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力を望んだもの

[グランス王国国立魔導学院、学院長室]


「いやー…まさかですよ?まっさか赴任早々生徒とドンパチするなんて思わないですよフツー」

ニコニコと軽めに毒を吐く学院長ナイアルの前にはユグドラシル四姉弟が立っていた。


グランス王国国立魔導学院の敷地内で勃発した戦闘。【機械仕掛の神デウス・エクス・マキナ特殊改修型(カンザキカスタム)】の圧倒的パワーによって決着した冒険者チーム「森都防衛隊(YDF)」との戦いは苛烈を極めた。


観戦者の過半数が戦闘の余波で軽傷、一人が運悪く戦闘中に飛んで来た石で頭を強めに打った程度だ。

しかし、その規模は大きかった。


「学院設立史上最大規模の範囲に被害が及んだ今回の事項は当学院が大武闘大会特別期間に入ったとはいえ見逃し難い行為です…

と、いうわけで!大武闘大会特別期間中に限りリカルドくんの守護者(ガーディアン)さんは特別顧問に任命します!!」

「はぁ!?マジかよ…」


マキナは悲観した。

講師なんか柄じゃないし、教えられる言葉など持たない。

つまるところ、萎えていた。


「あー…無理だろ、あたしにゃ教師なんて崇高な仕事は合わねぇよ、大体が喧嘩至上主義者だから…」

「だからこそですよー!

貴女の圧倒的な強さ!貴女の見る世界がどんなものであるのかを皆さんに教えてあげて欲しいんです!」


ナイアルはガラになく興奮した様子でマキナの手を取り熱く語りだした。

しかも内容は学業ではなく強さ。

いわゆる喧嘩関係ならマキナの専門分野だ、話を聞かない訳にはいかないとマキナは姿勢を改めた。


「当学院の生徒は下は庶民から上は王族までが通う玉石混交、しかし身分に関係なく強さが尊ばれるのがこの国です。

国民の半数が副業で冒険者をやれるのがこの国なのです、グランス王国はこれからも強くあらねばなりません。

しかし、達人というものは弟子をとるより自己の研鑽に励む者が多いために国民一人あたりの強さはまだまだ中途半端、まだ上を目指せるのですよー」


その瞳は少年の容貌を持つナイアルらしい、しかしその姿に見合わぬ炎を宿していた。

マキナはチラリとリカルドを見て、再びナイアルを見た。


似ている。

姿形こそ、その思いの性質までも違うが。

ただ一点、力を望むその姿が似ていた。


「まぁ、いいぜ。

正直リカルドにも喧嘩の仕方を教えてやりたかったところだしよ、相手だの場所だのを確保しやすくていいや」

「おお!引き受けていただけるのですねー!」

「まぁ、こっちにも都合がいいからな」

「早速明日からお願いしますね、場所は闘技室で生徒は特別期間中なので自由参加の方針になりますがー」

「別に構いやしねぇさ、居なかったらリカルド扱いてりゃいいんだし」

「ま、マキナさん…どうか、お手柔らかにお願いします!」


話を終えるなりリカルドとマキナは学生寮に戻ると言ってさっさと帰ってしまった。

森都防衛隊(YDF)」の三人を残して。


「お、おのれ【機械仕掛の神デウス・エクス・マキナ】…問答無用で拙者たちを見限りよった…」

「ええっと…学院長?我々の処罰は…」


ギリギリと歯軋りして悔しがる醜態を晒すアインスを放っておいてツーヴァイがナイアルに問うた。

当然一番悪いのは先に仕掛けたアインスだが、乗っかったツーヴァイとドライアも同罪だ。

今回の仕事で得られる報酬が少なくなっても無理はない。

しかし、ツーヴァイの目の前にはは全く別の光景が広がっていた。


「あ、皆さんよくやってくれましたねー!お陰で大成功!マキナさんに負い目を感じさせてお願いを聞いてもらうなんてなっかなかおもいつきませんよードライアさん!」

「いえいえ、私はただアインスちゃんを焚き付けただけですので」


そこには裏切り者の姿があった。

「煉獄ポーション」ドライア・トライ・ユグドラシル。

幾度となくクエスト中に密約を交わしチームで一番利益を得る女がそこにあった。


「んなッ…!ドライア貴様ァーーーッ!!謀ったでゴザルなぁーーーー!!!」

「ごめんねーアインスちゃん、でも学院長直々にお声掛け頂いたから断れなくってぇ」

「嘘を吐くな嘘をーっ!貴様何を欲した!?拙者たちを騙くらかして何を欲したー!?」

「権力者とのパイプ」


アインス・オン・ユグドラシルは激怒した。

激怒した前衛職の全力のパンチを受けてドライア・トライ・ユグドラシルは吹っ飛んだ。

ツーヴァイ・バイ・ユグドラシルは力無く笑った。



#####



[グランス王国国立魔導学院闘技室]



翌日、闘技室には多数の生徒が集まっていた。


昨日の時点で決定したマキナの講師な話は今朝には学院全体に周知されていた。


「ここが闘技室な…なんだ、だだっ広いじゃねぇか」

「というかマキナさん、地平線が見えるんですけど……」


闘技室に入ったものがまず最初に驚くのはその広大な空間である。

それは誰の目にも明らかな異常であり、そしてマキナにとって好都合な事実であった。


「魔法使用の痕跡を確認…どうやら部屋全体が異空間、つまり【不思議な宝物庫(アイテムボックス)】の様になっているようです」

「ええと、【不思議な宝物庫(アイテムボックス)】は術者の能力や熟練度に応じて収納可能な種類と数が増えるから…まさか、伝説の賢者くらいじゃないとこんな魔法を行使できる訳ないよ」


ディアの冷静な情報収集とリカルドの分析によって得られた結果はにわかに信じがたいものだ。

しかしそんな事は関係ないとばかりにマキナは集まった生徒達を見据えた。


「うーっし、さっさと始めるとしようぜ!

