機神快進撃
[不死の大樹海、エルフの里]
ドラゴンが降り立ち、一行はエルフの隠れ里に到着していた。
「ぬはははははは!!貴重な体験であった!」
「父上、流石に恥ずかしいので高笑いはやめて頂ければなと」
「リカルド君!娘が反抗期になってしまったよ」
「いや、僕に振られてもですね……
こほん、改めましてようこそ!エルフの里、森林都市ユグドラシルシティへ!」
マキナから見てエルフの里というものはかなりイメージ通りの光景だった。
ありとあらゆる建物が樹木であり、その全てが魔法によってエルフの住処へと形を変えている。
ただ、高層ビル群に匹敵する樹木が並び立ち、多数のエルフが行き交う大交差点があるとは思わなかったが。
「渋谷か新宿を思い出しやがるな…これは」
「凄いっすね姐御!」
「エルフって意外とシティ派なんですか?」
エルフ達は王都に住む人間よりも高度な文明を作り上げて生活していた。
ファンタジックな樹木の建物と緻密な都市計画によって作り出されたエルフの森林都市は自然環境と共生しながら高度な文明を維持していた。
「まずは長老……いえ、族長の所へ向かいましょう。
積もる話もありますしね」
「リカルド様、護衛は如何なさいましょう?」
「いえ、自衛の手段を得た今、護衛に人数を割く必要性はありません」
「しかし、次期族長であるリカルド様を蔑ろにする様な真似は出来ません!」
「すいません、これは私の我儘です。
族長、ひいては民衆に向けてのアピールがしたいだけなのです。
もう護られてばかりの頼りない存在では無いと証明したいのです」
リカルドの強い意思を感じ取ったのか、エルフの護衛達は深い礼を見せた後、ドラゴンに乗って去っていった。
リカルドは深く溜息を吐いた後、先程までの毅然とした態度が嘘の様に腑抜けた様子になった。
「はぁ〜緊張しました……」
「まだ自衛出来るって程強くもねー癖してよく取り繕えたな」
「守護者は契約者の特殊能力ですから、契約者の自衛の手段と言えるのですが。
自我を持つ我々はどちらかと言うと護衛そのものですからねぇ」
「あう〜、それを言わないでくださいよー」
リカルドを弄りながらマキナとディアは笑う。
「じゃあよ、ちょっくらひと暴れしようじゃねぇか」
「暴れる以外は賛成です。
我らが暴威、都会暮らしの森林種族共に見せつけてくれましょう」
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エルフが誇る大都会、不死の樹海の奥地の森林都市。
その名をユグドラシルシティ。
樹木や自然環境、生命を司る「自然属性」の魔法を使い成長の仕方を操作する事により樹々は住宅や商店などの住居・施設へと姿を変え、
森林としての役割をそのままに大樹海の一部を高層ビル群を持つ大都会へと変貌させた。
人間よりも遥かに長命で種族全体を通して貪欲かつ旺盛な知識欲を持つエルフ達は「暴虐王」フドウ・アキラ・グランスの持つ知識を吸収し、代価として不死の大樹海を管轄するという役目を得た。
今ではエルフ達は科学と魔術の融合を果たした森林都市の中で独自の社会を形成し、その生を謳歌していた。
芝生の歩道と石造りの品格すら感じる道路。
路面から浮いた乗り物でエルフ達は優雅にドライブしている。
そんな中、一際目立つ浮遊魔導車があった。
そこに乗るのは三人のエルフ、皆一様に美形なのだが独特な共通点と雰囲気を持っていた。
金髪碧眼の三人姉妹と思しきエルフ達の中でハンドルを握るポニーテールのエルフが何かを察知した。
「ムムッ?弟センサーに感あり」
「え、リカルド帰って来てんの?」
後部座席のツインテールと大きな三つ編みを肩にかけた二人のエルフがそれぞれに反応する。
「そういえば、お爺様が迎えの者を向かわせていましたね…」
「ねーちゃんねーちゃん!リカルドの位置わかんないの?会いに行こうよ!」
「慌てなさんな!拙者の弟センサーに不可能は無い!」
その瞬間、クルマの対向車線を二つの影が過ぎた。
空を舞う白き機神と地を賭ける黒き魔機。
【機械仕掛の神特殊改修型】と【機械仕掛の悪魔特殊改修型】。
ディアの肩に担がれる、次期族長最有力候補ーーー
「弟キターーッ!!」
