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侯爵令嬢と異世界人  作者: 薺
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侯爵令嬢4

ナオトさんと楽しくお話ししたのが昨日。


昨日は本当に楽しくて、ついつい時間も忘れ、そのまま晩ご飯までご馳走してしまった。

今日はそのお礼に、街で有名のケーキ屋さんでケーキを買い、エルラ様のお家に向かう。


そのケーキ屋さんは私がまだトライト家にいなかった時に、よくしていただいた。

オーダーせいなのだけど、私の頼みならと、急いで作ってくださった。

エルラ様は薔薇がお好きだと聞いたので、薔薇の飴細工も。


そのケーキを持って扉が開くのを待つ。


「あれ?スティリー?」

「あら、ナオトさん。ごきげんよう」


そんな私に声を掛けたのは、両手に薔薇を沢山持ったナオトさんだった。

ナオトさんは首を傾げている。


「どうした?荷物持って」

「昨日のお礼ですわ。晩ご飯までご馳走になってしまったんですもの。何かお礼をしないと」


そう言うと納得したようで、器用に扉を開けてくれた。

…この扉って、重たいのだけど。

片手で開けれるほど軽くないはずだわ。


ナオトさんはそんなことを考える私を振り返り、首を傾げた。

慌ててついて行くと、エルラ様が私を見つけて笑顔で駆け寄ってきてくれた。

…エルラ様。

こけてしまわれては大変ですのでどうか走らないでくださいませ。

私が少し困ったように笑ってそう言うと、執事さんにも同じ事を言われめいて、少し落ち込んだエルラ様だった。

客室に案内された私は、まず初めにエルラ様にケーキを手渡した。


「昨日はお世話になりました。お口に合うかわかりませんが、受け取っていただけたら幸いです」

「まぁ!これはケーキかしら。開けてもいい?」


エルラ様の言葉に頷くと、机の上に置いて開けるエルラ様。

薔薇の飴細工は気に入っていただけたみたいで、目を輝かせていらっしゃった。


「私、ケーキは大好物なのよ。一緒にいただきましょうか。エンリュ。お茶を入れてちょうだい。それと、ケーキも取り分けて」


エルラ様の言葉に、部屋の隅に控えていたメイドさんがケーキを持って行き、すぐにお茶と切り分けられたケーキが運ばれた。

その早業に感心しつつメイドさんにお礼を言うと、一瞬驚いた顔をしたメイドさんは笑顔でお辞儀をして部屋を出て行った。


「ふふ。スティリーは本当に面白いわ。そうだスティリー。あなた、趣味などはあるかしら」

「趣味、ですか…。特にはありませんが、今は父の仕事の勉強をさせていただいております」


趣味は、元々私にはなかった。

だから、将来に役立つよう今はお父様に、様々なことを学んでいる。


「スティリーのお父様のお仕事は確か、騎士団の管理だったかしら」

「はい。騎士団の皆様の体調や隊ごとの武器の新調、訓練の監視など、騎士団に関わること全ての管理をしております」

「まぁ、大変ね。ねぇスティリー。私の父は、宰相をしていてね。是非あなたに会いたいと言っているの。あなたが不快じゃなかったら、あっていただけないかしら」


その言葉に目を丸めた。

宰相のオリエント・ティアルガ様はエルラ様のお父上であり、国王様の右腕と呼ばれるお方。

そんなお方に会いたいと言っていただけるなんて、大変光栄だわ。


「不快だなんてとんでもありませんわ。エルラ様のお父様にお会いできる機会なんてありませんもの」

「よかったわ。でも、そんな大層な人じゃないわよ?仕事してる時はいいんだけどね、普段は面倒な人よ」


エルラ様はそういって溜息をついた。

それから、エルラ様のお父様に会う日にちを決め、様々な話をした。

実はエルラ様、最近はお花にハマっているのだとか、昔からケーキなど甘いものが好きだとか。


「そういえば、薔薇を育てていらっしゃるのですか?」

「ええ。今はナオトが、日頃暇だからって手伝ってくれてるわ。見ていく?」

「はい。是非」


そう言って頷くと、エルラ様は庭の端にある温室に連れて行ってくれた。

そこには、薔薇の世話をするナオトさんと、一人のご老人がいた。


「セントール。薔薇の調子はどう?」

「お嬢様。このセントールが生きておる限り、この薔薇達が輝きを失うことはありませんよ」


そう言って笑うご老人は、薔薇を大切そうに見つめた。


「そうね」


エルラ様も、そんなセントールさんに優しそうに笑っていた。

セントールさんは私を見て首を傾げる。


「友人のスティリー・トライト。スティリー、この人はセントール・ライター。セントールには、小さい頃からお世話になってるのよ」

「ご機嫌よう、セントール様」

「様だなんて。お嬢様のお友達なのですから、セントールで構いませんよ。スティリーお嬢様」


私の言葉にセントールさんは笑ってそういった。

私もお嬢様なんて呼ばなくてもいいのだけも、言っても聞いてくれなさそうね。

セントールさんの顔を見てそう確信した。


「それでは、セントールさんと呼ばせていただきますわ。セントールさんがこのバラを育ててらっしゃるのですか?」

「そうですよ。長年、薔薇のお世話をしておりまして。旦那様にはその腕を見込まれここで働かせてもらっております」


へぇ。

確かに、ここの薔薇たちは凄い綺麗に育ってる。

こんなに綺麗に薔薇を育てる人、初めて見たわ。

私が感心していると、薔薇の中からナオトさんが現れた。


「セントール。虫の駆除終わった」

「ありがとう、ナオト君」


軍手を手にはめ、泥だらけになったナオトさんは、私たちの姿を見ると目を丸めた。


「あれ。どうした、2人とも」

「見学をしに来たのですわ。ナオトさんは何を?」

「害虫の駆除だよ。よかった。今終わったところだし」


そんなナオトさんの言葉に首を傾げた。

どうして、良かったんでしょう。


「何故ですか?」

「えっ?虫嫌いだろ?」

「…別に嫌いではありませんけど」


私がそう言うと、ナオトさんは驚いた顔をした。

…まさか、


「普通のお嬢様は、嫌いなのですか?」

「…」


ナオトさんの反応を見て、顔が引きつった。

なんてこと。

お嬢様というものは、虫を嫌うのだろうか。

苦笑するナオトさんを見て、落ち込む。

"本物"のお嬢様になるのは、まだ遠いみたい。


「落ち込むなって、スティリー。お嬢様の誰もが虫嫌いだとは限らないだろ?俺は別にいいと思うぞ!」


そういうナオトさんですが、今はその慰めが辛いですわ。

そんな私を見て愉快そうに笑うセントールさんとエルラ様。

落ち込む私を必死で慰めようとしてくれるナオトさま。


私はふふっと微笑んだ。


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