自己紹介しとくとあたしが今日から戦い方の講師をする事になった【機械仕掛の神デウス・エクス・マキナ特殊改修型(カンザキカスタム)】だ。

理論だのなんだの細かい事は言わねぇ、喧嘩は慣れだ、感覚で覚えろ!」


言い切った後、生徒たちを見渡す。

前列に居るジュリア、ナナイ、メシエの三人は当たり前として。

見慣れた仲間達の姿がそこにあった。


(おっ、恵子に城田に東条兄妹、改まで…みんなして編入してやがったのか)


学院に入学する者は年齢を問わず一学年から始まる。

そのため学院の年齢層はバラけているし、校風からいって多種多様な人材が集う。

それ故に異世界から来た彼らも例外なく、問題なく学院に入学できたのだ。


「難しい事は言わねぇ!まずはてめーらの実力を見せて貰う!

……実戦だ!合図したらあたしかディアに好きにかかって来い!」


あまりに突然な内容に生徒たちはざわめいた。

しかしそれは当たり前といえば当たり前だ。

尋常ならざる力を見せ付けたマキナと謎に包まれたディアの戦闘能力。


無闇に飛び出せば造作もなく跳ね除けられるのがオチだろう。

しかし、臆していてはここに来た意味が無い。


マキナがリカルドの首を掴んでディアに向かって放り投げるとディアが肩車の要領でリカルドを載せる。


「うわわっ!ちょっとやめてくださいよマキナさん!」

「任務了解、覚悟はよろしいですか我が契約者(マイマスター)?しっかり掴まってないと落ちますので」


気楽そうに構えるマキナと違って、ディアはしっかりとした構えを取る。


「じゃ、ちゃっちゃとやるぜ…始めっ!」




「【爆炎と迫撃の要塞(ブラストギアーズ)】装着」

「来い!【戦場の運命剣(デスティニーソード)】!」

「【盤上の騎士団(チェス・ナイツ)】!前進せよ【八人歩兵(エイトポーン)】!」

「【奇妙不可思議な隻腕(ストレンジアーム)】【機神の隻腕(マシンアーム)】!」

「叩き潰す…【重力の鎧(アームドグラビティ)】!」

「喧嘩上等!【鋼の翼持つ者(メタルハルピュイア)】!」

「いっきまーす!【勇壮なる騎士(シグムンド)】!」

「斬り捨てる!【飛燕の騎士(セイバースパロウ)】!」


生徒たちの多くは一斉にディアに襲いかかる。

勝ち敗けの可能性がまだあるからだ。

しかし、一部のマキナをよく知る生徒たちは皆、臆する事なくマキナに襲いかかった。


「はははっ!粋のいい奴らが釣れやがった!ディア!てめーも楽しんでおけよ!」

「マキナ様!?」


「運命の剣を引き当てよ!【八人歩兵(エイトポーン)】!」


ジュリアの生み出した石像の戦士達が辺り一面に突き刺さる剣の概念を引き抜くたび、次々と剣の概念がハッキリしていく。


「これは封神剣…!成る程、神性を封じられれば幾ら【機械仕掛の神デウス・エクス・マキナ】でも!」

「おおっと!?持ち主(ナナイ)と違って引きの強い奴!」

「騎士を侮辱するか!!万死に値する!」


八人歩兵(エイトポーン)】の内一体が封神剣を引き抜き、マキナに襲いかかる。

しかしそれを見逃す程ディアは甘い悪魔ではない。


「【爆炎と迫撃の要塞(ブラストギアーズ)】ミサイルハッチ展開!一斉発射!撃てぇ!」


ディアが身に纏う装甲の各部が展開され、各種ミサイルが周囲に発射される。

当然、爆発と爆風にさらされた生徒は少なくない上、岩石の身体を持つ【八人歩兵(エイトポーン)】が三体バラバラに吹き飛んだ。


「ぬわぁ!?」

「なんだ!?爆発した!?火属性の魔法なのか!?」

「散開しろ!爆発に巻き込まれたら一網打尽だぞ!」


学生たちも馬鹿ではない。

戦いの中でどう動くべきか、ここに居るものの多くはそれを知る者だ。

ディアに対して距離をとりながらも警戒を絶やさぬのは先程のミサイルがどれ程の射程を持つのか測りかねているからだ。


尤も、【爆炎と迫撃の要塞(ブラストギアーズ)】に対してその対処は正確ではない。


「【爆炎と迫撃の要塞(ブラストギアーズ)】腕部ガトリング砲展開、掃射開始!」


二つのガトリング砲が激しく回転し数多の弾丸と薬莢を吐き出す。

少ししただけで悪夢の様な惨状が生み出された。

当然なのかもしれない。

銃火器など、あまり一般的な代物ではないのだ。

魔力を込めて撃ち出す様な銃はあれど、形が違いすぎるのだから。


「さぁて…マキナ様も楽しめとの事ですし、悪魔らしく愉しませて頂きましょう!」


神の身体(かわ)を被ってなお、人は人らしく。

ならば、神の信徒であろうとも悪魔は悪魔らしく。


残虐に、残酷に、非道に、非情に。


「我が名は【機械仕掛の悪魔ディアボルス・エクス・マキナ特殊改修型(ディアカンザキ)】!

我が神ほど慈悲深く終わらせてはやらんぞ!」


魂を焼く砲火が、重く、重く響いた。


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