私の最強の友達 -マイティベストフレンズ-
「【機神閃光】!」
世界を蹂躙する閃光が輝き放ち、神の腕より解き放たれる。
「うわわわっ!?【偽の万有引力】!」
ドライアの魔法が作り出した囮が破壊の閃光を引き寄せ、本来の狙いから逸れて炸裂する。
「へぇ!ちったぁやるじゃねぇーのよ!」
「姉貴ぃ!ドライア!あの閃光威力やベーぞ!」
「拙者におまかせーっ!」
「ごちゃごちゃうるせぇぜ!【飛翔鉄拳】!!」
左腕の装甲が火を吹き、アインスに直撃する瞬間鉄拳に手にした刀を添える。
「ほうれ受け流しぃ!」
横合いから加わった力が鉄拳の軌道を逸らし、更にマキナの腕に繋がるワイヤーに斬りかかる。
あまりにも硬質な音、手応え、そして嫌な感触にアインスは刀を手に退く。
「んなっ!?拙者の刀が面白くない事に!?」
「逆に芸術的になってよかったんじゃねぇのか?そぅら!」
ワイヤーを斬り裂くはずの刀は逆にワイヤーに削り取られていた。
更にマキナが腕を振るう事でワイヤー諸共、鉄拳が鞭のようにしなり襲いかかる。
「あぶなっ!」
「姉貴!【風刃の鏃】!【群龍襲来】!」
マキナの猛攻をやり過ごすアインスを助けるべくツーヴァイが矢を放つ。
【風刃の鏃】で剣術の【風龍剣】の如く風の刃を矢に纏わせ、それを乱れ打つ。
【群龍襲来】は数多の矢を放ち、それを風の魔法で軌道を操り敵に全て当てる技。
当然、マキナの装甲に傷をつけるような技ではない。
「ちっ!見さらせ新技!【機神障壁】!」
「マキナ様!?」
腕を元に戻し、マキナは自ら迎撃した。
マキナの神造魔導核が唸り、全身から放出された魔力が全ての矢を粉砕する。
「手ぇ出すなよディア!一対三なんざ久しぶりだ!」
『いいかディア声に出すなよ!あたし一人でもリカルドを守れなきゃいけねぇ時が来る!お前が居るのに甘えてちゃいけねぇんだよ!』
「まっ…マキナ様!」
ツーヴァイはその通信を用いたやり取りを感知した訳ではない。
だが、この戦いに【機械仕掛の悪魔《ディアボルス・エクス・マキナ》特殊改修型】が参加しない事を裏の意味まで感じ取った。
(成る程ね…あたしらを相手にして少ない実戦経験を積んでおこうって訳だ。
……授業料は高くつくぜ!)
「姉貴ぃ!オズボーンの出番だ!」
「ええ!?せ、拙者そこまでガチになるつもりはサラサラ…」
「構えろよドライア!フォーメーションブレイド!」
「了解よツーヴァイちゃん!」
「うえぇっ!?それ拙者がメチャクチャ大変になるヤツ!」
「問答無用!最初に姉貴が仕掛けたんじゃねぇか!」
文句を言いながらも刀を手にしたアインスは肩を落として、そして構える。
「はぁー…【私の最強の友達】!出でよ!我が最強のしもべ!オズボーン!」
「ダァーレガ!オ前ノシモベダァー!!」
呼びかけに応えるように地面が揺れ、ひび割れて地中から新たな影が現れる。
「来たかオズボーン!」
「来タカ、ジャナイ!毎度毎度オ前ハ人ヲシモベ扱イシヤガッテ!
イッタイ何度言ッタラ訂正スルンダ!?」
「いーじゃないのさ、そう言った方がサマになるんだし?」
地中から出てきて怒鳴り散らすその姿。
見た事はない、だがマキナには似た様な姿の敵を消し飛ばした覚えがあった。
「そいつは…思い出したぞ、「死の行商」って悪魔だな」
「チイトバカシ違ウナ、俺ノ名ハオズボーン、「死ノ王家御用商人」ダ!」
「「死の王家御用商人」って…希少個体!?マキナさん!そいつは強いよ!」
「ハッ!上等だ!こちとら人間殴るにゃ力が強過ぎっからなぁ!」
拳を打ち合わせ、獰猛な笑みを浮かべてマキナは駆け出した。
「うわわっ!?オズボーン!早くなんか出せでゴザル!拙者の刀じゃもう無理!」
「耳元デ騒グナ!【不思議な宝物庫】!「斬巌刀「大地割り」」二本セットダ!」
オズボーンが虚空から二つの刀を取り出しアインスがそれを受け取る。
「うっしゃぁ!エヴェ流戦闘術【双竜旋風剣】!!」
「【機神閃光拳】!!」
風の魔力を纏った二つの刀が嵐の様な威力を生む。
対してマキナは破滅の閃光を腕に込める事で爆発的な威力を持たせた両腕から拳を放つ。
激しい閃光を秘めた拳と嵐を纏う刀がぶつかり合い、マキナの右拳が弾け飛ぶ。
尋常ではない破壊を撒き散らした拳はさながら爆撃。
技をもってこれを受けたアインスはかなりの衝撃と爆風を受けて吹っ飛んだ。
「-風が集い穢れなき少女が姿を現わす、願わくは我らに汝の加護を与えんことを!-【妖精の加護】!」
風が優しくアインスを包み込み、衝撃も無く地に降ろす。
中級風属性補助魔法を発動させたドライアは目線でツーヴァイに合図を出した。
未だマキナはぶつかり合いで生じた土煙の中に居る。
ツーヴァイは魔力を集めて必殺の一撃を放つ。
「夜天に輝く美しさを、闇を照らす慈愛の光を、全てを狂わす罪深き光を!全てをこの一矢にのせよう。夜を照らす汝の名を宿す矢をここに!エヴェ流戦闘術奥義!煌めけ【月と狩猟の女神】!」