見事なまでのドリフトでUターンを決めたポニーテールのエルフ、長女のアインス・オン・ユグドラシル。
「おおっと!」
「きゃっ!」
急激なUターンによるGに対応しバランスをとるツインテールのエルフ、次女のツーヴァイ・バイ・ユグドラシル。
かたやGに対応し切れずバランスを崩すもツーヴァイにフォローを受け事無きを得る三つ編みのエルフ、三女のドライア・トライ・ユグドラシル。
「ねーちゃん!今の危ないって!」
「喝!軟弱者どもめ!拙者の弟愛について来られぬとは言わせないのでゴザルーッ!」
リカルド・フォス・ユグドラシルの三人の姉、アインス、ツーヴァイ、ドライア。
三人の腕に巻かれた首に巻かれた緑のスカーフはリカルドからの贈り物。
バラバラな姉妹をまとめあげるリカルドへの愛を原動力とするかの如く、
浮遊魔導車はリカルド、マキナ、ディアを追走する。
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【機神疾駆】。
背中に生じた鋼の翼を広げ天空を舞い、雲海を駆ける機神の飛翔。
【侵略と踏破の脚甲】。
強固な装甲にキャタピラを備えた重装甲高速機動を可能とする兵装。
全身に火器を積載させたような状態であっても素晴らしい機動性とタフな路面適応能力を発揮する逸品だ。
疾走する二つの機影は公道を行く。
よく整備された路面はキャタピラを転がすのには最適だ。
(この速度であれば、実戦でも行けますかね)
現在の速度は時速50/km。
最高飛行速度マッハ10を誇るモンスターマシンであるマキナにとってはピクニックに等しい速度だが、
生身の人間を背負ったディアにしてみれば丁度いい速度だ。
ディアも最高時速500/kmを出せはするが、そんなものは過剰だ。
生身の人間を本体とし、自らの出現射程は1m。
マキナの出現射程は20m、とくれば自らの担当は本体の防衛・輸送なのだ。
ディアの信奉するマキナはその尋常ならざるステータスを活かして突撃する。
あらゆる戦術をも可能とする究極の汎用性を持ち、しかしその性格故に突撃する。
その活躍は正に一騎当千、唯一無二の戦いを繰り広げる。
ならば、神に悪魔が力を捧げれば二騎当万であろう。
気持ちよさげに飛行するマキナを見て、ディアは満足そうに笑う。
そしてリカルドはディアに担がれたまま、迫る車両を発見した。
「ウォォォーー!!弟ウォォォー!!」
「うわっ!!だ、大ねぇさま!」
「ぐふぅっ!!キュン死しちゃうっ!でも負けない!弟を抱きしめるまで、拙者氏ねない!」
口から血を吐きながら追走する浮遊魔導車の運転手アインスを見て、マキナとディアは顔をしかめる。
「変態か…喧嘩相手にゃ持ってこいだがリカルドの身内……チッ!」
「マキナ様のケンカニウム補充はともかくとして、鬱陶しい…
契約者の御実家まで寄り道ついでの都市観光を邪魔されたくはありませんね」
そう、そうなのだ。
今リカルド一行は二手に分かれている。
ジュリア率いる族長宅直行組とマキナ率いる都市観光組。
リカルドの道案内で確実なルートを辿り、迂遠ながらも族長宅に向かうお気楽な寄り道。
それを追走するリカルドの身内。
「めんどくせぇー!このままリカルドの実家まで特攻すっか!」
「え、ちょっと待って特攻!?」
「ディア!ドッキングの仕方は任せる!」
「了解!変形!からの合体!」
リカルドを背中に固定し、両手足を変形させたディアが大型バックパックに変形する。
そしてリカルドを固定したままマキナの背部ウィング【機神疾駆】と入れ替わるように合体、
更に分離変形した【機神疾駆】が大型バックパックと化したディアに合体する。
「「【機械仕掛の神・悪魔の棺桶】!」」
この瞬間、【機械仕掛の神特殊改修型】は全ての枷から解き放たれる。
脆弱な本体であるリカルドの耐久性、そして破格ともいえる20mの出現射程でも足りない高過ぎる機体出力。
それが、【機械仕掛の悪魔特殊改修型】が変形した【悪魔の棺桶】によって全て解消される。
Sランクの防御能力を持つ【悪魔の棺桶】に護られた本体はもはや無敵。
自らと一体化した事により出現射程の問題も問題にはならなくなった。
マッハ10の史上最強の神が解き放たれた。




