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パワードユニオン(前伝)

作者: 剣崎 宗二

元々はPBW(プレイバイウェブ。オンラインゲームの一種)の世界観として設定したネタを、小説化してみた物です。

その内余裕があれば、本格的に連載で書くかもしれません(笑)

「久治。レーダーに反応は?」

「ないっす。敵さん、ステルスで隠れてるか、もしくはそもそも近づいて来てないかっすね」

 ウルズ平野。敵軍――帝国のPU(パワードユニット )らしき物が、この付近を通過した‥‥と言う偵察情報を受け、第三PU小隊の面々は、この、荒野とも言える平原に赴いたのだ。


 パワードユニット‥‥平均全高5m程の、戦闘用車両。

 車両とは言う物の、各種の地形に適応するため‥‥また、開発前には生身で戦っていた者が多いそのパイロットたちが、ノウハウを十分に生かすため。この機械は、四肢があり、メインカメラが頭部にあると言う、極めて人間に近いデザインであった。


「ここまで来て反応無しだと‥‥居ない可能性が高いっすね。九宮隊長、一旦帰るってのは――」

「お前だけ帰っても良い。その代わり帰った瞬間軍事法廷直行だがな」

「ひぇっ、それは勘弁っす」

 わざとらしく怯えたような声を出す、偵察士の松本久治。

「骨くらいは拾ってやる」

 冷たい声で突っ込む、狙撃手のカール・グランツ。

「それはないっすよぉ‥‥」


 無論、もう付き合いは長い仲だ。お互い、悪意がないのは良く分かっている。

 それでも冗談を言わずには居られないのは‥‥彼らの勘が、この場に漂う緊張した空気を察しているから、だろうか。


「隊長!敵影三時方向!」

 久治の叫びを聞いた瞬間。脳で考えるよりも先に、体が反応する。

 機体の脚部スラスターを全力で吹かせて上昇すると共に、背部ブースターを全開にする。その場から機体が離れた瞬間。爆音と共に、「何か」が地面を抉る。


「砲撃機か。恐らくは超音速弾。注意しろよ!」

「光学迷彩展開完了です。炙り出しますので、後はお願いします」

 ぷつりと通信が切れると共に、3時方向で連続した爆発音。僅かにロボットらしきシルエットが、爆煙の中で揺れる。

「久治、反応は何体だ?」

「えーっと‥‥二体っすね。けど気をつけてください。別の位置に隠れてる可能性も‥‥」

「問題ない。三体以内なら‥‥片付けて見せる」

 ブースターを吹かせ、上を取る。ガチャリと機械の腕部分から、ナイフが滑り出る。

「光学迷彩は‥‥殆どその場から動けなくなるのが問題だ。‥‥発見された時点でさっさと逃げるべきだったな」

 急降下と共に、そのナイフを敵PU(パワードユニット )の頭部へと突き刺した。


 一体のパワードユニットが爆散した直後。横からの銃撃が隊長――九宮機の肩部装甲を掠める。

「新たなPU(パワードユニット )一体確認っす!」

「ああ、今こちらも確認した‥‥っ!」

 機体を傾け銃弾を回避すると共に、回し蹴りを放つ。機体踵部に装着したブレードが、敵機の胸部装甲を抉る。‥‥と共に、その姿が揺らぎ、機体が現れる。

「さて、光学迷彩はもう破れた。‥‥逃げるか?それとも挑んでくるか?」


 通信プロトコルが違う以上、敵同士の間でお互いに連絡する事はできない。それ故に敵がその問いかけに応じる事は無かったが‥‥僅かな機体の動きから。九宮は、敵に戦意を感じたのであった。


「‥‥成る程。飽くまでも最後まで戦う気か。良いだろう」

 一瞬で、無数の拳打、蹴撃の応酬が成される。お互い同様の機体コンセプトなのだからか、戦況はほぼ互角。お互い致命打を与えられない状態だ。

「むう‥‥!」

 僅かな、一瞬の隙。

 長時間の警戒の疲労から来るそれは、しかしほぼ互角の息詰まる攻防の中に於いては致命的であった。

 腕を掴まれるようにして引き込まれ、背後に回りこむようにしてがっちりと組み付かれてしまう。

 その前に揺らぐ、第三の機体の影。

「仲間ごと打ち抜く気か‥‥!」


 ガチガチと機体を揺らすが、速度重視の軽量型機体のせいか、出力が足りず振りほどく事はできない。

 目の前で‥‥銃が、構えられる!


 ピチュンッ。

 僅かな音と共に、目の前の敵機の動きは止まり‥‥一息置いて、その場に崩れ落ちる。

「貸し一つだ、隊長」

「おう、感謝するぜ」

 唯一動かせる機体パーツ‥‥『足』のブースターを吹かせ、そのまま足を持ち上げる。

「何時まで掴んでるんだよ」

 膝にあたる部分から、ギラリと、銀に光る刃が突き出される。

 人にはほぼ不可能な角度に関節を曲げ‥‥膝を後ろで自機に抱きついている敵の頭部に、叩き付ける!


 ――噴出される、黒い液体。

 崩れ落ちた敵機を一目見やり、日本国所属、機甲兵隊第三中隊第一小隊隊長、九宮 京一郎は、通信チャンネルを指揮本部への物に調整する。


「どうした。サード・ワン。報告せよ」

「敵機三機に遭遇し。その内二機を無力化。回収を要求する」

「‥‥まぁ、とりあえずは満足の行く結果か。よろしい。回収部隊を送ろう。貴公らは先に帰投せよ」

 ぷつりと、通信が切れる。


「なぁ隊長、あれだけ苦労して『とりあえずは満足の行く結果か』って、酷いと思いません?」

「まぁ、仕方ないだろうな。本部の人間は、未だPUの運用を完全に理解してはいない。‥‥何せこれは、日本がこうなってから(・・・・・・・)初めて開発された物なのだからな」






 西暦2147年。

『日本国』は、突如の異常現象により、異世界‥‥現地の者が『リディ』と呼ぶ世界に転送された。

 新たに出現した土地の支配権を求める、リディの現存する大国‥‥『ラース帝国』の宣戦布告を受けた日本国は、最初こそ彼らが所有する『パワードユニット』の戦力に圧倒される物の、それを鹵獲、解析し‥‥終には複製する事に成功していた。

 そして、戦争開始から三年。2150年。新たなストーリーが、始まる事となる。

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