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機神式特訓法 -マキナトレーニング-

[不死の大樹海、白少女の聖域]



小鳥がさえずり、樹々が揺れる。


花咲く湖畔のそば、白い少女が彼方を見つめる。



人の悪意が集まり、花開こうとしている。

邪神の企み通りに結実せんとしている。



真祖邪神オメガディアス。

創造神アルファディオスの双子の弟たる神。


破壊と悪を司る邪神。

配下に多数の悪魔を抱える悪の総本山。



人の悪意を煽り立て世界を混乱に陥れる事を楽しむ悪。



白い少女は俯き、待つ。



#####



[小鬼の平原]



剛腕が唸りをあげ、風を切り裂き飛んでいく。



「【飛翔鉄拳(ロケットパンチ)】!」



トロールの頭が吹き飛び、支配を失った身体が崩れ落ちる。



「【偉大なる破壊者グレイトデストロイヤー】!」



鉄塊の如き巨大さで現界した剣が地面に叩きつけられる。

地を揺らし、五体のゴブリンが形を失った。



「【破壊の台風(デストロイタイフーン)】!!」



叩きつけた【偉大なる破壊者グレイトデストロイヤー】を手に凄まじい勢いで回転する。


あっという間に七体のホブゴブリンが肉片に変わった。


その姿を一同は少し離れた位置で見ている。



「ぬはははははははは!!圧倒的ではないかっ!

マキナ殿が居ればゴブリンの繁殖期も楽そうだのぅ!!」

「わ、私とやりあった時より確実に、強いですね…」



マキナの戦いぶりを観戦してライゾウは笑い、ジュリアは引きつった笑みを浮かべている。



「ば、万死……あんな一撃、貰ったら万死に値してしまう……」

「ナナイ〜?大丈夫〜?」



実際に戦ったからこそわかる危険性。

あの時こんな技を喰らったら死んでいただろう。

そういう威力を持つ技だ。

少なくともマキナの理想たるロボット向きの威力である。



「どうだリカルドー!?なんかわかるかー!?」

「わかりませーーん!!」



マキナの背中にはリカルドがロープで括り付けられていた。

全ては教育である。


喧嘩の仕方は場数が教えてくれる。

喧嘩の仕方は修羅場が教えてくれる。


だからマキナの背中に括り付けて体感させてみよう。


暴論である、極論である。


でも事実だ、リカルドは泣いていい。



「真希波……やはり、滅茶苦茶だ」

「真希波お姉ちゃんらしくて良いと思うなぁ」

「良くはない……俺たちがどれだけ苦労してこの平原を抜けたかを忘れたのか?

それをいとも容易く……泣けてくるぜ」



刹那はこの状況……戦闘をマキナに任せっきりになっている現状を嘆いていた。



「まったく情けないねぇ刹那!姐御に続くんだよ!」



鋼の翼をはためかせ恵子が飛んだ。



「うおっしゃぁー!姐御っ!助太刀するぜぃっ!」

「なるほど…ケイコさん達が戦えるというのは特殊能力(アビリティ)持ちだったからなんだな」



ジュリアが納得していると、ディアが「いけません」と口を挟んだ。



「あの特殊能力(アビリティ)は【名無しの能力(ネームレスアビリティ)】、つまり発動の為の名が無い状態で使用されています。

消耗も負担も大きく、安定性に欠ける状態です」

「あー、ディア?それってマズイのかい?」

「マズイです、既にケイコさんは翼を維持できていません!」



ケイコは自由落下しながらゴブリンに突撃し、徒手空拳で戦っていく。



「ジュリアさん!私から離れないでくださいね!

