表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/13

分かってくれない

「何、言ってんのよ。私、一子よ。自分の娘忘れてどーすんのよ、お母さん」

エイプリルフールでもないし、いくら何でも冗談が過ぎるよと、笑いながら私が言うと、

「どこの一子さんですか。ウチにはそんなはいません」

とお母さんから返ってくる。その顔に笑いは微塵もなく、真剣だ。それで私は、

「どこって、ここのだよ。田中一子、17歳。ここの住所は中町1丁目5-36だよね。家電いえでんは04XX-38-2XXX」

と私がこの家の子であることをアピールする。けど、それを聞いてもお母さんの態度は冷ややかだった。

「ここの住所や電話番号は聞けば分かるでしょ」

そりゃそうだけど、フツー他人様のそういうのなんて、こんな風に即答なんてできないと思うよ。

「じゃぁ、これはどう? お父さんの名前は田中茂45歳、今はS県に単身赴任してる。お母さんの名前は田中敦子41歳、妹の田中二美つぐみは中学三年生」

それで慌てて私がそう伝えると、お母さんはそれも鼻で笑った。これも調べれば分かるネタだと言いたげに。


「ママ、朝から何騒いでんの」

そこに、二美が二階から降りてきた。

「おはよ、二美。ねぇ、ちょっとお母さんに言ってやってよ。お母さんたら私のこと知らないって言うんだよ。まだボケる歳でもないでしょって」

アレ? 二美ってお母さんのことママって呼んでたっけ、私と一緒でお母さんだよねと、二美の言葉に若干の違和感を感じつつ、私は彼女に助け船を求める。だけど……

「あんた、誰」

返ってきたのはお母さん同様の冷たい一言だった。

「みんなどうしたんだよ。私一子だよ。ここの娘だよ、あんたの姉だよ」

なおも、食い下がって言う私に、

「あたしはあんたのこと知らない」

二美はそう言いきって私の手を払いのけた。 その格好をよくよく見てみると、二美はちょっと離れたところにあるお嬢様女子中の制服を着ていた。おかしいな、二美は私が通っていたのと同じ、近くの公立中に行ってるはずなのに。 

 でも、制服……身分証明、生徒手帳! 私は洗面所まで持って下りてきていたスクール鞄の中を漁って生徒手帳を探した。だけど、生徒手帳はおろか、定期も見つからない。生徒手帳はともかく、定期は昨日も使ったんだから、絶対に入ってるはずなのに。

 じゃぁ、部屋に置き忘れてきた? 私は洗面所の入り口に仁王立ちになっているお母さんと二美をかき分けて、2階に急いで上がった。

 でも、そこで私が見たものは、なんかごちゃごちゃっといろんな物が入っている、物置みたくなっている部屋だった。部屋も心なしか少し狭くなっているような気がする。

「そんなバカな……」

私はさっきからずっと持っているスクール鞄を抱えて廊下にへたり込んだ。 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