ボッチ系女子の日常 授業偏
AM11:30
体育の授業が始まった。
夏休み手前のこの時期で一番楽しみである授業だ。
プール。
暑苦しくじめじめした人間が住む乾燥した空間から逸脱し、水分100%の中でいくら暴れまわっても暑さで体力を持っていかれないフィールド。水泳経験者なら誰しもが喜ぶ授業だ。
ボッチながら私も、昔は水泳をやっていたのでこの授業は待ち遠しかった。
とまあ、そんなのはどうでもいいのだ今日は。
だって今日は、男子がプールを使用する日なのだから。昔から思うのだが男子は体育の授業に置いて優遇されがちだと思うのだ。プールが無い日であっても校庭を使う頻度が高いのは男子。
これでは、体育系女子が可哀想じゃないか。至ってノーマルな私にとっては別にどうでもいい話だが、やはりプールを使用されるのが気に食わない今日この頃。
今日は体育館でドッジボール。チームはA~Cに分かれて六人一組。私はチームCで最初の試合は逃れて、授業中というなの休み時間を頂いていた。
ボッチは当然隅っこで、ボールに打ち打たれされながらきゃっきゃうっふふーしている女子どもを見ながら思考回路を巡らせているのだ。
「喫茶店は一つなわけでもないし、スターマックスだって近くにあるじゃないか。そう、だからディティールコーヒーじゃなくて少し離れるけどスターマックスでもいいじゃない。スタマならディティールコーヒーより幅広く知られてるからオーソドックスなメニューが載っていたりしていそうだし……………でも、確かディティールコーヒーもスターマックスも店前にメニュー表を置いていなかったし……マクドでもメニューは全て表示してくれていない場合もある。そう考えると……ぶつぶつ」
一緒に話す人も居らず、近づく人すら皆無なので少し一人ごちっていても誰も気にも留めないのでぶつぶつと小言を呟く。
これをボッチ系ポテンシャル「憚らぬ心」と言う。
実は変態っぽいと噂されるようなことであっても、気にせず、気にすることもできずに一人でどんどんと深みにはまって行く心である。
とポテンシャルを披露している最中
「危ない!!えっと……よけて!」
その「えっと」の後のディレイ時間は何だ。名前思い出そうとして思い出せなかったパターンだろそれ。高校一年の夏休み前になっても名前を覚えられていないクラスメイトってのもまた乙な話だ。
そんなこんなで結局、私の顔面には
「ん?…へぶし!」
ボールが見事命中していたのであった。
男子が投擲したものでないにしても、相手サイドに居る敵を逃がさんとする乙女心が投擲する一発も中々どうして強烈な一撃であった。
乙女心を受け取った私はそのまま地面に倒れこんだ。
……………………
………
……
試合中の生徒は試合続行、それ以外の生徒は誰も私に気づかずきゃっきゃうっふふー。
誰にも気づかれること無く、自力で意識回復するまで私は伸びていたのであった……
キーンコーンカーンコーン
下校のチャイムが鳴りかえりのホームルームを終え、生徒達は各々グループが出来上がる。ざっくばらんに分けて下校組みと部活組みに分かれる。グループ分けするならば、私も下校組みという方に分類される。だからきっと、さほど皆とは変わりは無いだろう。
………………………
結局私は一般学生との違いに気づくことなく、また下校の時間まで来てしまった。
やはり、一般学生との違いといったらいつでもボッチであるという点。これを直すための何かがどう足掻いても見当たらないかった。
「はあぁぁぁぁーーーー」
深い深いため息をつく。あるはずの無い幸せがため息とともに逃げていった気がして気がまた滅入る。
と、下校の準備をするために机の中を漁ると妙なものが中から出てきた。
『楯西トルテ殿へ』
私の名前だ。
定規で書いたのではないかと思うほどにカクカクの文字で書かれていた手紙が一枚。
この手の手紙はもう飽きるほどに見てきた。こんなにカクカクした文字である時点でまず中身を見る気にもならないが、一応見ないわけにも行くまい。もしかしたら重要な連絡事項かもしれない。
例えば、学校の人がライブの告知で手紙を一人一人に渡しているとかそんな感じで。
正直定規で書いたような文字な時点で、筆跡検査に引っかからないように工夫していると見えるし見るのは億劫だ。
ペリペリ
『大事な話があります。放課後体育館裏で待っています』
やはりいつも通りの『脅迫状』ではないか。
こういったものは二日にいっぺんぐらいあるから困る。帰りに『兄メイト』に寄ってボッチでも生きていけるための養分を補給しに行きたかったのだが。
そうは言っても、残念ながらいつも体育館裏まで行って屈強の男が仁王立ちしているので恐怖で逃げおおせてしまうのが定石だ。
最近で表すなら、喫茶店を眺めに行くための時間が無くなってしまうから困る。
これをボッチ系スキル「被害妄想」と言う。
「被害妄想」はボッチ系弱点の「情報の過疎」から派生するスキルであり、「情報の過疎」を習得していない人には追加されないスキルである。「情報の過疎」を習得していても「危機回避能力」のステータス値が足りないと習得できない。
一人思いに耽り、カバンに手を伸ばす。そのまま、プリントなどを詰め込み机の中に教科書を置いてかえる。
……………ふと気づいたが
私の机に手紙を入れていった人達は皆この教科書だらけで汚い机を見ていったのだろうか。あえて言うなら、たまに机に落書きをして残して帰った日などはそれを見たのでは無いだろうか。
そう思った途端顔が少し赤くなり恥ずかしかった。
今日もチラッと体育館裏を覗いて帰ろう。
スキル習得などがあるゲームをやってて弱点から新しいスキルが派生すると嬉しいですよね。
なんていうか、その時だけ弱点があってよかったって思えるというかなんていうか。
正直最近のゲームはヌルゲーな気がして強いスキルがどんどん強いスキルを生んでいく感じがしてしまう今日この頃。
特にアクションゲームとかが顕著で、ヌルゲーになりつつある気がする。
ゲーム爽快感を追求し過ぎた結果だろうか。
と、後書きでなんとなく近頃のゲームの批評……