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住所:禁断の地

 体育館の裏に行く道は一本道で校門から入って左折で、まっすぐ行くと右折、その先に高いネットが張られていて袋小路になっている。なんとも袋たたきにするのに適した場所だ。場所的には校外に面するが、隣を見るとでかい電波等が立っているだけでだだっ広い空間が見える。景色はいいがどこかの企業の私有地のため人通りは皆無。いくら叫んでも人は来ません。

 以上からいじめの立地条件として最高なのである。

校門から左折した場所は登下校の人の目に晒されるのでそこには誰も待ち構えては居ない。

「チラッ」

 出来るだけ顔の面積が見えないように、体育館の冷たい壁に手をつけて覗き見をする。

 体操のマットの横幅ぐらいしか無い体育館裏。そこで二人の男女が何やら話しをしていた。

 体育館裏に呼び出したのだから当然どうやっていびるか算段を決めているのだろう。怖い怖い。

『貴様喫茶店に入れないようにしてやろうか!』

 とかそんな脅し文句を考えているのだろうか。いや、もしかしたら

『コーヒーアレルギーにしてやろうか!』

 とかさらに恐ろしいことだろうか。コーヒーアレルギーってつまりは、体質から変換させられるんだからどんな薬を飲まされたことか知れたもんじゃない。まだ、喫茶店に入ってすらいないと言うのにそんなことされてたまるか!

 妄想を馳せつつ私はおずおずと、体を引いて帰宅の途につこうとした。

 ドンッ

 及び腰な感じで後ずさりするとそこには何か物体があってそれに私のおしりに当たった。

「あ、ごめん」

 物体は喋った。

 凜とした表情をがんばって作って私は背筋を伸ばし振り向いてみる。

 そこには、茶色い髪をして大人しそうな顔つきをしているが目立つ顔立ちの男子生徒が立っていた。見た目は物腰弱そうだが、私の現状を振り返ってみると脅迫状または果たし状のようなものを渡された挙句、タイマンではなく2対1であると思っていたのがもしかしたら、この男子がGET INするなどと言った状況ならひどい状況じゃないのだろうか。

 しかし、ここは私の前方不注意?

「あ、ごめんなさい。ちょ、ちょっと、ツチノコを探していたらこんなところに迷い込んでしまいましたわ」

 言い訳をして、足元をキョロキョロ見ながら私は帰宅の道へとにじり出てみる。狭い体育館裏は人と人がすれ違うのにギリギリなスペースで横を通ろうとするとその男子が近くなる。

 すれ違うまでも行かないところで

「あれ?君じゃなかったの?」

 待ったの声が掛かった。

「私?私はさっき言ったとおりパンダを追いかけてきただけで通りすがっただけですよ」

 終始凜とした態度に徹して、気後れしないように頑張る。

「そっか、じゃぁ誰だったんだろ……ていうか、さっきと追いかけてるもの変わってない?」

「そ、そう?私は終始コーヒーしか追いかけてないわよ?」

「そ、そっか……でも、コーヒー好きにしても君からコーヒーの匂いがしないのは気のせい……かな?」

 確かにコーヒーの匂いは強い。けど、はっきり言ってまだ喫茶店に辿りつけていない私にとってはそんな香りは無縁だと思う。喫茶店で飲めるようになるまで、家で飲むのも正直ずるをした気分になるから飲んでいないからまったく匂いはしないだろう。

「そもそも、コーヒーの匂いがするかなんて分かるのかしら?」

 ボソッと小言をこぼす。

「わかるよ!」

 大人しそうな雰囲気が一瞬だけ一転してはっきり断言された。

「そんなものかしら?」

「うん、例えばサッカー部の町下君とかは活発でコーヒーとは無縁に思えるけど、案外コーヒーの匂いがするんだ。たぶん家で親に毎日出されてるか、もしくは喫茶店に通ってるとかかな?」

 初対面の相手にここまで熱意を込めて説明されても困る。が、印象は結構変わったかもしれない。

 はっ!!

 今思えば、私学校でこんなに人と話したことあったっけ?

 いや、話したことあるというよりかこれは一方的に話されてるの?

 そもそも、なんでこんなに熱心に私は熱弁されているの?

「へ、へぇ、コーヒーに詳しいんだね」

「まぁね、うち喫茶店だから」

 !!!!!!!!!!!!!!!!

 ……得も言えぬ感情が湧き出て少し戸惑う私。

 少し整理してみると、もしかしたらこの対象が他人であることが惜しいと思っているのかもしれない。この男子ならディティールコーヒーの入り方を知っているかも?

 そんなところだろうか……………

 …………………

 …………

 うん、他人か。

「えっと……」

 何やら口どもっている。指を私に向けながら振って悩んでいる様子。

「あ、楯西 トルテ」

 たぶんこれだと思う。

 そういうと、男の表情は明るくなった。正解。

「楯西さんはコーヒーがすきなの?」

 はっ!何ヶ月ぶりだろう……名前を呼ばれたのは。

「え、あ、あぁ…んん…そう、かな?」

 おどおどしながらの肯定。自分でもそれに信憑性を感じることのできないと思えるこの挙動不審。

「そうなんだぁ。あ、僕の名前は向坂こうさか じん。ごめんね、引き止めちゃってもう帰るよね」

 向坂 迅。満ち足りた顔をして自己紹介し、彼は帰りの道へと振り返る。

「ん?あぁ、うん」

 お・と・も・だ・ち。になってください。

 なんて言葉を搾り出すことの出来ないまま、私は流されるがままに帰宅の途へとついたのであった。

 え?この子を利用してじゃないとディティールコーヒーに入ることはできない?

 い、いやまて、自力で行くという選択肢だって十二分にあるじゃないか…

 …………後悔だけが残るのであった。

新キャラかもしれません。

うん、新キャラです。やっと人が増えたね!

たった一人だけの心情を描くのに案外疲弊していました…向坂君ストーリーに現れてくれてありがとう。(切実

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