マキナ様!ケイコさんを拾って離脱してください!」



黒い粒子がディアの腕に集まり形を成す。

それは黒い砲塔、機械の悪魔が造りし悪意の一撃。



「【殺戮と混沌の砲火(デモンズクラスター)】!」



ミサイルが射出されて爆発。

ミサイルから飛び出した小型の爆弾がばら撒かれ余すことなく爆発する。



「あぶねーもん知ってるんだな!」

「貴女様の信奉者であり、悪魔ですからっ!」



悪魔の砲塔が死を撒き散らし、平原の魔物達は討ち払われた。



#####



「皆さんの特殊能力(アビリティ)を見せて下さい」



珍しく強気な口調でディアは言った。



「このままではマキナ様の足手纏いになりかねません!」

「まぁそうキレるなよディア。

負けても生きてりゃ次がある、失敗は成功のもとだ。

……要はコイツらの特殊能力(アビリティ)が名無しの権兵衛のままじゃままならねぇってだけじゃねぇか、簡単に済むぜ」



マキナは荒ぶるディアを抑え、改たちに向き直る。



「さぁて?聞いたとおりだ!さっさと名前をつけやがれ!」

「急には思いつかん、時間がいる」

「姐御……あたし、ネーミング自信ないっす」

「なっさけないなぁ二人とも!私はもう思いついちゃった!」

「美奈は頭の回転が早いな……悪いが俺にも力を貸してくれ」



四者四様…否。

1:3の割合で反応が別れる中、改は一人違う行動に出た。



「出ろよ…っ!【奇妙不可思議な隻腕(ストレンジアーム)】!【機神の隻腕(マシンアーム)】!」



改の右腕がまるでマキナの様な装甲に変わる。



「おおっ!出来た!」

「みなさんお分かり頂けましたか?あれでいいのです。

朧げな力に、理に名を与えることで特殊能力(アビリティ)は具現化します。

ただそうあれと願って名を与えるだけでも、力を望んで名を与えてもいいのです」



そう言われて一同はうつむき考え込む。

やがて考えをまとめた者から自らの力を示した。



「【勇壮なる騎士(シグムンド)】!」

「【重力の鎧(アームドグラビティ)】!」

「【鋼の翼持つ者(メタルハルピュイア)】!」

「【飛燕の剣聖(セイバースパロウ)】!」



狼の意匠を持つ鎧を纏った騎士。

滅紫の鎧、鋼の翼を広げた鳥人。

蒼く、翼を持つ剣士。


二体の守護者(ガーディアン)が顕現し、二人の力は鎧となった。



「お?お?おお?強そうじゃん何それカッコよくね?喧嘩しようぜ?」

「相変わらず好戦的過ぎんだろ姉貴…」

「姐御らしーや、あたいは賛成だよ」

「俺もだ、この世界に生きるなら必須技能だろうしな」



血は争えぬものか、それとも力を手にしたゆえの興奮か、好奇心か。

そんな不良達を尻目にリカルドはふいに自らの故郷の方向を見た。



「あ、あれは…」

「リカルド様?」

「見てよ、迎えが来たみたい」



リカルドの声に誰もが同じ方向を見た。


空に影が見える。

鳥のようだが、違う。


翼を広げ、(ドラゴン)が空を飛んでいる。

その現実味の無い光景に一同は息を呑んだ。



「なんだあれ!ドラゴン!?」

「ぬはははは!ドラゴンに乗って出迎えという訳であるか!剛毅よな!」

「リカルド、エルフ族にも竜騎士がいるのですか?」

竜騎士(ドラゴンナイト)と言うよりは竜騎手(ドラゴンライダー)ですね。

騎乗した状態から弓を射る方が得意ですので」



みるみるうちにドラゴンの影は近づきその姿を露わにする。


翡翠のような色をした鱗を持つ美しいドラゴンに乗って、数人のエルフが降り立った。



「リカルド様!只今御迎えに参りました!」

「ありがとうございます」

「其方の方々は?」

「御客人です、さあ皆さん乗ってください!里までひとっ飛びですよ!」



意気揚々とドラゴンに乗る一同を尻目に、マキナとディアは通信回線でこっそりおしゃべりをしていた。



『見たかよディア、あのリカルドがあんなイキイキしてるぜ』

『マキナ様、しかも契約者(マスター)里の仲間から様付けで呼ばれてましたよ』

『御宅訪問ってワケだな』

『ええ、少し……いえ、かなり楽しみです』



神と悪魔を力とする少年のまだ見ぬ一面に期待しながら、一行はエルフの里へと飛び立った。

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