ぶことになる。さすがにDからは戦闘に関係ある依頼になる。その場合は報酬がグンと上がる。

このDランクに早く上がることがこのゲームの攻略のコツであるのだ。ケインの奴、最初からDランクということは効率がいい。

 

 ケインはDランク専用の窓口に座る。それは10箇所ほどあり、それぞれギルドの担当者が相手をしてくれる。俺はケインの後ろに直立不動で立って成り行きを見る。


窓口に現れた人物。


(だああああ~コイツかよ~)


 俺は見知った顔にため息をついた。窓口に来たのはナンナちゃんと言う女の子だ。赤髪のくせっ毛がすごく、もじゃもじゃ頭にギルドスタッフのベレー帽を載せている。背はちっちゃい。150cmあるかないか。これで一人前に働いているというのが違和感ある。現代で言えば、窓口に中学生か小学生がいるような違和感である。だが、一応公式データでは18歳で大人である。この辺はゲームでも倫理的配慮がされているのだ。


 とにかく、ナンナちゃんは18歳なのだ。


 で、なんで俺がため息をついたかというと、コイツはとんでもないうっかり者で大抵、ミスをして大迷惑をかけるドジっ娘なのだ。


 俺がケインの時には、そのドジも笑って済ませることができたし、それをネタにデートに誘って攻略するきっかけにすることもできた。このナンナちゃんは、攻略キャラの中では比較的ちょろい子なのだ。


 ちなみに攻略できる女子には頭の上にハートマークが現れる。その色は親密状態によって変わるのだ。会話やイベントを通して関わることで色は変わっていく。今のナンナちゃんはケインに対して青だ。これはちょっとだけ親しいという色だ。職務上で知り合った関係だからこんなものだろう。ついでに俺に対しては白だ。


(どーでもいい奴)らしい。

そりゃそうだ。ケインの従者だからなあ。

よし、コイツを恋に落としてやる!

俺にベタ惚れさせちゃる!

ちなみに恋に落とすと色は赤に変わる。


「主様……またエロいこと考えているでゲロな。思い出すでゲロ。あいつ、とんでもない女でゲロ」


ゲロ子に言われて思い出した。


(そうだ。コイツはドジっ子ナンナだった!)


 俺がケインだったとき、コイツの仕事上のうっかりで何度も危ない目にあった。それなのにこの女。


「あら~。ごめんなさい。ナンナ、間違えちゃったてへ!」


 と悪びれない。可愛い仕草にその時の俺はにへら~っと笑顔になって許してたわ~。


いやいや、許すのはおかしい。


 あの戦闘だって、小隊長も兵士もたくさん犠牲になった。それなのに笑顔で、


「てへ!」

っで許すなよ! 俺は俺にツッコミを入れる。


 まあ、ケインだった時はこいつを落としてベッドでヒイヒイ言わせてやったから、犠牲になった小隊長や兵士も浮かばれただろうが……。


(て! 浮かばれるわけねえ~。小隊長の立場になったら悔しいだけだ~)


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