魔境 カプチーノ
コーヒーの種類の軍たちが私を猛攻撃仕掛けていた……。
どうやら、ここは本格的にコーヒーを扱う喫茶店らしい。噂程度には知っていたが、喫茶店にも種類があると。
コーヒーの種類を豊富にする店。軽食の種類を豊富にする店。どちらも、両立する店。
この店は、どうやらその両刀使いの店らしい。
チャーハン、オムライス、ビーフシチュー、おにぎり、しょうが焼き。
選べるブレンドコーヒー、カプチーノ、カフェラテ、あめりかーの、エスプレッソふれっど、………
以後私の辞書に載っている言語は無かった……。
オーソドックスに……まて、オーソドックスとは一体どういった具合にいけばオーソドックスなのだ?マッ○で注文するときで擬似的に考えよう。
まず、私はハンバーガーが嫌いだ。だから注文するのはポテトやサイドメニューと言われる部分しか注文しない。
だとすると、コーヒーを注文するのに好き嫌いが分かれて人によっては注文の嗜好が分かれるのではないか?
なれば、私が注文すべきは……そもそも、好きなコーヒーという種類を私は把握していない!己を知らぬものは他を慈しむことはできぬ。そんな言葉を聞いたことがある気がするが、それを体言するときが来るとは思わなかった…。
では、何を注文する…時間がたてば立つほど私のカフェ初心者という立場が確立していく気がする。
ここは少々短慮となってもいいから、一つ注文するべきか!
顔をメニューから離し、マスターに視点をあわせる。視線を感じてマスターは注文をすることに気づいたらしい、ありがたい。
「あ、すいません、カフェラテを一つお願いします」
「かしこまりました。暫くお待ちください」
……………………………
……………
……
注文できた!!!!!
心臓が破裂しそうなほど鼓動していて、注文が終われば収まると思っていたが、余韻を楽しまんばかりに心臓の鼓動が止まらない。
今もしほかのハプニングなんかが起こったら、心臓は鼓動超過によって止まるだろう。コーヒーの抽出から始まりその工程を見ることでだんだんと心を落ち着かせることが出来る。
すると店の奥から人影が現れた。
「あれ?楯西さん?」
エスプレッソマシーンと呼ばれる機械からエスプレッソが抽出されていく工程を見ていると、私の名前っぽい言葉を発する人物が現れた…
否、まさかこんなところに私の知り合いが居るわけがない。断言しよう。
自分の立場を再確認すれば簡単な話じゃないか『ボッチ』。
なんたって私の名前すら認識している人はクラスメイトで数人しか存在しないはず。その数人がこの広い町の隅に構える喫茶店に出没する確率は、アニメのキャラが現実世界に出現するほどの奇跡。
ただ、その声は最近私も聞いた覚えのある声であった。心臓鼓動超過。
「やっぱり、楯西さんはコーヒーが好きだったんだね!」
このコーヒーの話題で一気に沸騰する人間、数日前にあった気がする。ただ、今だけはその日の記憶を抹消したい。
なんどかその人物に会いたいと思っていたのは事実なのだが、これは最悪のパターンでの再会になった。
エスプレッソマシーンから目を背け視線を右のスタッフオンリーな場所から現れた人物に目を当てる。予想などするまでもなく、該当人物は一人しかいないわけでさもありなんと向坂迅が店の奥から顔を出していた。
「あ、え、えと、向坂君だったけ?」
最初に出会ったインパクトは中々のインパクトだったが、セカンドインパクトはそれをはるかに超える威力だった。
「あら?二人とも知り合いだったの?」
そこに介入してくるウェイターさん。
「ああ、うん。一応…知り合い?なのかな?一回しか話したことは無かったけど」
確かにあれだけでは知り合い未満の関係といえるだろう。知り合いであることを疑問視するように喋る向坂迅。
「珍しいわね。水桜高校の学生がここに来ることも珍しいけど、迅の知り合いが来るってのもまた珍しいわね。驚きだわ」
驚きの表情ではなく、子供をからかう笑みを浮かべながら私たちの関係を事情聴衆するウェイトレスさん。
「あの、一つ聞いていいですか?」
「なにかしら?」
「えっと、向坂君はここでアルバイトをしているんですか?」
向坂迅の姿は制服姿、店の奥から出てくるところを見るとアルバイトを終えて帰宅の時を迎えるところ。思考の赴くままに考えると、それが妥当な案だった。
別に水桜高校にアルバイト禁止の校則があるわけではないが、恐らくそんなニュアンスに捉えられたかもしれない。
「いや、違うんだ」
「え?じゃぁ、なんでここに?」
そこでスマートに会話に進入してくるダンディズムを利かせた声が
「迅は私、息子でございます。ちなみに、ここの二階は向坂家の居間となっていおります」
マスターがすかさず分かりやすい説明で一刀両断した。
「あー…なるほど」
恐らくここに居る三人の思惑通りの反応は私はしているのだろう。あっけ取られて理解するだけの反応。
「向坂君が言ってた自分の家がカフェってつまり、ここだったんだ…」
カフェは多けど、まさかその中の向坂家のカフェに当たった偶然に驚愕を隠せない。
「そうそう、迅は私たちの息子なの…だから、仲良くしてあげてね。学校であまり友達が居なくて困ってるんだから」
……………
そして時は止まった。
三人の顔を私は見渡した。
マスターの髪の色を継いだのは理解できた。歳相応の顔つきのマスターは理解が出来た。そこに疑いを持つ余地はない。一瞥するだけで十分だ。
推測水桜高校三年生だと予測していたウェイトレスさんの発言によると、向坂迅はウェイトレスさんの息子だと妄言にも近い言葉を聞いた。何度も向坂迅とウェイトレスさんの顔を往復するように識別する。
「……えええええぇぇぇぇぇぇーー!!!!」
時は動き出した。
同時に私は、数年ぶりに大声と言うものをあげた。
「げほげほっ!ヴォッホン…えっとつまりは、私が15歳だから同じ向坂君も15歳。それに出産できる年齢をプラスすると……」
「カプチーノが出来上がりました…」
話している間にカプチーノは作られており、すかさず私の前に出され私の思考を邪魔した。
「うふふ、乙女の年齢を計算するなんて野暮なことよ、お嬢さん」
推測30歳超過の女性が不適な笑みを浮かべている。
「はっ……確かに…」
これ以上思考回路を回したらたとえ口にしなくてもこの店から生きて帰れそうになさそうなので思考をストップ。
「迅もそんなところに突っ立ってないで、せっかく…えっと…」
ウェイトレスさんが言葉の途中で悩みだす。前にこんな表情をした向坂迅を見たことがある。
「あ、楯西トルテです」
「トルテちゃんの横に座りなさいよ」
ジャストイット。さすが親子と言ったところだろう、仕草が似ているのを目の当たりにすると本当に向坂迅の母であるのを実感する。
「そ、それもそうだね」
ほぼ初対面と変わりはないし、カウンター席でコーヒーを飲み交わし喋ることが無いことが分かっているのか、不承不承といった具合に母親の言いなりになる向坂迅。
困った自体になったものだ。
久しぶりに、まともに会話が酌み交わされている小説になりました。
まぁこれから、向坂君にはがんばってもらうのでやっと、心内描写ばかりの小説ではなくなるかも…かも
ほんとここまで長かったな…どんだけ心内描写で遊べば気がすむんだと。
ここからやっと通常運転の小説になります。……
………たぶん……