終わりの
家庭内不和/離婚/シリアスです。
勝手にすれば良いのに。
何時も、わたしはそう思う。
部屋を真っ暗にして、ヘッドホンを耳に被せて。
…大音量で、音楽を聴くのだ。
暫くそうしていると、ひゅうっ…と風が部屋に入ってくる。
この、失望と悲しみと達観が満ちる、わたしの部屋に。
「…また?」
風を感じてヘッドホンを手放せば、窓から侵入してきた紫が少し悲しそうに言う。
ヘッドホンが、雑音とも取れる音楽を、少量だけ流しているのが耳につく。
「何時もの、事だし」
「‥そう」
小さな沈黙の後、紫は言った。そして、そのまま――窓の縁に腰掛けたまま――紫は、腕を広げる。
だから、わたしはその腕の中に飛び込む。
両親の、親の言い争いの声なんか‥聞きたくない。
抱き付いた紫の体温と、心音に…無性に安らいだ。
浮気にお金関係。
言い出したらキリが無い不満。
離婚と言う言葉。
そして行き着く場所はわたし(子供)。
紫の腕の中では、不快な現実を忘れられる。
逃げたいんじゃない。
どうこう、したい訳でもない。
何時から、家が。
家庭が、どうして狂っていったかをひたすら考える。
―――もう、わたしにはどうにも出来ない事を知っていても、‥だ。
隣の家に住んでて、生まれた時からお隣さんの紫には面倒くさい事をさせているなぁ…とは、思う。
紫、って言う名前でも、男なんだからこんな所を見つかったら何か言われるかもなのに。
どうしても、この幼馴染には敵わない、から…。
わたしは、抗えずにこの腕の中に納まってしまう。
長い付き合いで両親とも知り合いだから、こんな家の中じゃ、居心地悪いだろうに。
縋りつくわたしの手なんか、こっぴどく振り払ってしまって構わないのに。
……………わたしの頭を撫でてくれる手は、無条件に優しい。
その優しさに、泣きたくなって。
ごめんなさい、と心の中で呟く。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい‥。
自分が、子供だって事に。
知りたくも無いのに、知らされる。
抗う力も無く、だからと言って素直に受け止められない結論が出る日も…近い事は、分かってる。
近い内に、わたしはこの腕を失う。
この、体温も。
この、心音も。
仄かに色付いた想いが、色褪せる事も。
明確な事など、何も言ってないけど、紫は分かってるんだと思う。
―――親が、こんな状態になってから、紫の訪問回数が増えた、から――‥。
だから、何も言わないし、聞かない。
全てに対して、無力なほど無力だと…解ってしまっているから。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
でも―――今、だけは。
この腕の中で安らぐ事を赦して。
実は紫視点もある。けれども、仄かな恋愛を滲ませたこれだけでも良いかなぁ、と多少思う。
紫視点の方が恋愛色が強めなので恋愛キーワードにしてみたが、何処にデータが逝ったのか…(ちょ!?←)
以下、ちょいと長めな裏…ではなく、登場人物紹介。
文中で登場人物の詳細を入れる必要性を感じなかったので入れませんでしたが、一応判り難い!と思う方の為に。
□わたし ななしです。スミマセン;
一人っ子。子供っぽいのに何処か達観している感じの冷静さを持つ人。
一応この人の心情メイン。
□紫
男だけど女のような名前。「わたし」のお隣さん兼幼馴染。
以前は名前にコンプレックスがあったようですが、現在は達観しております(内容に一切、全く関係の無い情報)
□「わたし」の両親
現在仲違い中。修正不可能範囲に二人して足を踏みこみ、家庭内泥沼。
この人らは上の文だけで十分かと。多くは語りません。