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侯爵令嬢と異世界人  作者: 薺
4/8

異世界人1

雲一つない晴天の日。

俺は地球から姿を消した。








いつもの景色。

いつもの日常。

そんな変わらない今日を過ごしていた普通な俺、佐々木直人ささきなおと

いつもの帰り道を、一人で歩いていた俺は、昨日降っていた雨で出来た水溜りを踏んだ。

そしたらびっくり。

水溜りの底が抜けたみたいに、俺の体はたちまち水溜りの中に消えた。


「…は?」


一瞬記憶が飛んで次に俺がいた場所は、明らかに日本とは違う景色をした場所。

そして、何やら豪華な衣装を着た男女。


「…え?」


驚いたのは俺だけじゃなく、その場にいた人達全員みたいだ。

お互いにキョトンとし、とりあえず一言。


「こんにちわ」


人ってパニックになると逆に冷静になるもんだ。

この時初めて知った。


なにやら豪華な部屋に連れていかれた俺は、これまた豪華なソファに座らせれた。

この部屋、俺の部屋の何倍だろ…。


さっき、王様らしき人から聞いた話では、どうやらここは、日本じゃなく、地球でもない別世界。

その中のリトーレシアという国らしい。

…あれか。

異世界ってやつか。

何故、言葉が通じるのかとかは考えてもわからないから放置。


「ナオト。着替えこれか騎士団の服があるが」


その言葉に伏せていた顔を上げる。

この国の王子、スウェッティッド・リトーレシア。

年が一緒なので、気軽に話せる相手だ。

王子だけど。

イケメンだけど。


スウェッドが手にしている服を見て顔が引きつる。


「その豪華な服は、なんだ」

「ん?基本の服装だ」


それが当たり前だというような顔でスウェッドが言うものだから、ますます顔が引きつった。

もう一つの服の方に視線を向けて言った。


「騎士団の服でお願いします」


そしたら、その服を渡された。

シンプルで動く安い服装にホッとしていると、俺に与えられた部屋の扉がノックされる。

ゆっくりと開いた扉から入ってきたのは一人の女。


「スウェッド。ナオトに服は渡したの?」

「あぁ」


スウェッドを気軽にスウェッドと呼べるのは、スウェッドの身内と俺と婚約者だけ。

こいつは、スウェッドの婚約者、エルラビューネ・ディアルガ。


「こっちの服にしたらいいのに」

「嫌だ。それを着れるのお前らだけだから」

「この世界ではこれが普通よ」


エルラはお嬢様のわりに話しやすい気さくなやつだ。

まぁ、お嬢様には変わりないんだけど。

エルラは公爵令嬢で、貴族の中では一番高い地位にいる貴族の娘らしい。

この世界には前の世界との違いがありすぎて混乱する。

食べ物とかは一緒なのに、不思議だ。

地球の話やこの世界の話を3人でしていると、エルラは学園の話をし始める。

どうやら、もう直ぐ入学式があるらしい。

そう言えば、俺ももう直ぐ入学式だったよな。


「でね、今回の新入生代表の子、凄いの。裏情報では、入学テストが全て九割以上。久しぶりの天才だってお父様が喜んでいたわ」


そう言うエルラも、喜んでいるみたいだ。

エルラには本当の友達が少ないらしいから、少し期待しているのかもしれない。

スウェットは、興味がなさそうだが一応エルラに訪ねた。


「なんで今なんだ?頭がいいなら昔から目をつけてるだろ」

「それが、よくわからないのよね。今調べてもらってるところ。会うの楽しみだわ」


エルラはそう言って笑う。


エルラはお嬢様のくせに頭の回転が速い。

そうじゃなきゃ王子の婚約者なんで務まらないだろ。


エルラが楽しそうに笑って話していたのが2週間前。

そして、その人物を連れてきたのが今日。


思っていた人物は、ものすごく美人で笑顔が印象な人だった。

ふんわりと柔らかく笑う笑顔に癒される。

スティリー・トライトと名乗ったその人は、俺に友達になってくれと言った。

気を遣われたのがわかって、エルラの友達になってあげて発言でも恥ずかしかったのに余計、恥ずかしくなった。

それでも話が弾んで、自然に笑顔になった。

この時、初めてこの世界では安心できた瞬間だった。











「ナオトさん。これはなんという名前の花なのですか?」


そう言って見上げてくるスティリー。

笑ってなんなのかを教えてやる。

スティリーは、俺が話す話に興味があるみたいで、自分から聞いてくれる。

何故かこの世界の知識がある俺は、花の名前を言うなんて簡単なこと。

教えてあげると素直に喜んでくれるから、こっちも嬉しい。


スティリーが協会出身、つまり養子なのは本人から聞いた。

だけど、本人は気にしてないようだし、俺が口出すことでもないからなにも言わない。

本人は、お嬢様になりきれていないことが不安なようだけど。


「スティリー。普通のお嬢様はしゃがんだりしないよ」


そう笑って言えば、慌てたようにスティリーは立ち上がる。

庶民だった頃が長かったせいか、行動がお嬢様らしくないと、スティリーは落ち込んでいた。

だから、普通じゃなかったら行ってくださいねと言われたんだけど、お嬢様の普通がわかんないから、なんとも言えない。

だけど今みたいに、明らかないなって行動は言ってあげる。


「スティリー、落ち込むことないって。お嬢様って言っても色んな人がいるんだから。エルラだってそうだろ?」

「エルラ様は素晴らしい方ですわ。賢いですし、お話ししやすいですし」

「でも変人だ」


そう言うとスティリーは苦笑した。

変人ではありませんわと言われるのだけど、俺には変人にしか見えない。

色んな話をしながら散歩をして時間を潰した俺たちは、庭を一周して部屋に戻った。


真っ青の空が広がる日、俺はスティリーと出会った。

青い髪と透き通るような水色の瞳を持つスティリー。

普通のお嬢様ではなくて、だけど一生懸命お嬢様らしくあろうとして、優しくて、賢い。

そんなスティリーといて心地いいと自分で自覚するのは、もう少し後。

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