機神改造 -マキナカスタマイズ-
グランス学園の決闘室が吹き飛んだ翌日。
ナナイ・マテアルとメシエ・ファクトの両名はジュリア・チェス・プレインズの厳重注意を受けた。
リカルドはお咎めなしである。
ホッと胸をなでおろす結果となったリカルドだが、厄介な人物に目をつけられてしまった。
真島 鈴。
【機械仕掛の神特殊改修型】に匹敵する人型兵器デュオクロスを相方とするマッドな中等科三年生。
彼女とデュオクロスも特殊能力を持つグランス学園の生徒だ。
「先輩と知り合えたのはいいけど…なんだか、不安になっちゃうなぁ」
『改めて、リン・マシマだよっ!先輩後輩なんて関係無しにメカについて語り合おうねっ!』
と、嬉々として握手を求められた際、どこかその表情に狂気を見た気がしてならないリカルドとしては内心複雑だ。
ちなみに、デュオクロスは兵器だが自我が存在し、コミュニケーション能力があり、特殊能力を持つゆえ特例措置で生徒として在籍している。
まぁとにかく、変わった先輩とお知り合いになった訳だ。
リカルドは憂鬱そうに溜息をついたが、思索にふけるあまりにその日の授業は身に入らなかった。
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[リカルドの精神世界]
ぶっすー、と擬音がつきそうな不機嫌そうな態度で、無表情なマキナが不貞腐れていた。
『マキナ様…どうか御心を御鎮めください』
『あぁ?ざけんな!こんなんで穏やかでいられるかよ!』
マキナが不貞腐れているのは昨日の喧嘩が決着をつけられぬまま終わったからだ。
『あんにゃろーなぁにが「これ以上は校舎がもたない、決着はまたいずれつけるとしよう」だ!
どー考えても互角だから逃げたってだけだぜ!』
こればかりは数百年悪魔として生き延びた老獪なるディアであってもおさめようがない。
【機械仕掛の神】は輪廻神ティリー含め、神が人に与える事ができる特殊能力の中では最上級の天恵による守護者である。
リカルドに素質があったこそ与えられたものであり、しかも特殊改修型なのだ。
であれば当然強い魂が必要となり、強い魂とは一般的な魂よりも強い意思を持った人間の魂であった。
ならば、我の強い人格であるのは織り込み済みである。
それにディアとしても恋焦がれた存在である【機械仕掛の神】が軟弱な存在では興醒めというものだ。
ディアはそれはそれは満足そうにマキナを見つめていた。
『…なぁディア、お前はこの身体のこと詳しいのか?』
『ええ、まあ……一般的なものならば』
『飛行、ビーム、格闘…あたしの機能って
やっぱこれだけなのか?』
問われて、ディアは少しの間考える。
【機械仕掛の神】本来の機能は確かにそうだ。
輪廻神ティリーから伝えられた通りなら確かにそうだ。
『付け加えて、【奪い手にする神の掌】の強制接収能力で最後ですね。
残念ながら、マキナ様の全機能は全て解放されております』
『だぁーっ!やっぱりこれで打ち止めなのかぁ!?』
子どものように喚き、頭を抱えるマキナを見てディアスはにこりと笑みを浮かべる。
『ご安心を、既にマキナ様が先日接収した【戦場の運命剣】を用いて新たな武装を用意させていただきました』
嗚呼、やはりこの方は魅力的だ。
そう思いながらディアは新しい武装を取り出した。
『おっ?こりゃ随分…ごついな』
『おや?弱音とはマキナ様らしくもない』
『まさかと言いたいけどな……流石にこれはあたしでも引くぜ』
それは愚直であった。
それは豪快であった。
それは正に鉄塊であった。
『で?この鉄塊を一体全体どうすりゃいいんだ?』
『鉄塊ではありません、【偉大なる破壊者】です』
【偉大なる破壊者】
弩級大剣型兵装。
それは只管に頑丈であり、それは徒らに巨大だ。
『使い辛そうだな』
『果たしてそうでしょうか?是非お確かめください』
いったい何処にそんな自信があるのかわからないながらも、マキナは言われた通りに剣を手に取って確かめる。
成る程、手に馴染むように柄にはよくなめした革が巻かれ、更にどうやったのかは知らないがクッション性があり手にフィットする。
自信があるのはこれが理由か、マキナがそう思いかけた時、変化は起こった。
『お、おお、おおお?』
軽い。
いや違う、短く細く剣が形を変えたのだ。
『【偉大なる破壊者】はただの武器ではなく、【戦場の運命剣】から奪った様々な剣の概念を併せ持つ剣。
「変幻自在の魔剣ニャルラト」の構造変化。
「不思議殺し」の魔力吸収、魔術的、精神的存在への特攻性。
「不滅の刃」の概念による超常的な切断能力。
正に断てぬもの無し、マキナ様の圧倒的暴威を象徴する剣となりましょう』
つらつらと流れる賛辞も気にならないほどにマキナにとって素晴らしい剣だった。
専用装備なうえに変幻自在。
なんて素晴らしい凶器なのだろう。
マキナの価値観では【偉大なる破壊者】は既に便利な武器兼工具となっていた。
『扉破る時はやっぱバールだよなぁ…あ、斧も味があっていいよなぁ』
『マキナ様ー?あくまで便宜上剣であって斧やら工具やらは出来ないことはないですけど出来ればやめていただければなと
『これであのブリキ野郎を鉄屑にしてやれるな…』
デュオクロスの光学兵器の前にただの実体剣では話にならない。
だがただの実体剣ではない類のこの【偉大なる破壊者】ならば殺られる前に殺れるとマキナは確信していた。
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天より遥か遠き地の底にそれはあった。
愚かなりし夢追い人は息絶え眠り、屍ばかりが積み上がる。
「新しい機械仕掛の悪魔はもたなかったな」
「仕方がないさ、先代のやつに騙されて来た程度のやつだから」
地の底深く、闇の中。
悪魔が集う城があった。
[万魔殿]
魑魅魍魎、悪鬼羅刹、邪悪なる存在がひしめく魔窟。
十人十色、千差万別、おぞましき悪魔がうごめく魔窟。
そんな魔窟の中、上位の悪魔達が寄り合い会合と洒落込んでいる。
「地上は今どんな感じ?」
「【機械仕掛の神】が守護者として顕現している、よりにもよって「世界樹の御子」にだ」
「状況は悪い、先代の機械仕掛の悪魔が居れば対抗策も出るんだろうが行方不明だからな」
誰かが溜息をついた、悪魔の喧騒の中にすぐに掻き消えてしまったが。
豪勢な晩餐を前に溜息をついた彼、オゾルガは既に多くの情報を手にしていた。
密に、しかし密かに行われた輪廻神ティリーと機械仕掛の悪魔の接触。
そして失踪。
(明らかに転生しただろ…行き先は多分御子のとこだな)
前々から【機械仕掛の神】に狂信的にのめり込んでいた姿を見聞きしてきたオゾルガは醒めた目つきで晩餐会を眺めていた。