光を収束させた魔法の矢がツーヴァイの弓に番えられ、強く引き絞られた矢は瞬く間にマキナへと放たれた。
本来、光属性のエヴェ流戦闘術奥義は【天照大御神】という最大級の魔法剣である。
しかし、鏃に載せて放つのではなく、光の矢を構築して放つアレンジを加えている。
魔法弓として完成させたツーヴァイの必殺技は奥義と認めるに充分な技であった。
「【機神閃光鉄拳】!」
土煙を突き破り飛び出した破滅の閃光を溜め込んだ【飛翔鉄拳】。
相殺したにも関わらず余波の威力でアインスをノックアウトする機神の恐るべき一撃。
それが今、飛んできているのだ。
光の矢と光の拳がぶつかり合い、弾ける。
まともに喰らえば影が地に焼きつきかねない閃光を秘めた拳は光の矢と激突しその威力を落としたのだろう。
しかし、それでも尚常識はずれな威力は残されている。
ツーヴァイとドライアは防御の上から衝撃に吹き飛ばされてしまった。
「ぐっ…ぐふ……」
「つ、ツーヴァイちゃん…あたしもー、ムリ……」
「ドライア!?…気絶しちまったか」
しかしまぁ、引き分けとなりゃ上等だ。
ツーヴァイはそう思った。
仮にも相手はSSランクの守護者型特殊能力。
規格外の相手に対して三人で引き分けなら悪くない。
そう思っていた。
思いたかったのだ。
「ぐぬぬぬ……や、ヤバすぎる相手でゴザルな」
「ゲヒャヒャヒャ!相当ノサレテヤガッタナ?」
「御託はいいから……さっさと「腕」出してくれでゴザル」
「あ、姉貴?何を言って…」
「ツーヴァイ!無理すんなでゴザル!リカルドの守護者はまだ動けるでゴザル!」
驚愕、嘘だと信じたい一心で土煙を見る。
影が見え、煙が揺れたと思う頃にはその姿が露わとなっていた。
両腕の装甲を失ってはいるものの、たいした被害はない。
言うなれば、右腕から右半身までに小さな傷が無数につき、煤けている。
「マキナ様!傷が!」
「騒ぐんじゃねぇ!傷がついたくらいなんだってんだ!」
マキナ本人にしてみれば大したことではない。
しかしディアにとって、いやリカルドにとっても大問題だ。
ガードSの評価を受ける【機械仕掛の神】系統の装甲に傷がつくのは初めての事だ。
同じくパワーS、マジックS評価の【機械仕掛の神《デウス・エクス・マキナ》特殊改修型】の一撃を自爆気味に受けたのだから仕方の無いことかもしれないが、そうではない。
威力がパワーSの評価に達する、個人もしくは力を合わせた合体技ならば、技を反射するなりして利用すればマキナを倒せる。
そういう証明がされてしまったのだ。
マキナは胸のあたりから光を集めて剣を形成する。
【偉大なる破壊者】だ。
「ふん…やっぱ腕部装甲がねぇと握りづれーな…」
マキナにとって【偉大なる破壊者《グレイトデストロイヤー》】は使いやすい剣だ。
刀身の長さから形状まで自在に変化できる。
だが初期状態の大剣は腕部装甲がある前提で作られている。
当然柄も長く、刀身もやたらでかいのだ。
「変化…そういや、こーいうのは試してなかったなぁ!【装甲換装】!」
閃きと思い付きのまま、マキナは新たな策を講じた。
光に包まれ、マキナの装甲が分解され新たに再構築されていく。
鋼の四肢にセーラー服、靡く御髪と鋭い双眼は紅から茶に変わる。
「【在りし日への情景】!」
かつてその姿に誰もが目を惹かれた。
かつてその勇に誰もが心を惹かれた。
そして再び、誰もがその勇姿を瞳に焼き付けるだろう。
「喧嘩マシーン」神崎 真希波。
手に握るは一振りの太刀。
死の前日、親切なオッサンから貰ったと言って舎弟の鳥井 恵子に自慢していた太刀だ。
その形を模った【偉大なる破壊者】だ。
「んな…一体、何が起きたのでゴザルか!?特殊能力が、人間に!?」
「混乱してるヒマねーぞオイ!」
真希波の姿をしたマキナが大上段から太刀を思いっきり振り下ろす。
それを受け流すつもりで受けたアインスが吹っ飛んだ。
「うげっ!?相変わらずの馬鹿力でゴザル!!」
「ハッ!力押しだけじゃすまさねぇよ!」
素早くアインスの懐に飛び込んだマキナの鋭い膝蹴りがアインスを上に浮き上がらせ、そこから更に脇腹から蹴っ飛ばす。
「ぐえっ!!ば、かな!?速」
「トロいのはてめーだ!」
地面に転がり伏せるアインス目掛けて【鉄筋コンクリート】を振りかぶる。
「がっ!!?」
かろうじて直撃を避ける。
だが壮絶な勢いで叩きつけられた【鉄筋コンクリート】による衝撃は凄まじく、またしてもアインスは地を転がった。
その光景に誰もが閉口した。
追い詰めたというべきではなかった。
しかし、あの機神の両腕の装甲を消耗させ、傷を僅かばかりでもつけた矢先にこれだ。
傷と一緒に火がついてしまったのだ。
どうしようもない破壊の権化、【機械仕掛の神特殊改修型】が見せた新たな姿。
【在りし日への情景】。
その意味するところはわからずとも、繰り出された暴威には少しの翳りも見えない。
あまりにも遠い高みにある人智を超えた力を前に、誰もが恐れをなした。




