誰しもに訪れる悟りの一時 -ケンジャ・タイム-
はふぅ………
あたしは、ビーム砲を撃つ為に転生したのかもしれないな……
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【機械仕掛の神】
所属:神、機械
ランク:S パワー:B スピード:B
ガード:S マジック:D 射程:約二メートル
「謎に包まれた存在。
古代の文献に名が残るのみで詳細な情報が少ないとされる。
実際は天より賜与される天恵による守護者。
人を模した頭部と胴体を持ち、四肢が様々な機械で構成された守護者。
戦闘能力は徒手格闘のみ。
オリハルコンで構成された機械である為に非常に頑強。
Sランクの防御能力は物理、魔法攻撃を受け付けない。」
これが普通の、いや本来の【機械仕掛の神】の性能と解説である。
【機械仕掛の神特殊改修型】
所属:神、スーパーロボット系、人間、混沌
ランク:SS パワー:S スピード:S
ガード:S マジック:S 射程:二十メートル
全高:180cm 重量:2t 最高速度:マッハ10
出力機関:神造魔導核
搭乗者若しくは搭載人格:神崎 真希波
本体名:リカルド・フォス・ユグドラシル
「輪廻神ティリーの手によって転生した異世界人「神崎 真希波」。
あくまでも天恵による守護者として扱われる特殊能力。
神崎 真希波の魂を従来の【機械仕掛の神】に搭載した結果派生した特殊能力。
全ての能力が向上し、より強力に発展した【機械仕掛の神】である。
自律思考型となり、搭載された魂によって発展系は変化するがこの特殊能力はそれが顕著。
頭髪や瞳の色は赤、表情は「無表情」か「戦いの愉悦に染まる神崎 真希波の笑み」の二つ。
機体各部に様々な改修が施されており、通常の【機械仕掛の神】とは一線を画す存在となっている。
特筆すべきは神崎 真希波の驚異的な反応速度と危機察知能力、戦闘センスであろう。
異世界の知識により追加された、或いはされる機能は段階を踏む毎に解放される。
しかし、あまりに高性能な為に本体との連携や意思疎通する能力が欠けており、また神崎本人にあまりそういった気遣いや心配りが無い為に半ば以上暴走している状態にある。」
………以上、マキナの解説である。
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「これは…なんと、異様な」
グランス王国国立学院特殊能力研究室。
研究室室長、アルベルト・マルベリックスは恐れ戦いていた。
演習行事の差中に覚醒し、特殊能力を発現させた学院一の落ちこぼれ、リカルド・フォス・ユグドラシル。
彼が特殊能力を顕現させるにあたって、その能力を知る必要があった。
彼の【機械仕掛の神】はトロールを瞬殺、学院有数の実力者ジュリア・チェス・プレインズの特殊能力【盤上の騎士団】を一蹴し、
遭遇すれば被害を出さずに逃れられない強敵死の行商をも圧倒、勘違いによって交戦した学院生諸共閃光を放って薙ぎ倒した。
この情報が真実ならば、とんでもない特殊能力だ。
モンスターや特殊能力を表すランクは六段階。
D…初級
C…下級
B…中級
A…上級
S…超級
SS…神級
である。
尚、能力を評価する場合は。
E(無し、不可能)<D(苦手分野)<C(普通)<B(得意分野)<A(天才的)<S(神業)
となる。
最早説明不要、手短に済まそう。
【機械仕掛の神】…いや、【機械仕掛の神特殊改修型】はヤバイ!!
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私の名前はジュリア・チェス・プレインズ。
プレインズ公爵家長女で、グランス王国国立学院一年一組。
私は今、恋をしている。
相手はリカルド・フォス・ユグドラシル。
学院一の劣等生とまで蔑まれる彼と、学院有数の実力者と評される私。
きっかけは単純だった。
一目惚れだったのかもしれない。
類稀な才能を持つエルフらしくない劣等生ぶりの所為で彼は一躍有名人になっていた。
私は生まれてすぐ特殊能力を発現させた天才児と持て囃されていた。
同じクラスになった彼は常に孤立していた。
無能と蔑まれ、周囲の輪に溶け込めない彼。
でも、彼は諦めなかった。
何度失敗しても立ち上がる彼の不屈に。
でも、小動物の様な弱々しさ、儚さ、脆さ……
胸がキュンと締め付けられて、愛しい気持ちが止まらなくなって。
とっても、守ってあげたくなるのだ。
母性の発露がどうとか、同情しているだけだとか周囲は言うが、全くもって的外れな意見だ。
私は、かの劣等生を、世界樹の守り手の一族、リカルド・フォス・ユグドラシルを愛している!
そんな時に、彼女が現れた。
【機械仕掛の神】、古代の文献にのみその名を記す者。
今まで謎に包まれていたその正体は天恵による守護者。
つまり、天より遣わされた神聖なる守護者。
今の今まで使用者が居なかったとすれば情報量の少なさにも説明はつく。
彼女はそんな存在を依り代として顕現した新たなる【機械仕掛の神】。
その髪は、瞳は血に染まった様な紅。
恐らく【機械仕掛の神】本来の無機質な表情を狂気に歪めて力を振るう。
彼女は鬼神、荒ぶる神なのだ。
闘争を喜び、望み、蹂躙する圧倒的な力を持ってして戦う彼の特殊能力は今や彼の全て。
彼が何も出来ない変わりに、きっと彼女は全ての道理をねじ曲げるだろう。
せめて、彼女の存在が彼を歪に歪めぬ事を祈る他、私に手は無いのだろうか?
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あわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわ。
僕らが学院に無事帰り着いた後、ジュリアさんの勧めで特殊能力研究室で僕の【機械仕掛の神】を調べて貰う事になった。
僕としても、何で自律した思考を持っているのか、なんで突然に発現したのかが凄く気になっていたからだ。
とんでもなかった。
室長曰く「この特殊能力は危険過ぎる、君のこの力が君や周囲に災厄を齎す存在と成らない様に注意したまえ」との事だった。
SS級特殊能力なんて……とんでもないよ!
僕には正直荷が重いと思う。
オマケに自由に操れないし、勝手に暴れ出すし。
あの時僕の手に現れた特殊能力はどうやら彼女に指示を与える為のものらしいけど、どうやって使えばいいのかがわからない!
死の行商を消し飛ばした後、みんなを余波だけで吹き散らした【機神閃光】。
あれの発動を許してしまったのは他でもない僕だ。
今なお僕の右手首に巻かれた腕輪の画面には何も写っていないけど、もしまた何かが出てきたなら………
僕が彼女をどんなに信じても、彼女が振るう力が誰かを傷つけることが今一番怖い。
【機神閃光】
腕部装甲の手首を変形させ、腕部装甲そのものを砲身として撃ち出す閃光の一撃。
出力機関である神造魔導核から
齎される無尽蔵のエネルギーに指向性を持たせて放たれる閃光は神敵を打ち滅ぼし薙ぎ払う神の裁き。
それを私利私欲の為ロマンの為に撃ち出すマキナこそ大罪人といえよう。