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侯爵令嬢と異世界人  作者: 薺
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侯爵令嬢1

こんにちわ。

薺と申します。

出来れば週に1回は更新したいと思っています。

長くなるとは思いますが、お付き合いください。

『昔々、大昔。


この世界に一人の男が舞い降りた。


黒髪黒目の、不思議な人間。


勇者と呼ばれたその男は、世の中を苦しめている魔王を倒しに向かった。


魔王を倒した勇者は、英雄となり、人々から愛されながらこの世を去った。


勇者の名は、タクヤ。


この世界の救世主』


長い長い話が終わり、閉じそうな目を必死に開ける。

周りは目をキラキラと輝かせ、先生の話を聞いていた。


「勇者様は異世界人と言って、こことは別にあると言われている世界からきた人です」


教壇に立つのはミランダ・スティファー先生。

オレンジの髪に丸いメガネをかけている、優しい先生だ。


「それでは今日の授業は終わりです。皆さん、気をつけて帰りましょう」


そう言うと年齢の違う子供達が一斉に外へ飛び出した。


ここは教会。

学校に行けない子供や孤児が集まって少しでも勉強ができるようにと作られた施設のようなところ。

私も、少し前まではここの一員だった。


「スティリー。久しぶりですね。今日はどうしたのですか?」


スティリー・トライト。

それが、私につけられた名前。


「お母様とお父様から、ミランダ先生にと預かり物があります」

「おや。なんでしょう」

「教会への寄付金だと思います」


そう言って二人から預かっていた包みを渡す。


うちの両親はとてもいい人だ。

カンナ・トライトは、とても綺麗で優しい女性。

リード・トライトは、妻思いで仕事のできる、優しい男性。

そんな二人の目にとまり養子として引き取られたのが私、スティリー・トライト。


ミランダ先生は寄付金を見て顔をしかめた。


「また、こんなにたくさん。お二人は優しすぎます。あなたからも、もう少し金額を減らすよう言っておいてはくれませんか?」

「ミランダ先生。私は、少しでも多くの子供を救ってやりたいという両親の意思を尊敬しております。どうか、何も言わず受け取ってくださいませ」


私の言葉に渋っていたミランダ先生は、溜息をついて受け取った。

うちの両親を優しいというミランダ先生と、十分優しいと思いますよ。

それから、教会の外で遊んでいる子供達と少し遊んでから、待ってあった馬車に乗る。


「スティリー様。明日は学園の入学式がございます。お忘れなきよう、お願いします」

「分かったわ」


執事の言葉にそう返すと執事は黙る。

静かな馬車の中で、私は外の景色を見て家に着くのを待った。









「お母様、お父様。ただいま戻りました」

「おかえりスティリー。ちゃんと届けてくれたかい?」

「はいお父様。ミランダ先生にきちんと届けました」


そう言うとありがとうと言ってお父様は笑った。

お母様は何やら忙しそうにしている。


「お母様?何をしているのですか」

「スティリーが明日きて行く制服に、不備がないか確認してるの。一生に一度の事よ。スティリーの可愛さが損なわれるようなことがないようにしないと」


そう言われ苦笑する。

お母様は少し親バカだ。

お母様の一目惚れで引き取られた私は、侯爵令嬢というとても裕福な地位についた。

ご飯に困ることもなく、着るものに困ることもなく、生活に困ることもなく。

孤児だった私にとっては、裕福すぎてちょっと引いた。

今でも無駄遣いはしないし余計なものを買わないので、私の部屋は必要最低限のものしかない。

幸い私には才能があったので、反対なく受け入れられた。

私は勉学に長けており、高等学校も主席で入学。

新入生代表挨拶を任された。

正直、目立つことは好きではないのだが、家柄としても両親のためにしても、悪い印象は避けたい。

そして、二人の恩返しになるようなことは、私にはこれくらいしか思いつかなかったのだ。


「王都スウェン高等学校には、知らない人がたくさんいるからね。友達をいっぱい作りなさい」

「はい」

「新入生代表挨拶も頑張って。僕達は保護者席で見守っておくよ」

「はい。恥じぬよう頑張ります」


そう言った私の頭を、お父様は笑って撫でてくれた。

これもまだ、慣れないことの一つ。

親の愛情が、私にはどうしても素直に受け入れられないらしい。

そんな私達に、食事だと執事が声を掛けるのは、しばらくしてだった。


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